エジソン(1847~1931)がすごいのは電球を発明したことじゃありません。電球と発電所と電線工事をセットで売り出したことです。エジソンの映写機が成功した理由は技術だけじゃありません。撮影所を建て、自らも映画を作って、映画産業を丸ごと売り出したことの方が大きな理由だったでしょう。
エジソンが生きていた時代は、電気のことがかなりの程度わかってきていた時代ですから、エジソンがいなくても他の誰かが同じような発明をしたでしょう。その当時、一攫千金を狙う発明家はたくさんいました。そして実際にたくさんの発明がありました。そんな中でなぜエジソンが抜きんでたかというと、彼が一品の発明に飽き足らず、その周辺もひっくるめてパッケージとして提案したからでしょう。
右表にエジソンの時代にわかっていた電気に関する知見をまとめてみました。電気に関する単位とその元になった人物を並べただけなのですが、エジソンが活躍した頃の電気をめぐる事情がおよそわかるでしょう。
少し説明しますと、「電流×抵抗=電圧」で、「電流×電圧=電力」で、「電力×時間=熱量」です。加えて、運動を電気に変えたり(発電機)、電気を運動に変えたり(モーター)する仕組みとして、ファラデーの電磁気に関する知見、以上で中学・高校の物理の電気分野のかなりの部分をカバーしちゃいます。
エジソンが試行錯誤する段階でもう一つ大事な知見は「元素の周期表」。電球のフィラメントや電線の素材に何を使うかを試す際に、参考にしたはずです。元素の周期表は中学・高校の化学のメインテーマですね。これらがほぼ出揃った頃にエジソンが登場するのですから、エジソンでなくとも、誰かがいろんな発明をしたに違いないのです。
さて、セット販売と言ったときに思い出すのは、iPhoneです。アップル社のスティーブ・ジョブスは初代iPhoneを発表する場でこう言いました。「iPodと携帯電話と通信機器を一緒にした製品」だと。伝説的なプレゼンテーションだと言われています。それだけでも立派なセット販売ですが、実は大事なもう一つのものを彼は言わなかったんですね。
iPhoneが成功するために、もっと大事なものがあったんです。それもiPhoneとセットで売られていました。それは何かというと、電波の周波数帯です。アップル社はアメリカの通信会社に掛け合って、iPhoneでネット接続するための電波の周波数帯を割り当てさせたのです。
アップル社は設立当初からハード(コンピュータ)とソフト(OS)をセット販売してきました。そこがWindowsと異なる点ですが、iPhoneでは電波帯も合わせてセット販売したことが今日のスマートフォン普及につながったのです。エジソンと似ていますね。
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