片道100kmの道のりを車で時速40kmで往復すると、何時間かかりますか。いえ、計算させたいわけじゃありません。この問題文の中に暗に含まれている条件について、考えてみたいのです。この問題に含まれる条件を思いつくままに並べてみると、
- 車の速度は一定。 (信号のないまっ平らな道で、寄り道もしなかった)
- 加速度は考えない。(無限小の時間に無限大の加速度で、時速40kmに達した)
- 即折り返し。 (100km先まで行って、タッチしてすぐに戻ってきた)
さて、計算問題を解くときは、与えられた条件に従えばいいのです。条件が異なれば考え方・計算法は変わりますが、設問の中で条件が設定されています。加速度・減速度を考えるにせよ、信号や坂道を考えるにせよ、あるいは他のものを考えるにせよ、そのように問題文に書いてあります。計算するのに必要な数値もすべて書いてあります。
そういう問題と比べると、高校情報科のカリキュラム「モデル化とシミュレーション」で扱う問題はちょっと雰囲気が違います。そこで扱う問題は、たとえば次のようなものです。
「やかんのお湯が冷めるときのお湯の温度変化」をシミュレーションしなさい。与えられた条件は「やかんのお湯が冷める」ということだけです。他には何の条件も与えられていません。数字は1つも書いてありません。他には、
車のアクセルを踏み続けるとやがて無限大の速度になるかというと、実際にはそうはなりません。「アクセルを踏み続けるときの車の速度変化」をシミュレーションしなさい。車の速度に影響を与えるものはいろいろ考えられますが、「どの要因を含んで考えるのか、どの要因を除いて考えるのか」は何も書いてありません。
カリキュラム「モデル化とシミュレーション」では、自分で条件を設定し、自分で現象をモデル化し、自分でシミュレーションします。考えてみると、生徒たちが普段解いている数学や理科の問題は、条件設定・モデル化が済んで、数値も決められていて、最後のシミュレーションだけをやっているようなものです。このカリキュラムで求めているものはそれとは違います。一から全部、生徒にやってもらおうということです。
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