2019年5月14日火曜日

アポロが月に行ってない疑惑


 光はモノに当たって光ります。当たるモノが無ければ光は黙って通過します。地球では光が空気に当たって乱反射します。だから、昼間の地球の空は明るいのです。
 ところが月には空気がありません。太陽の光はまるごと月面に届きます。だから、月の空はいつでも真っ黒なのです。月で昼間に空を見上げると、真っ黒な中にギラギラ光る太陽が浮かんでいます。そして太陽のすぐそばを天の川が流れています。空気がなければ、そういうことになります。
 それだけではありません。空気がないと対流も起こりませんから、日なたはジリジリ暑く、日陰はシンシン寒い。日陰の場所が平らなのか穴があいているのか、懐中電灯を当ててみないとわからない。そういうことになります。
 しかも、月はいつも同じ面を地球に向けながら、1ヶ月かけて地球の周りをまわっています。ということは、月では半月間昼が続き、半月間夜が続きます。さて月に住んだ場合、いかにして夜を乗り切るか。 天井は透明なガラスかプラスチックに限ります。そうじゃないと、夜が明けたことに誰も気がつかないでしょう。
 ガガーリン大佐(1961年に世界で初めて宇宙飛行した旧ソ連の宇宙飛行士)は「地球は青かった」と言いました。彼は本当はこう言いたかったのです。「宇宙は黒かった。地球以外はどっちを向いても真っ黒だった」と。

 さて、「アポロは実は月に行っていないのではないか?」という疑惑があります。疑惑の中心は、アポロから届いたという月面での映像にあります。そこにいくつかの矛盾があるというのです。主なものは、
○ 月面に突き立てた星条旗(アメリカ国旗)がゆらめいている。
  → 月には空気がない → 風が吹かない → 地球で撮った疑惑
○ 宇宙船の影と宇宙飛行士の影が、違う方向を向いている。
  → 月での光源は太陽だけ → 影は平行になるはず → 合成写真疑惑
これらを根拠に、ネット上では「アメリカ政府の陰謀説」「NASAとハリウッドの共謀説」などが渦巻いています。映像以外の状況証拠としては、
○ 米ソの宇宙開発競争に後れをとったことで、アメリカは焦っていた。
  → 1961年に旧ソ連が世界で字初めて有人宇宙飛行に成功した。
○ アポロ以降、誰も月に行っていない。
  → 1969~1972年の3年間の間に6回月に到達したというが、
    それで月を調べ尽したわけでもあるまいに。
これらを総合して「アポロは月に行っていない」と考える人が多いのです。その話は、誰かが仕組んだデッチ上げだというわけです。

 ではここで、先ほど挙げた映像に関する疑惑を検証してみましょう。
 まずは、「月ではためく星条旗の疑惑」について。月には空気がありません。だから、風が吹かない。ここまでは正しい。しかし、旗が揺れないわけではありません。
 むしろ、月には空気抵抗が無いから、一度揺れた旗はいつまでも揺れ続ける のです。地球上で振った振り子は空気抵抗のために振れ幅が次第に小さくなってやがて止まりますが、もし空気抵抗が無ければいつまで経っても振れ幅は変わらないし、止まらない。エネルギー保存則です。それと同じで、宇宙飛行士が月面に突き立てたときに星条旗に与えた振動はいつまでも消えないのです。
 よって、映像の中で星条旗が揺れていることはデッチ上げとする根拠にはなりません。むしろ、あのとき星条旗が揺れていたのなら、いま現在でも同じタイミングで月面で揺れ続けていることでしょう。そう考える方が自然です。
 もう1つ「月面であらぬ方向を向く影の疑惑」について。これについては、地面が平らでなければいくらでも起こることです。月には水も空気もないから風化しません。つまり、地形がなだらかになりにくい。しかも空気の揺らぎがないということは、地形がそのまま影になる。そんなこんなを考えると、影があらぬ方向を向ているように写真に写るのは、いかにもありそうなことに思えます。

 私は「アポロが月に行った」とも「行ってない」とも言うつもりはありません。ただ「行ってない」という主張は面白いし、けれどもその証拠をあげるのはなかなか難しいし、仮に映像が偽造だとすると「かなり手の込んだ策略だなぁ」と感心したりもするわけです。

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