2019年4月3日水曜日

宮沢賢治も知っていた、二酸化炭素の温室効果

 宮沢賢治の童話「グスコーブドリの伝記」の最後の部分です。1932年(昭和7年)の作品です。
・・・
 そしてちょうとブドリが二十七の年でした。どうもあの恐ろしい寒い気候がまた来るような模様でした。・・・
 ところが六月もはじめになって、まだ黄いろなオリザの苗や、芽を出さない樹を見ますと、ブドリはもう居ても立ってもいられませんでした。・・・ある晩ブドリは、クーボー大博士のうちを訪ねました。
「先生、気層のなかに炭酸ガスが増えてくれば暖かくなるのですか。」
「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、大抵空気中の炭酸ガスの量できまっていたと云われているくらいだからね。」
「カルボナード火山島が、いま爆発したら、この気候を変えるくらいの炭酸ガスを噴くでしょうか。」
「それは僕も計算した。・・・地球ぜんたいを平均で五度くらい温にするだろうと思う。」
「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」
「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、最後の一人はどうしてもにげられないのでね。」
・・・
 そしてその次の日、イーハトーブの人たちは、青ぞらが緑いろに濁り、日や月が銅いろになったのを見ました。けれどもそれから三、四日たちますと、気候はぐんぐん暖かくなってきて、その秋にはほぼ普通の作柄になりました。・・・その冬を暖かいたべものと、明るい薪で暮らすことができたのでした。
「グスコーブドリの伝記」(宮沢賢治・作)より。(「・・・」の部分は省略しました)


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