僕は最近、競馬が好きだ。「馬って速いなぁ、カッコいいなぁ」、そんなことを想いながら、時々テレビで競馬中継を見ている。お金は賭けない。僕は職業柄すぐに期待値計算をしてしまうから、そうなると絶対に馬券は買えない。馬券は買わないけれど、馬が走っているのを見るのが好きなのだ。「ウチの陸上部の部員も こうやって走ればきっと速い のに」、そんなことを想いながら見ている。
そして見ながら、僕は競馬と陸上競技の違いを発見した。違いといえば「人が乗ってる、乗ってない」とか「お金を賭けてる、賭けてない」の違いもあるが、そんなことではない。走っている馬と人とに、もっと決定的な違いがあるのである。
それは何かというと、馬はスタート地点で「これから何メートル走らされるのか」、走っている途中で「あと何メートル走ればいいのか」を知らないということだ。
人は当然知っている。「自分が何メートル競走に出るのか」、「あと何メートルでゴールなのか」ということを。だから人はペース配分を考え、ゴール手前ではラストスパートをかけ、力を出し尽くしてゴールする。
けれども馬は何も知らずに、何も考えずに走っているのだ。だから馬は力を出し切ってゴールすることもないし、倒れ込むようにゴールすることもない。だからこそ人が乗って馬を操るのだろうが、馬は疲れたり、嫌になったりしたら、きっと走るのを止めるのだろう。
どうりで馬は、顔色一つ変えず、涼しい顔で走っている。人のようにぜいぜいはぁはぁしたりもしないのだろう。一着の馬もビリの馬も気持ちよさそうに走っている。一方、人はみんながみんな全力を出し尽くす。顔をゆがめ、息を切らし、へとへとになってゴールする。
競馬の馬と陸上競技のランナーはこんなにも違うのである。そしてその違いは、自分が走る距離を知っているか知らないかに由来する。さて、バカなのは、馬だろうか、人だろうか。
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