2019年3月13日水曜日

寿命の平均値と中央値と最頻値(2017年)

 次の話題は、命です。平均寿命について見てみましょう。
 平均寿命は厚生労働省が毎年発表します。ところで、平均値があるということは、中央値も最頻値もあるはずです。でも、平均寿命という言葉はよく聞きますが、寿命の中央値、寿命の最頻値という言葉は聞きませんね。

 【問3】 2017年の日本の平均寿命は女性が87.26才で、男性が81.09才です。
 さて、寿命の中央値と最頻値は何歳くらいでしょうか?(平均値より上か下か?)常識を交えて、予想してください。



  ところで、平均寿命とは何の平均値なのでしょうか。まずはそれを知らなければなりません。そしてそれがわかれば、寿命の中央値と最頻値もわかります。いや、データがそろえば、平均値を求めるより、中央値や最頻値を求める方が計算はむしろ簡単です。数値の最も大きいところが最頻値で、人数を足していってちょうど半分のところが中央値ですから。平均値は値を全部足して総人数で割るのですから、中央値や最頻値を求めるのに比べて計算は大変です。
 平均寿命は、その年の各年齢ごとの死亡率から算出します。値が男女で異なりますので、ここでは「女性」の値を元に平均寿命の計算法を説明しましょう。元データは2017年の「簡易生命表」です。厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

 まず10万人が生まれたとします。この数に0歳の死亡率を掛けると179人、これだけの人が0歳で亡くなることになります。残り99821人が1歳の誕生日を迎えて、その数に1歳での死亡率を掛けて、28人が1歳の間に亡くなって、99793人が2歳になります。この計算を繰り返します。
 高齢になるとじわりじわりと死亡率が高くなっていきます。例えば100歳での死亡率は約30%です。なお、表では105歳以上はひとくくりになっていますが、105歳以上での死亡率は(当然のことながら)100%です。
 こうして出来上がった各年齢ごとの死亡者数、それは見方を変えれば「ある年に産まれた男女10万人ずつが、2017年の各年齢ごとの死亡率と同じ割合で亡くなると想定したときの、それぞれの人が生きた年数」でもありますが、その平均値が平均寿命です。一応申し上げますと、厚生労働省の資料では「死亡」という言葉を極力使わずに説明したり計算したりしているものですから無駄にややこしいのですが、結局のところ右の計算法と同じ結果になります。
 図3は、右の計算に従って「各年齢ごとの死亡者数」をグラフにしたものです。2017年の「寿命曲線」と呼ぶことにしましょう。その平均値が平均寿命であり、このグラフから寿命の中央値や最頻値も求められるわけです。


 平均値は男81才・女87才ですが、若くして亡くなる人が一定数いる一方で、120才を超えて生きる人はまずいませんから、グラフは左方向(若い方)に長く伸びて、右方向(高齢側)は急激に落ち込みます。先ほど取り上げた所得(図1)や貯蓄(図2)と比べると、左右に反転した形ですね。そしてこうなると、お金の話の場合に金持ちが平均値を釣り上げたのとは反対に、若くして亡くなる人の影響を受けて、平均値はその分低めになります。
 ここまで来れば、寿命の平均値だけでなく、中央値や最頻値を求めるのもすぐそこです。
平均値81.0987.26
中央値8490
最頻値8793
「最頻値」は、すでに求めた「各年齢ごとの死亡者数」の中で数が最大になるところ。つまり「男87歳、女93歳」が最も多くの人が亡くなる年齢です。平均寿命と比べ、ともに6歳ほど高い。
 また「中央値」は「累積死亡者数」が5万人(10万人の半分)に達したところで、「男84歳、女90歳」となります。こちらも平均寿命よりそれぞれ約3歳高い。

 平均寿命が平均的とは限りません。現実には「平均寿命よりもっと長生きする方がむしろ普通だ」とも言えるのです。
 このように統計は代表値によって、見え方が大きく変わります。所得や貯蓄などお金の話も同様で、平均値だけでなく、中央値や最頻値にも目を向けると違った面が見えてきます。
 ところで今生きている人にとって重要な指標は平均寿命より平均余命の方です。そしてこれもまた余命の平均値だけでなく、中央値や最頻値を求めてみるとまた違った見方ができるかもしれません。お試しあれ。

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