2019年4月8日月曜日

ゲーム理論で「競馬」を解く

 これから競馬が行われる。出走する馬は3頭。忍者赤影が乗る「赤馬」と忍者白影が乗る「白馬」と忍者青影が乗る「青馬」である(ふるっ・・・)。それぞれの馬が勝つ確率は 3:2:1 である(※注1)
 さて、競馬に勝つ馬を予想して馬券を買うと、予想が当たった場合に払戻金が支払われる。その金額の決め方は「馬券の売り上げ総額を、予想が当たった人の数で均等に分ける」のである。馬券1枚あたりの「払戻金÷掛け金」の値を「オッズ」という。予想が当たった場合に掛け金が何倍になって返ってくるかというその倍率である。
 いま馬券1枚の値段を100円とし、客が4人いて、2人が赤馬に、1人が白馬に、1人が青馬に賭けたとする。主催者の取り分や賞金・税金などは無視して、掛け金総額を当てた人で山分けするものとすると(※注2)、掛け金総額は 400円だから、赤馬・白馬・青馬が勝った場合の払戻金はそれぞれ 200円、400円、400円になり、オッズはそれぞれ 2倍、4倍、4倍ということになる。
さて、この例で最も有利な賭け方をしているのは誰だろう? それを知るには期待値を計算してみればいい。赤馬 , 白馬 , 青馬が勝つ確率はそれぞれ1/2 , 1/3 , 1/6だから、それぞれの馬券を買った人の期待値は右表のようになる。最も有利なのは白馬に賭けた人である。掛け金の100円との比較でいうと、この人だけが得をして、残りの3人は損な賭け方をしていることになる。
 では、ここで自分も馬券を買うことにしよう。買う馬券は1枚か2枚。さて、どの馬に賭けるのが得か?

 「一番強い赤馬に賭ければいい」とは限らない。オッズが低ければ、それは得策ではない。「現在の期待値が大きい白馬に賭ければいい」というものでもない。自分が馬券を買えば、払戻金もオッズも期待値も変わるからである。「どの馬に賭けるのが有利か?」を考えるには、自分の買い方を含めて期待値を計算し直すしかない。
 では、真面目に期待値を計算してみよう。まず、馬券を1枚買う場合。
  結局、どれを買っても損をする。次に、馬券を2枚買う場合。
 この中で最も有利なのは「赤馬1枚、白馬1枚」を買う場合である。この場合だけが損得なしのトントン。他の場合はすべて期待値がマイナスになる。つまり損をする。そしてこの場合、自分だけではなくて、馬券を買った人は全員がトントンになる。これがゲームの解である。
 出走する馬が増えても、馬券を買う人が増えても、この事情は変わらない。ある時点で有利な(期待値がプラスになる)買い方があれば、そのように買う人が現れる。そうするとオッズ・期待値が変わって、同じ買い方をしても得ではなくなる。こうしてみなに情報が行き渡っていて、みなが合理的に行動するなら、必ず全員が損得なしのトントンになる。
 では、「得する場合は絶対にありえないのか」というと、そうでもない。みなに情報が行き渡っていない場合や不合理な行動をする人がいれば話は別である。
 たとえば、騎手が買収されていることをみんなが知らない 場合。「10円やるから、負けろ」と赤影をこっそり買収した人はきっと儲かるだろう。
 あるいは、勝ち負けの確率とは無関係に馬券を買う人がいる 場合。ハルウララが圧倒的な一番人気だったときに2番目に人気だった馬券を買えばたぶん儲かったはず。

(※注1)ここで 3:2:1 としたのには訳がある。こうすれば、サイコロを振ることで競馬をシミュレーションできるからだ。「サイコロを振って 1 , 2 , 3 の目が出れば赤馬の勝ち、4 , 5 が出れば白馬の勝ち、6 が出れば青馬の勝ち」。要はそれと同じことだ。
(※注2)現実的に考えると、競馬で確実に儲ける方法は胴元になることだろう。ところで、「掛け金総額を当てた人で山分けする」というのがここでのゲームのルールである。「胴元になる」ことは「ゲームを変える」ことにあたる。それはそれで一興だが、この論が間違っているという話ではない。

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