2019年12月12日木曜日

紙に空いた穴を通り抜ける円板の大きさ

【問】紙に直径10cmの円形の穴が空いている。紙を破らずになるべく大きな円板を通したい。円板の直径は最大で何cmか。(図1)



 「直径10cmの円形の穴を通り抜ける円板の直径は10cm以下でなければならない」とお考えでしょうか。いや、穴が空いている紙を折ったり曲げたりすれば、直径10cmより大きな円板を通すことができます。先日、数学関係のイベントで「円形の穴の空いたポチ袋を破らずに、ポチ袋に入っている穴より大きなコインを取り出す」というプレゼンをしました。どのようにすれば良いかは、こちら をご覧ください。
 今日考えるのは「どこまでの大きさの円板なら穴を通り抜けられるか」です。「紙に空いた円形の穴を通り抜ける円板の直径の最大値はいくつか」です。プレゼンした時点ではそれについてはわからなかったのですが、プレゼンした後で出席者の一人が一緒に考えてくれて、以下の結論を得ました。



 円形の穴でなく、直径 10cm の円に内接する正方形の穴が空いていると考えよう(図2)。なぜそう考えるかというと、この正方形の穴は円形の穴より小さいが、それら2つの穴を通る円板の大きさの最大値が結果として同じになるからだ。そして円形の穴で考えるより、正方形の穴で考えた方が考えやすいからだ。この場合、正方形の1辺の長さは 5√2=7.07cm である。
 この紙の2か所をつまんで中に押し込む。(図3)のようにあらかじめ山折り・谷折りに折っておくとやりやすい。このとき紙は立体的な形となり、穴は上に盛り上がってくる。もともと正方形だった穴はひし形となる(図4)。
 さらにつまんだ2か所を押し込むと、やがて正方形がつぶれて(図5)のように一直線状になる。このときの紙の形を横から見ると(図6)のようになる。このときの隙間状の穴は、元々の正方形の1辺の長さの2倍=10√2=14.14cm となる。すなわち、この正方形の穴を通り抜ける円板の直径は最大で 10√2=14.14cm である。


 元の穴が直径 10cm の円形なら、上と同じように紙を組み立てたときの形を上から見ると(図5)と同じになり、横から見ると(図6)の点線のようになる。この場合も穴を通り抜ける円板の直径の最大値は、先ほどと同じである。
 以上から「紙に空いた直径10cmの円形の穴を通り抜けられる円板の直径の最大値は10√2=14.14cm」である。一般に「円板の直径が穴の円の直径の √2 倍までなら円板は穴を通り抜けられる」ということだ。//

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