2019年5月4日土曜日

反証可能性(慶応大の入試問題より)

 論理学ネタの入試問題が、今年も慶応大学商学部の論文テストで出た。 情報科で論理式を扱った際に、そのまんま定期試験に出してもよさそう。



(慶応大 商学部 論文テスト 2015)


◇ 以下の文章を読んで、次の問1~問2に答えなさい。

 いま、以下のような4つの命題 p , q , r , s がある。
p:すべての天体の軌道は円である。
q:すべての惑星の軌道は円である。
r:すべての天体の軌道は楕円である。
s:すべての惑星の軌道は楕円である。
これら4つの命題に関して、「天体」という言葉は「惑星」よりも(1)の度合が高く、「円」という言葉は「楕円」よりも(2)の度合が高い。いずれも度合も高いほど、命題は経験的にテストされやすく、それゆえ反証される可能性も高い。つまり、命題の反証可能性は高くなる。
 これら4つの命題 p , q , r , s のあいだの演繹可能性関係は、上のダイヤグラムの矢によって示される。p から他のすべての命題が結果する。q からは s が帰結し、s はまた r からも帰結する。したがって、s は他のすべてから帰結する。
 p から q に移ると、(3)の度合が減少する。惑星の軌道は天体の軌道の真部分集合であるから、(4)は p よりも(5)の度合が少ないわけである。したがって、p は q よりもいっそう容易に反証されうる。もし q が反証されれば、p は(6)されるが、しかしその逆は真ではない。
 (7)から r に移ると、(8)の度合が減少する。円は楕円の真部分集合だからである。そして、もし r が(9)されれば、p は反証されるが、その逆は成り立たない。
 同じことが他の移行についてもいえる。(10)から s に移れば(11)と正確性の両者が減少し、q から s へと移ると(12)が減少し、r から s へと移ると(13)が減少する。
 したがって、以上のことから p が最も反証可能性が高く、s は反証可能性が最も低いといえる。

問1.文中の(1)(13)にあてはまる最も適当なものを下の選択肢から選びなさい。
   なお、同じ選択肢を2回以上使用してもよい。
p  q  r  s  演繹  検証  合理性  実証  正確性  妥当性  反証  普遍性  有意性
問2.命題 q と r は、どちらが反証可能性が高いのか、比較することができない。なぜか。
   その理由を本文に即して「命題 q は r よりも」に続く文章を35字以内で答えなさい。

  命題 q は r よりも                               




《解答&解説》
問1. (1) 普遍性  (2) 正確性  (3) 普遍性  (4) q  (5) 普遍性
    (6) 反証   (7) p  (8) 正確性  (9) 反証  (10) p
    (11) 普遍性  (12) 正確性  (13) 普遍性

※ 「同じ選択肢を2回以上使用してもよい」と言われても、13個のうち
  「普遍性」が5回、「正確性」が3回、「p」と「反証」が2回ずつというのは、
  解答していてちょっと不安になる。

問2.普遍性は低く、正確性が高いから、どちらが反証可能性が高いともいえない。(35字)

※ 字数や書き出しを無視して書くと、
「正確性の面からみると、命題 q は r よりも正確性の度合が高いので、q の方が r よりも反証可能性が高い。
 普遍性の面からみると、命題 r は q よりも普遍性の度合が高いので、r の方が q よりも反証可能性が高い。
 だから一概に q と r のどちらの方が反証可能性が高いとは言えない。」

0 件のコメント:

コメントを投稿