2019年3月12日火曜日

お金の相対性理論

 お金は物の価値を測るものさしである。そして、為替相場が動くことは、お金というものさしの目盛りが伸び縮みすることと同じである。たとえば、円高ドル安は、円のものさしが伸びて、ドルのものさしが縮むことにあたる。あるいは、円安ドル高は、円のものさしが縮んで、ドルのものさしが伸びることにあたる。
 <図1>は「$1 =¥100」の場合で、<図2> は「$1 = ¥80」の円高ドル安になった場合を表す。<図3>は「$1 =¥120」の円安ドル高になった場合を表す。



 ではここで、<図4>のあるモノの長さを「円のものさし」で測ってみよう。そうすると <図1>では 100 に、<図2>では 90 に、<図3>では 110 になる。このとき「あるモノ」の長さは変わっていない。ものさしが伸び縮みしたから測定値が変わったにすぎない。
 「あるモノ」はマクロでみれば物価水準に、企業でいえば売上げや利益に、家計でいえば所得や資産にあたる。長くなったものさし=強くなった通貨で測れば、物価が下がったように、売上げ・所得が減ったように見える。短くなったものさし=弱くなった通貨で測れば、物価が上がったように、売上げ・所得が増えたように見える。
 当たり前だ。モノの長さ=物価や売上げ・所得が実質的に何も変わらなくても、ものさしの目盛り=為替相場が動けば、物価や売上げ・所得が増えたり減ったりしたように見えるのである。そして、見た目が変わることは、喜ぶべきことでも悲しむべきことでもなんでもないのである。
 お金というものさしは、相対的なものなのだ。変動相場制では為替相場が時々刻々と動く。つまり、モノの価値の変化とは無関係に、お金というものさしは絶えず伸び縮みしている。これを お金の相対性理論 という。


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