2019年3月25日月曜日

「モデル化とシミュレーション」の効能

 温泉にはいろんな効能があるらしい。ホントかウソかはともかく、そういうことになっている。
 さて、情報科のカリキュラム「モデル化とシミュレーション」にははたしてどんな効能があるのだろうか? 肩こりに効くわけでもない。美肌効果もない。癒されもしない。
 けれども、何の効能もないのでは授業でやる意味もないことになってしまう。いや、そんなはずはない。温泉に負けないくらいのいろんな効能があるはずだ。そう思うから、ボクは授業に取り入れているのだ。そしてその効能は、高校生だけにとどまらず、大学生にも大人にも効くと思うのである。
 で、結局どんな効能なの? それが今日のテーマである。(ウソでもいいから)湯船の横にある効能書きの看板みたいなものを作りたいのである。では、始めます。



◇ 複雑怪奇な現象から些細な要素を捨て去って、本質をあぶり出す。モデル化を通して、そんな視点を養う。

 正確な地図は意味を成さない。すべてを盛り込んだ地図とは土地そのものだが、それは何の役にも立たない。地図に何かを盛り込もうとすれば、同時にたくさんのことが抜け落ちる。そして価値ある地図になる。
 目的に応じていろんな地図があるように、モデルの作り方は様々だ。視点が変われば、違ったモデルになる。それはつまり、条件設定が異なるということだ。そう、モデル化することは、取捨選択することでもあり、条件を設定することもである。それらをひっくるめて、一から全部自分でやるのが「モデル化」である。

◇ モデルに基づいて現象を「見える化」する。シミュレーションは、自他に向けてのプレゼンでもある。

 シミュレーションとは、モデルが妥当なものかどうかを確認する作業でもある。それが現実をうまく捉えていなかったならば、あるいはそれで目的とするものがくっきり浮かび上がってこなければ、モデル化の作業に戻って考え直すことになる。こうしてモデル化とシミュレーションの間を行きつ戻りつしながら作業は進む。この流れは、新しいものを作るときに必ず経る過程である。具体的な物であれ、システムであれ、制度であれ、同じである。
 シミュレーション結果は、そのままで他人に向けてのプレゼン資料にもなる。エクセルを使ってグラフにするのだから、一目瞭然である。

◇ モデルを作るために図解しながら考える。その経験を通して、図解の効能も実感できるだろう。

 モデル化するためには図解しながら考えた方がいい。そうでなければ、複雑な現象を整理するのは難しい。さて、図解するために4つのパーツを用意した。それを用いて図解しながら考えてみてほしい。
 こういうものは経験がモノを言う。数打った人の勝ちである。何度か経験するうちに、図解のコツがつかめるだろうし、図解の効能が実感できれば、他の図解法を取り入れるなり、自己流でやってもらうなりして構わない。
 手で考え、目で考えるために、図解は強力な道具である。同時にこれもまた、他人に向けてのプレゼン資料としての価値も絶大である。

◇ 人がやるべきなのは、考えること、設計すること。単純計算は機械にやらせよう。

 学校で数学や理科の問題を解くとき、教科書の中でモデル化は済んでいて、問題の中で条件も数値も与えられる。でもそれは「モデル化とシミュレーション」の発想でいえば、「モデル化が完全に終わっているものを与えられて、生徒は最後のシミュレーションをやっているだけだ」ともいえる。
 それに対して、「モデル化とシミュレーション」では、あなたにモデル化をしてもらいたいのだ。そしてエクセルに対して数値を与え、計算法を指示してやって欲しいのだ。その指示に従ってシミュレーションするのはエクセルである。今どき、こんなにコンピュータがどこにでも転がっている時代に、人間様が単純計算する必要はないのである。
 ぶっちゃけ言えば、今の企業が欲しい人材は、モデル化する(設計する)人。シミュレーションする(指示に従ってやる)のは、アルバイトか派遣労働で十分なの。



 がぁーっと書いてみた。ところで、「モデル化とシミュレーション」というものは巷でポピュラーなものではない。それがどんなものか、まるでイメージがつかめない人がほとんどだろう。この記事の読者の方もおそらくそうだろう。そういう人がイメージをつかめて、なおかつその効能を認めて、さらに「よしやってみよう」という気にさせるような文章になっているだろうか?


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