2019年10月20日日曜日

予防接種の効果はいかほどか?

 ある町である年に実施したインフルエンザの予防接種にどれくらい効果があったのかを調査しました。結果は、

  データ1:予防接種を受けた100人のうちインフルエンザに罹ったのは10人だった。
  データ2:予防接種を受けなかった100人のうちインフルエンザに罹ったのは20人だった。

この結果を踏まえて、2人の人がこう言いました。

  G氏:予防接種の効果でインフルエンザに罹る率が半減した。
  C氏:予防接種の効果でインフルエンザに罹る率が1割減った。

 さて、この2つの発言のうち、正しいのはどちらでしょうか? あるいは、両方とも正しいなら、妥当なのはどちらでしょうか? もしくは、両方とも妥当なら、この2つをどのように使い分ければいいでしょうか? それから、しっくりくるのはどちらでしょうか?
※ 2つのグループは予防接種を受けたか受けなかったかという点以外は同じようなグループと考えてください。また、2次感染・3次感染…、予防接種による副作用や、罹ったときの症状の重さ・軽さなどは無視して、データ1・データ2の数だけで考えてください。


 さて、予防接種の効果でインフルエンザに罹る「人数」がどれくらい減ったか というと、

  20人-10人=10人

ですね。ところで、残りの90人は予防接種を受けても受けなくても結果は変わりません。

  ◇ 100人のうち10人は、予防接種を受けても受けなくても、インフルエンザに罹った
  ◇ 100人のうち80人は、予防接種を受けても受けなくても、  〃  罹らなかった

ということですから。
 では、予防接種の効果でインフルエンザに罹る「割合」がどれくらい減ったか というと、それは「何を分母にするか」によって変わってきます。

  ◇ 予防接種を受けずにインフルエンザに罹った人を分母にすれば、10人÷20人=50%
  ◇ 予防接種を受けなかった人全員を分母にすれば、10人÷100人=10%

 そのように考えると、上記のG氏の発言もC氏の発言もどちらも間違っていないのです。両方とも正しいのです。
 それにしても50%(半減)と10%(1割減)では印象が全然違いますね。

  ◇ G氏のように言われると「予防接種の効果って大きいんだな」と感じ、
  ◇ C氏のように言われると「予防接種の効果ってそれほどじゃないんだな」と感じる

のではないでしょうか。さて、この差は何なのでしょう? この違いはどこから来るのでしょう?
 それは、立場の違いなんじゃないでしょうか?

  ◇ 全員が予防接種を受ければ、インフルエンザに罹る率(人数)は半減する。
  ◇ 自分が予防接種を受ければ、インフルエンザに罹る率(危険性)は1割減る。

ということですから、

  G氏は行政(Government)の立場に立っていて、
  C氏は市民(Citizen)の立場に立っている。

と受け取ればいいのでしょう。つまり、この例の場合、

  行政は「半減」と言うでしょうが、
  あなた個人にとっては「1割減」なのです。

 みなさんはインフルエンザの予防接種を受けていますか?

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