2020年4月16日木曜日

前年同月比の振る舞い

先日のニュースで言っていました。
○ 2020年3月の訪日外国人旅行者数が前年同月比で93%減になった。
もちろん新型コロナウィルスの影響です。では、ここで【問題】です。
○ もし1年後に訪日外国人旅行者数が元に戻ったとすると、2021年3月の訪日外国人旅行者数は前年同月比で何%増になるでしょうか?
続いて、もう1問。2011年3月にも訪日外国人旅行者数が前年同月比で大幅に減少しました。東日本大震災の影響です。次の空欄に当てはまる数を入れてください。
○ 前年同月比マイナスは2011年3月から〔 〕ヶ月間続き、
  その翌月に前年同月比が急上昇した。

(データを調べなくても、常識で考えればわかります)

  ◇   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 ところで、なぜ「前年同月比」が使われるかと言うと、季節変動がある(季節によって旅行者数が変わる)からですが、前年同月比を異なる月で比べたり、月ごとの推移を見たりすると、一見奇妙なことが起きます。

 訪日外国人旅行者数の実際の数を見る前に、架空の数で説明しましょう。
 ある企業の月ごとの売上額が次表の通りだったとします。何かの事情で2011年3月に売上額が急減しました。そのときの売上額から前年同月比を求めて、グラフにしてみました。


 売上額のグラフを見てわかるように、2011年3月に1回だけ売上が大幅に減って、それ以降は順調に売上が回復しています。これを前年同月比で見ると、12ヶ月連続のマイナスとなり、13ヶ月目に120%の大幅プラスとなりました。前年同月比だと、えてしてこうなってしまうわけです。

 次に、実際の訪日外国人旅行者数を見てみましょう。下のデータは 日本政府観光局 のサイト(→ https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/ )で公表しているものです。


東日本大震災のころを見ると、前年同月比は2011年3月から12ヶ月連続でマイナスとなり、その翌月の2012年3月には前年同月比で 677÷353=1.92 すなわち 92% の大幅プラスになっています。考えてみれば、当たり前のことですが。
 次に直近の2020年3月を見てみると、前年同月比で 194÷2760=0.07倍に、すなわち 93% の大幅ダウンになっています。この先どうなるかはわかりませんが、おそらく東日本大震災のときと同じように「前年同月比は12ヶ月連続でマイナスとなり、その翌月に一転して前年同月比で劇的にプラス」となることでしょう。
 さて2021年3月にどれくらい劇的にプラスになるのか、仮にその時点での訪日外国人旅行者数が元の水準 2,760千人 に戻るとして、試しに計算してみましょう。この場合、93%減から元に戻るからと言って、93%増になるわけではありませんよ。きちんと計算してみると、前年同月比で 2760÷194=14.2 倍に、すなわち 1320%プラスということになります(「7%」という値から計算すると、100÷7=14.3 より 1330%プラスとなります)。実際には毎月少しずつ回復するのでしょうけれど、前年同月比で見ると、そんな風に見えるわけです。「前年同月比のマジック」ですね。

2 件のコメント:

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  2. 5/20 の報道によると「4月の訪日客2900人、前年同月比99.9%減」だそうです。
    (→ https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200520-00000043-asahi-brf )
    仮に1年後に元の数に戻るとすると、そのときの前年同月比は「1,000倍=99,900%増」になりますね。

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