2019年3月21日木曜日

談合はなぜ無くならないのか?

 経済活動の最も基本的なものが「売買」です。そして売買することで、売る人も買う人も利益を得ます。100円の物を買う人はそれに100円以上の価値を認めているから買うのですし、100円で物を売る人はそれで十分利益が出るから売るのです。売買が成立するのは、その場合に限られます。
 ところで、物の値段の決まり方には色々あります。まず「マグロの競り」と「バナナの叩き売り」を見てみましょう。マグロの競りでは、値段がどんどん上がっていって、最後に値をつけた人が買い手となります。バナナの叩き売りでは、値段がどんどん下がっていって、最初に値をつけた人が買い手となります。
 そしてこの2つでは、値段の決まり方が、まるで違うのです。マグロの競りでは、最終的に買う人は「評価額の最も高い人」で、その価格は「2番目に高い評価額」ということになります。途中までは買い手が競合して値段が上がっていきますが、「2番目に高い評価額」に至ったところで「評価額の最も高い人」1人を除いて他の買い手が降りるからです。こうして、最終的に買った人も売った人も利益を上げ、また結局買わなかった人もその結果に納得することになります。
 一方、バナナの叩き売りでは、どうでしょうか。それに100円の価値を認める人が、値段が99円まで下がった時点で買うかというと、そうとは限りません。彼もなるべく安く買って、多くの利益を上げたいからです。けれどもライバルの評価額を知らなければ、手を挙げるタイミングが分かりません。もう少し待てば安く買えるかもしれないし、待ちすぎると他の人に買われてしまうかもしれない。こうして買い手どうしの間で、腹の探り合いが始まります。


 さて、談合はなぜ無くならないのか? 自治体が公共工事を発注する業者を決めるために競争入札する場合を考えましょう。ここで2つのルールを示します。

  《ルール1》 最も安い金額で入札した業者に『その金額で』発注する
  《ルール2》 最も安い金額で入札した業者に『2番目に安い入札額で』発注する

 自治体は、なるべく安い値段で発注したいと思う。その方が自治体の利益が多くなるからです。けれども当然のことながら、多くの利益を上げたいのは業者も同じです。

 では、ここで【問題】です。《ルール1》と《ルール2》のうち、業者が他の業者の入札価格を気にせずに「引き受けられる最低の金額」を提示できるのは、どちらでしょうか。反対に、自分の入札額を決めるためにライバル業者の入札額を知りたくなるのは、どちらのルールでしょうか。
 言い換えると、「マグロの競り」と同じような結果になるのはどちらのルールでしょうか。「バナナの叩き売り」と同じような結果になるのはどちらのルールでしょうか。



 実は、《ルール1》は「バナナの叩き売り」と同じような結果に、《ルール2》は「マグロの競り」と同じような結果になるのです。
 《ルール2》の元では、業者が「引き受けられる最低の金額」を提示できます。それでも受注した場合には、一定の利益が見込めるからです。
 それに対して、《ルール1》の元では「引き受けられる最低の金額」を提示したら、受注してもほとんど利益が出ないことになります。ですから、利益分を上乗せして入札することになるのですが、ライバル業者の入札額が分からなければ、いくらで入札したら良いのかが分かりません。
 このように考えると、《ルール1》の元で談合が無くならないのは必然だと言えるのではないでしょうか。

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