車や飛行機は、人の「足」の代わりです。その目的は移動することであって、それを使えば時間を節約できます。洗濯機や掃除機は、人の「手」の代わりです。その目的はきれいにすることであって、それを使えば楽できます。
さて、テレビや携帯電話、ゲーム機やコンピュータは何の代わりなんでしょう? それを使う目的は何なのでしょう?
車や飛行機あるいは洗濯機や掃除機は、運転手やクリーニング屋でなければ、四六時中使うものではありません。長時間使い続けなければならないときがあるとすれば、それはなかなか辛いでしょう。むしろそうならないようにそれらの機械があります。ですからそれを使う時間は短ければ短いほどいい。
ところが、テレビ・携帯電話・ゲーム機・コンピュータなどのデジタル機器は四六時中使っていられるのです。ボーっとテレビを見たりかじりついて見たり、なんとなく携帯電話をいじったり誰かと連絡を取り合ったり。暇つぶしでゲームしたり人と対戦したり、転々とネットサイトを眺めたりパソコンで何かを作ったり。
それらを使う目的は、娯楽であったり、暇つぶしであったり、意思疎通であったり、創造であったりするのでしょう。いずれにせよ、何かを節約することが目的なのではありません。むしろ人は好んでそこに時間と労力を注ぎます。それを使うことがその人にとって有意義なのでしょう。そうでなければ、四六時中使ったりはしないはずです。
人はなぜ四六時中デジタル機器を使っていられるのか? 答えは、使うことそのものが目的だからです。なぜ使うことが目的になり得るのか? 答えは、デジタル機器が人の「脳」の代わりになっているからです。娯楽・暇つぶし・意思疎通・創造など脳の働きを代用するのがデジタル機器なのです。
またボタン1つでいろんなことを実現できて、ブラックボックスの中で何が起きているのかを意識する必要はありません。これまで脳で処理していた作業手順をブラックボックスが代用しているのですから、これも脳の代わりと言えます。デジタル機器はより複雑な処理を実現しながら、同時に脳の負担がより少なくなる方向にさらに進化するのでしょう。
すなわち、デジタル機器は脳の一部として機能しているのです。それが良いことなのか、悪いことなのかはわかりません。たぶん両方なのでしょう。いずれにせよ、だから人は四六時中デジタル機器を使っていられるのです。
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