2019年4月4日木曜日

渋滞の科学(その1)

《モデル化とシミュレーション》
(慶応大学商学部2012年度入試「論文テスト」をもとに改題)

以下の文章を読み、次の問いに答えなさい。
※ 1つの【問題】を 前半 と 後半 に分けて掲載する。前半 は現実の渋滞の分析、後半 は渋滞をモデル化しシュミレーションする話。どちらか一方だけでも解答できるが、両方やれば両方の内容が符合することがわかるだろう。以下、その後半部分である。

 渋滞という言葉が適用できる対象は極めて広い。渋滞学とは、渋滞を起こす主人公を一種の「粒子」と考え、粒子の流れとその渋滞について研究する学問といえる。ただしその粒子は、さまざまな個性や大きさを持っていて、いろんな決まりに従って、ときには勝手に動いている。また、これらの「粒子」のほとんどすべてに共通する性質として、自分の前が空いていれば進めるが、前が詰まっていれば動けないのでじっとしている、ということが挙げられる。渋滞学では、このような新しい粒子のことを「自己駆動粒子」と呼んでいる。自己駆動とは、誰かに背中を押されなくても自分の意志やあるルールに従って動くことができるという意味であり、渋滞学では、車、(1)(2)(3) などを抽象化してこう呼んでいる。
 すべてに共通する渋滞の定義を可能にしてくれるものが「基本図」である。 (a) 「渋滞している」という状態 を客観的に定義でき、また渋滞している状態と渋滞していない状態との「境目」の様子もわかる。基本図とは、横軸に「密度」、縦軸に「流量」をとったものをいう。密度とは、ある区間に、粒子がどれだけいるのかを表す量であり、流量とは、ある時間内に、その区間のある地点を粒子がいくつ通過したかを表す量である。
実際の基本図を用いて、高速道路における自然渋滞発生のメカニズムを考えてみよう。高速道路の場合、密度は、ある地点の付近1kmあたり何台いるかという単位で表すことが多い。流量は、道路のその地点を5分間に通過する車の総台数である。図1は、東名高速道路の静岡県焼津市付近における実際の基本図である。1996年のもので、左がすいている6月のデータで、右が混雑している8月のデータである。密度が低い、つまり渋滞していない左半分のところのデータはどちらもほぼ同じで、ずっと右に伸びている直線状のデータとなって現れている。そして図の直線の傾きが実は車の平均的な自由走行の速度を表している。この速度を図より読み取ると、およそ時速 (4) kmとなる。渋滞してくると右半分の高密度側にデータ点が出現してくる。渋滞しているとあまり車は動けないので、全体として右下がりにデータ点が分布してくることがわかる。ちょうど渋滞が起こるところは、この右上がりが右下がりに変わるところである。流量が減少に転じるときの密度を「臨界密度」と呼ぶ。 図1を見ると、臨界密度は大体1kmあたり50台と読み取れる。この区間は片側2車線道路なので、両車線に同じ台数の車があるとすれば、車間距離で大体 (5) m以下になったときが渋滞ということになる。

問1. (1)(3) に入る最も適当な語句を次の選択肢から3つ選びなさい。ただし順不同でよい。 
   1 イワシ   2 インターネットのパケット   3 空気   4 サッカーボール
   5 赤血球   6    7    8    9 惑星

問2.図1から密度が 25 台/km のとき流量が 175 台/5分 と読み取れたとして、 (4) にあてはまる数(整数値)を求めなさい。

問3. (5) にあてはまる数を求めなさい。ただし、計算に際して、車の長さは無視してよい。

問4.(a) 「渋滞している」という状態 を、本文全体の内容を踏まえて、密度という語句を使って定義し、20字以内で記しなさい。



《解答》
問1.  1 , 2 , 7 
問2.   84 
問3.   40 
問4.  粒子の密度が増えても流量が増えない状態 (20字) 
     粒子の密度が臨界密度を超えている状態  (19字)

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