○ アルバイトは時間で稼ぐ
単純に言えば、働いた時間に比例して収入が決まる。
派遣労働も基本的には同じ。実際には時給の差はあるのだが、時給を一律(たとえば 1000 円)とみなしても、大局的に見れば実態とそれほど大きなズレはないだろう。
この場合、働いた時間を足し算すれば収入が決まる。働く時間と収入をグラフにすると、右のようになる。
○ 会社員はキャリアで稼ぐ
ここでキャリアとは、学歴・資格・能力・運・会社の業績などのことをいう。
たとえば、一般的には高卒より大卒の方が給料が高い。同じように、有資格の方が給料が高くなる傾向にある。出世すれば給料が上がるが、そのためには能力・努力・人柄などが要るだろう。運もまた影響する。
給料は会社の業績によっても左右される。入社した後にその業種が花形産業になるのか、衰退産業になるのかによっても、生涯賃金は大きく変わる。このように会社員の給料を左右する要素はたくさんあるが、それらすべてを含めてキャリアと呼んでいる。
ところで、給料はキャリアの数を足して決まるのではない。積み上げたキャリアの掛け算で決まるのである。
目安として、キャリア1つにつき給料が 1.2 倍になると想定してみよう。そうするとキャリア2つで 1.22=1.44 倍、キャリア3つで 1.23=1.73 倍、・・・ 、キャリア10個で 1.210=6.2 倍・・・と指数関数的に増えて行く。
この場合、キャリアの数と給料をグラフにすると右のようになる。同じサラリーマンで労働時間が同じでも年収に数倍の差が出るからくりは、ここにある。
○ 自由業はシェアで稼ぐ
たとえばミュージシャンの場合、いくら良い歌を作っても、人に聞いてもらえるチャンスが無ければ全く売れない。
テレビやラジオで流れれば、少しずつ人に認知され、CDがショップの奥の方に置かれるようになる。そこでもしCDが売れれば、置き場所がだんだんと前に移動して、そうなるとますます売れる。テレビに出る回数も増え、さらに認知度が増して、メジャーになる。
このように出だしは悪いが、うまくいけば加速度的に売れるようになる。
あるいはプロ・スポーツ選手の場合は、年俸は実力に応じて決まるが、一流選手になると本業以外の収入(CM出演料、本の印税など)の方がむしろ多かったりする。
起業家も同じだ。一定の売上に達するまでは赤字経営が続き、ある線を越えてから先はどんどん儲かる。売上が増えれば増えるほど利益率が上がり、理論的には利益率 100 %(売上が増えた分だけ丸儲け)に近づいていく。
この場合、収入の少ない人から順に並べてグラフ化すると右のようになる。会社員の収入が定数倍で増えるのに比べて、こちらは掛け数そのものがどんどん大きくなるようなものだから、収入は爆発的に増えていく。
もちろん大儲けできる人はほんの一握りだ。その背後には、売れないミュージシャン・活躍できないスポーツ選手・赤字経営の起業家が星の数ほどいる。
このようにアルバイトと会社員と自由業では稼ぎ方がまるで違う。アルバイトで大企業の重役並みの収入を得ることはないし、会社員がトップ・スターと同じだけ稼ぐこともない。
アルバイトで収入を増やすには時間を投入する以外に手は無くて、会社員が収入を増やそうとすれば出世競争に明け暮れることになる。自由業で一攫千金を夢見るためには食っていけないことを覚悟しなければならない。
念のため書くが、上の3つのグラフは横軸がそれぞれ違うので、重ね合わせても無意味である。というより、この3グループはまるで別世界なのだから、そもそも比べること自体が無意味である。
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