2019年7月7日日曜日

3つの言語

  ◇ 日本語で考え、英語で議論し、機械語で実現する

これが21世紀型ビジネスマンの典型的な姿なのではないでしょうか。

 私はいま3つの言語を取り上げました。日本語と英語と機械語です。この3つがこれから私たち日本人にとって必須の言語になるでしょう。そしてそれらのスキルを磨くことが、私たちが社会で活躍するための大きな要素になるだろうと私は思っています。
 そしてこれらが今の学校教育に欠けているものだと私は思うのです。確かに国語の授業はありますが、「考えるため」のものになっているでしょうか。英会話の重要性が言われていますが、「議論する」ことを目指しているでしょうか。プログラミング教育の必要性も言われるようになってきましたが、その目的は何でしょうか。

   ┌────3つの言語────┐
   ↓      ↓      ↓
  日本語考え英語議論し、機械語実現する
   │  ↑   │  ↑   │  ↑
   └──┘   └──┘   └──┘

 私は「考えるための日本語、議論するための英語、実現するための機械語」と捉えたいと思います。その意味では日本語も英語も機械語も道具です。目的は「考え、議論し、実現する」ことであって、そのためのスキルを向上させることがこれからの学校の役割だと思うのです。
 このスキルは特定の職種の人だけに該当することではありません。どんな方向に進むにせよ、

・社会の(速い)変化に合わせて自分の立ち位置を柔軟に変えながら、(←日本語で考え)
・世界中の誰とでも協力(力になってあげたり、もらったり)して、(←英語で議論して)
・コンピュータの力を自分の力とし、人工知能とも上手につき合う(←機械語で実現する)

そういう意味ではみんな同じだと思うのです。

 ここで振り返って現状の学校の授業を見てみましょう。まず現在の国語の授業で主に訓練しているのは読解力です。読解力とは「他人の言葉をそのまま受け取る力」。国語の試験対策でそうなっているのでしょうけれど、「考えるための国語」にはなっているでしょうか。
 余談ですが、読解の練習を繰り返すより、「自分で考える」練習をした方が読解力は身につきます。他人の考えを受け入れるばかりでは楽しくないですから。むしろ自分の考えを表明してみることから「他人の考えを聞こう」という気が起きるのではないでしょうか。

 次に英語。英会話が授業に取り入れられるようになったことはとても良いことだと思います。願わくば、考えなければ答えられないような質問をかけてあげてください。「今ここにトランプさん(アメリカ次期大統領)が現れたら、何を聞きたい?」とか「どうしてアメリカ人は1(単数)と2(複数)の違いにこだわるわりに、2と3の違いに無頓着なんだろう?」とか。
 ところで、英会話と呼ぶより「英対話」と呼ぶことにしませんか。気軽なおしゃべり、楽しい会話が英語でできればそれはそれで良いことだと思いますが、仕事をするには対等な意見交換が必要で、会話というより「対話」だろうと私は思うのです。

 そして機械語。これは現状ではほとんど無いに等しいのです。英語と同様に、いやむしろ英語以上に「世界の共通言語」になるはずの機械語を、今の日本の中高生の多くは一切触れることなく卒業してしまっています。
 ところで私は「プログラミング教育」と言うより「ソフトウェア教育」と呼びたい。これから「開発アプリ」なるものがますます登場して、機械語レベルでいじることが今よりずっとお気軽になるでしょうし、ソフトウェアを使いこなすこともとても大事だと思うからです。もちろんみんなが同じソフトウェアを使う必要はありません。違うものを使えばいいのですが、何も使おうとしないのは、その人にとって大きな損失になりかねません。

 この3つの言語を一通り学校で学びたい。それが「21世紀の読み・書き・そろばん」だと思うのです。
 そうは言っても人には得手・不得手がありますし、もちろん役割分担があって良いわけです。また、何かに秀でていればそれで良い場合もあるでしょう。これからの時代のもう一つのポイントは「多様性」ですから、みんな違っていて良いのですけれど、日本人全体として今よりもっともっとスキルアップしなければならない点だと私は思います。
 さて、具体的にどうやってスキルアップを図るか。3つの言語にはそれぞれ特徴があります。

  ・ 幼少からの蓄積がものを言う「日本語」
  ・ やり始めるとキリがない「英語」
  ・ 多種多様で進化の早い「機械語」

 気がつくと私はおおよその答えを書いていましたね。小学校1年生から(あるいは幼稚園・保育園の頃から)じっくり時間をかけて「考える」経験をさせ、英語は学校で完成させようと思わずに社会人になって仕事で「実践的に使い」ながらさらにレベルを上げ、コンピュータのプログラミングやソフトウェアの利用は「取っつきやすい」ところから始めてだんだんとみんながそれぞれに違うソフトウェアを使うようになれば良いのだと私は思います。何をやったところで、どうせすぐに古くなるのですから。
 一方で目的をしっかり定めましょう。目指すところは、

  ◇ 日本語で考え、英語で議論し、機械語で実現する

こと。学校の役割は大きいですよ。

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