2019年4月13日土曜日

小論文に何を書くか?

 現代文で書くべきものと小論文で書くべきものはまるで違います。比較のために社会科の記述問題も含めて、その違いを表にしてみました。
著者の考え
読解
一般論
知識
自分の考え
表現
現代文××
社会科××
小論文×

 現代文で問われるのは読解力で、書くべきものは著者の考えです。くれぐれも一般論や自分の考えを書いてはいけません。むしろそれらを意識して排除しないと、言葉のあいまいさ・多様性に引きずられて間違えます。先ほど述べたとおりです。
 社会科の記述問題で書くべきなのは、一般論、つまり定説です。学会で認められていない誰かの見解や、あなたの個人的な意見を書いてはいけません。要するに、知識を基にして、正しい(とされている)ことを書くのが社会科の記述問題です。
 小論文で書くべきものは、あなたの見方・考え方です。そこで必要なのは表現力で、発想・構成・展開が問われます。その際に資料として与えられたものや一般論を交えて書くのはいいのですが、それだけではいけません。それらを踏まえて、あなたの論を展開することが必須です。
 表を見て分かるように、現代文と小論文では重なるところが全くありません。同じ国語という範疇にありながら、方向性が全く違います。そしてそうなれば、取り組み方も違ってきます。
 小論文と言っても千差万別ですから個別に触れることはできませんが、現代文と比較して心得を1つだけ言いましょう。
 「他とつないで書くのが小論文、つないだらアウトなのが現代文」です。小論文では与えられたテーマと自分の考えをつないだり、与えられた資料と自分の知識をつないだり、あるいは自分の経験とつないで語ったりというように、どんどんつないで書いた方がいいのです。
小論文はつないでつないで、そして組み立てて、最後に「単純明快な自分の主張」に行きつくように書きましょう。さらに言うと、ゴールに向かって一直線に数珠つなぎに進むより、下図のように自分の主張を三方からがっちり固めるような書き方をするのがお勧めです。(※1)
 一方、現代文では、他とつないだ途端にアウトです。本文を読めばいろんなことが頭に浮かんでくるはずなのですが、それらはすべて誤答へと誘う悪魔のささやきです。だから現代文の問題で得点するためには、意識してそれを遮るべきなのです。

 それはそうと、こんなにも違う現代文(読解)と小論文(表現)の両方を同じ国語の時間に学ぶのですから、先生も生徒も大変です。国語のカリキュラムを組むのはさぞかし難しいことでしょう。
 くれぐれも両者の違いをしっかり理解して臨んでください。そうでないと、現代文も小論文もできないことになってしまいます。
 ちょっと想像してみてください。授業中に先生が「(文章を読んで)君はどう思う? どう考える?」と問いかけて、生徒が言ったことに対して「なるほど、そういう読み方もできるね。そういう考え方もいいね」と返す。そのような授業ばかりを展開して、テストではいわゆる普通の国語の問題を出すと、さてどうなるでしょうか。
 おそらく「授業を真面目に受けてもテストができない→授業を受けても無駄→現代文も小論文もできない」となるでしょう。
 でも、授業がダメなわけではないんです。文章を読んで考えるのも国語力ですし、それを表現するのも国語力です。どちらも小論文など作文を書くには必要なことですから。
 国語力とはかくも多種多様なものなのです。だからこそ、しっかり区分けしましょう。何を求められているのか、どこをどのように読むのか、何を考えて何を書くのかは、現代文と小論文ではまるで違います。そこがズレるとガタガタになります。現代文を読みながら考えると「お前は人の話を聞いてない」と言われ、小論文で正しいことばかりを書くと「少しは自分の頭で考えろ」と言われます。

(※1)詳しくは、拙著「高校生が学んでいるビジネス思考の授業」の第2章「考え方の作法」をご覧ください。

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