2019年3月14日木曜日

投げる動物

ミカンをひと房ポォーンと上に投げて、落ちてきたところをお口でパクッ。「やめさない!」 by 妻。
   ・・・ ちゃんとキャッチしたのにぃ 。。。
食べ終わったミカンの皮をフワッと投げて、ゴミ箱にストン。「いいかげんにしなさい!」 by 妻。
   ・・・ しっかりゴミ箱に入ったのにぃ 。。。
「もー、子供みたいなことして ・・・ ってゆーか今どき、子供だってそんなお行儀の悪いことしないわよ!」 妻に怒られました。
そのとき、ハタと気がつきました。「そっか、今どきの子供はこれをやらないからダメなんだ」
 ミカンを上に投げるときの柔らかさ、微妙な力加減。ミカンが手を離れる感触に合わせて、すばやく動く頭。これらがうまく連動しないと、ミカンをキャッチできません。
 ミカンの皮をゴミ箱に投げ入れるときは、方向よりも力加減がポイントです。ゴミ箱に入れるのはあんがい難しい。放物線の軌道がゴミ箱のすぐ上を通過し、その位置で速度が大きく引力方向に向いていることが条件です。
 子供をスポーツ・クラブに入れても、スクールに通わせても、この柔らかさ、微妙な力加減は身につきません。それは日常生活の中で、あるいは遊びの中でこそ身につくものです。

 さて、他の動物と比べて、人間に特に秀でた能力はなんでしょうか。
 たとえば陸上競技の種目は、走る・跳ぶ・投げるの3種類に分けられます。走るのは100m走からマラソンまで距離は様々で、跳ぶのは走幅跳・三段跳・走高跳・棒高跳があり、投げるのは砲丸投・円盤投・やり投・ハンマー投があります。
 このうち走る競技については、前の記事に書いたように「人間ほど走るのが遅い動物はいない」わけで、跳ぶ競技にしても、人間が他の動物に比べてジャンプ力があるようには思えません。ネコもカエルも、大きさ比でいえば人間よりよっぽど高く遠くへ跳びます。トビウオやモモンガにいたっては、なおさらです。走ることと跳ぶことについては、人間は動物の中で最低レベルと言えるでしょう。
 では、人間ならではの運動能力とはなんでしょうか。そう考えたときに思い至るのは、投げることです。よくよく考えてみると、物を投げることのできる動物は、実は人間だけなのです。
 ところで、物を投げられると「何が良い」のかというと、要するに強いのです。物を投げずに戦うなら直接体をぶつけるしかありませんが、物を投げられるなら離れたところから攻撃できます。クマやマンモスなど取っ組み合ったら絶対に勝ち目のない相手でも、石を投げたり、やりを投げたりすれば勝ち目が出てきます。逆に言えば、ゴリラが石を握っていても、オオカミがやりをくわえていても、遠くにいるなら別に怖くありません。
 物を投げるということは、一種の遠隔操作みたいなものです。物を投げられれば、接触プレーを避けられます。その発展形が、ピストルでありミサイルです。
 速く走ることが人間らしさではありません。高く遠くに跳ぶことも 人間ならではのことではありません。むしろ投げることが、人間の証しなのです。陸上競技の種目でなくても、野球でもダーツでもいいのですが、遠くに正確に投げることが人間ならではの能力と言えるでしょう。

 ミカンを一房ポォーンと上に放り上げて、お口でパクッ。食べ終わったミカンの皮をヒュッーと投げて、ゴミ箱にストン。こんなことができるのも人間だけなのです。
 だから、妻のように「行儀が悪いから、やめなさい!」と言うのは間違っています、たぶん。むしろ子供にこれを奨励し、ときには大人がやって見せることが必要なのではないでしょうか。


2 件のコメント:

  1. 『物を投げることのできる動物は、実は人間だけなのです』            
    多摩動物園のサルにフンを投げつけられ大当たりを食らった経験があります。    

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    1. それは貴重な経験ですね。しかも大当たりだなんて、コントロールもなかなか良いんですね。
      まぁサルは人間に近いのかもしれませんね。さて、「ミカンを一房ポォーンと上に放り上げて、お口でパクッ。食べ終わったミカンの皮をヒュッーと投げて、ゴミ箱にストン」、こんなことはサルにできるかしら?

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