2019年3月25日月曜日

カラスは黒いのか?

 命題「素数は奇数である」は偽です。反例があるからです。「2」は素数ですが、奇数ではありません。
 命題「4の倍数は偶数である」は真です。これは証明できます。そして、反例はありません。論理的には、
◇ 真であることを示すには証明する
◇ 偽であることを示すには反例をあげる
そうすることで、真偽がはっきりします。
 ところで、このルールを日常の論理に適用すると、大抵のことは偽になってしまいます。

 さて、カラスは黒いのでしょうか?
 これが真だと証明できるかというと、すべてのカラスをチェックすることは現実的には無理ですね。ということは、真であることを示せないということです。
 それでもガンバってチェックしてみるとどうなるでしょうか。おそらく、やがて反例に巡り合って、「カラスは黒い」が偽であることを示す結果になるでしょう。突然変異で黒くないカラスだってどこかにいるでしょうから。
 「Aさんは正直者である」という文も、「正直者=ウソをついたことが無い」と解釈すると、偽になるでしょう。誰だって一度くらいはウソをついたことがあるでしょうから。
 だからといって、「誰でも一度はウソをついたことがある」と言ったら、これもたぶん偽になります。世界中に一人くらいはウソをついたことがない人だっているでしょうから。
 少なくとも、どちらの文も真であると証明することは不可能です。

 さて、カラスの話に戻りましょう。ではどうすれば、カラスの色について論理的に正しい表現ができるでしょうか。
 「カラスは黒い。ただし、例外を除く」はどうでしょうか。いいえ、こんなのは全然ダメです。これが良いなら、「地球は平らである。ただし、例外を除く」も良くなってしまいます。
 「大抵のカラスは黒い」はどうでしょうか。いいえ、これも全然ダメです。まず「大抵」というのがあいまいですし、そもそも統計を取らずにそんなことが言えるはずがありません。
 「私が見たカラスは黒かった」というのはどうでしょうか。残念でした、これもダメです。これは「私が見た宇宙人には目が3つあった」というのと同じで、「勝手に言ってろ」という話です。

 カラスの色について論理的に正しい表現は1つしかありません。それは「黒いカラスは黒い」です。
 日常の論理に「反例があるから偽」というルールを適用したら、大抵のことは偽になってしまいます。
 日常の論理に論理学的な正しさを求めたら、ほとんど無意味な発言しかできません。


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