2019年3月23日土曜日

石油の最後の1滴

 「あと○○年で石油が無くなる」という話は、まるで信用できません。1つの理由は、産油国や石油会社が、自らの存亡に関わることをバカ正直に言うはずがないからです。もう1つの理由は、採掘技術と原油価格によって、採算が取れるラインが変わるからです。
 ところで、石油を掘るための燃料は、石油です。地面から浅いところの掘りやすいものがなくなれば、さらに深くまで掘ることでまた石油が湧いてきます。条件が悪くなれば回収率が下がりますが、得られる量が投入する量より多いうちは、掘ることができます。

 仮にいま現在 1 の石油を投入すれば 100 の石油が得られるとしましょう(回収率 99%)。この場合、正味の生産量は 99 です。さて、条件がこれより悪くなったら、人はどうするでしょうか。
… 10 の石油を投入しなければ 100 の石油を得られないとなったら(回収率 90%)、…
→ 11 の石油を投入すればいいんです。そうすれば 110 の石油が出てきて、99 の石油を確保できます。
… 50 の石油を投入しなければ 100 の石油を得られないとなったら(回収率 50%)、…
→ 99 の石油を投入すればいいんです。そうすれば 198 の石油が出てきて、99 の石油を確保できます。
 こうすれば、必要量を確保することができてしまいます。資源が加速度的に減り、環境負荷が加速度的に増えますが、現行の経済システムに則った形で成立します。
 理論的には、まだまだいけます。回収率が 10% になったら、891 の石油を投入すればいい。回収率が 1% になったら、9801 の石油を投入すればいい。どちらの場合も、99 の石油を確保できます。

 原油価格はそれにどのように影響するでしょうか。採掘のコストが上がれば、原油価格は上昇します。けれども、原油価格が上昇すれば、それまで採算が合わなかったところでも採算が合うようになります。つまり、原油価格が上がれば上がるほど、石油がどんどん湧いてくるわけです。
 買い手がいる限り、人類は石油を掘るでしょう。それが自由主義に則った現行の経済原則です。こうして、得られる量が投入する量と等しくなる(回収率ゼロ)まで、人類は石油を掘り続けるのです。

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