2020年2月5日水曜日

入試が入活に変わる

(2016年2月)

 就活(就職活動)、婚活(結婚活動)など「〇活」という言葉がありますが、まもなく「入活」という言葉が流行るでしょう。「大学入学のための活動」です。大学入試改革で、これまでの入試(入学試験)から入活(入学活動)に変わるのです。
 出願書類も変わります。これまでは住所・氏名などの欄を機械的に埋めて受験料を払い込めば手続き完了でしたが、これからは活動履歴やレポートなども作らなければなりません。書類審査が通ったら、続いて面接があったり、筆記試験があったりして、内定(合格)を取るまでに時間もかかります。内定をたくさんもらってどこに行こうか迷う受験生、まったく内定が取れずに途方に暮れる受験生も出てくるでしょう。そう、これからの大学受験は今の就職活動のようになるのです。
 そうは言っても、ある日突然すべてがひっくり返るわけではありません。これまでも推薦入試やAO(アドミッションズ・オフィス)入試という形がありましたし、これからも従来型の一斉一発入試は残るでしょう。おそらく当面は一斉一発型と入活型が併存しながら、割合が変わっていくのでしょう。でも後戻りはしません。一斉一発型から入活型への流れは一方通行です。

 ここで「AO」の意味を説明しましょう。日本で「AO入試」というと「入学試験の1つの型」のような意味になりますが、もともとの意味はそうではありません。AOは英語でいうと「Admissions Office」(アドミッションズ・オフィス)、つまりは「大学入学者を選定するための事務所」です。入試の型ではなくて、組織です。欧米の大学には必ずあって、入学者選定のために1年中仕事をしている専門の組織です。
 日本の大学入試制度改革が取り入れようとしているものは、要するにそれ、欧米型の大学入学のスタイルです。一斉一発試験で学力だけを問うのではなくて、多面的・総合的に受験生を評価しようという試みです。これまでは名前だけとりあえずAOと名乗ってみたものの実態が伴っていなかったものを、実質的に欧米型に近づけようとしていると考えればわかりやすいでしょう。
 なぜその方向に切り替えるのかというと、学力だけを問うこれまでの大学入試の形では日本人の能力が十分に発揮できないからです。日本の中高生が学力をつけることばかりに力を注いで、他のことに力を注がないからです。学力はあっても知的欲求は育たず、大人になると途端に勉強しなくなるからです。
 さらに、人気のある大学であっても国際的な評価が低く、人気のない大学では大学の体をなしていないからです。現状の日本の大学は学力だけで輪切りされているみたいなものですから、そうなるのは必然でしょう。
 ガラパゴス化(日本でしか通用しない形)している大学制度をグローバル・スタンダード(≒欧米型)に合わせていこうという意味もあります。

 大学入試改革の音頭をとっているのは文部科学省です。文部科学省が直接力を行使できるのは国立大学ですが、国立大学が変われば私立大学も変わります。ターニングポイントは2020年度(現中学1年生が大学受験する年)で、この年からセンター試験が変わります。具体的なやり方はまだ決まっていませんが。
 それに先立って2016年度入試から東京大学と京都大学で推薦入試が始まりました。定員枠はまだ小さいですが、少しずつ増えていくでしょう。2016年2月時点で始まっているもの・発表されているものはこれくらいですが、変化はまだまだ続きます。
 この変化は大きいですよ。戦後からずっと続いていた大学入学の形が初めて変わるのです。外国で学んだ少数の人を除いて、日本人がほとんど誰も経験したことのないものになるのです。
 でも、大きな変化・抜本的な変化ほど、定着するのは早いんじゃないかと私は予想しています。この変化にどう対応するか。受験生の立場、高校の立場、大学の立場、それぞれ対応の仕方は異なります。

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