2019年3月13日水曜日

宇宙にひしめくダークなもの

《腑に落ちる最新宇宙論(3)》

 ダーク・マターダーク・エネルギー という言葉があります。「言葉がある」と言ったのは、まさに言葉だけがあるわけで、実体がないからです。
 ダーク・マターは暗黒物質と、ダーク・エネルギーは暗黒エネルギーと呼ばれることもありますが、色が黒いわけではありません。「ダーク」というのは「得体のしれない」というくらいの意味合いで、要するに「わけのわからない」もの、「あるんだかないんだかもわからない」ものです。

 でも、どうしてそんなものを持ち出すのでしょう。ところで、そんな変なものを持ち出すのは、日常生活でも歴史上でもよくあることです。歴史上の有名な話を1つ取り上げましょう。
 フランス革命前夜、城の外が騒がしいのを不思議に思ったお姫様が家来に聞きました。「外では何を騒いでいるの?」。家来が答えました。「食べるパンが無いと、人々が騒いでいるのでございます」。姫が言いました。「パンが無いなら、ケーキを食べればいいじゃん!」。はい、これが「ダーク・マター」です。
 でも、ケーキが無かったらどうすればいいのでしょう。姫はきっと言うでしょう。「ケーキが無いなら、家来に作らせればいいのに」と。 はい、これが「ダーク・エネルギー」です。

 ところで、姫は何一つ間違ったことを言っていません。全くもって正しいのです。「パンを食べなくても、ケーキを食べれば大丈夫」、その通りです。「家来にケーキを作らせれば、ケーキを食べられる」、おっしゃるとおりです。どこにも間違いはありません。
 けれども、何も解決しないんですね。つまり、答えになっていないわけです。
 ダーク・マターもダーク・エネルギーも同じです。まず観測結果と矛盾しなければ、間違っているとは言いきれない。また、目の前の問題をとりあえず回避できる(ように見える)なら、無下に捨て去る必要もない。要するに、これまでの知見で理解できない現象が現れたときに、「そこに何か得体のしれない何かがある」と考えれば、どうにでもなるわけです。それがダーク・マターであり、ダーク・エネルギーなのです。

 宇宙にあるすべてのもののうち 90 %以上をダーク・マターとダーク・エネルギーが占めていると言います。逆にいうと、普通の物質、つまり地球や太陽などいわゆる物質でできているものと全エネルギーを合わせても、宇宙にあるものの 10 %にもならないそうです。「へぇー、すごいなぁ」と思うでしょうか、それとも「???」でしょうか。あるいは「闇組織が9割を握っていて、秩序が保たれているのは1割以下、それって実社会と同じだな」と考えて、妙に納得できてしまうかもしれませんね。
 宇宙は広い。とてつもなく大きい。まさに、天文学的なスケールです。でも、人の考えはそれよりはるかにデカいようです。宇宙について考えるうちに、人の考えは宇宙の果てを飛び越えて、あっちの宇宙に行っちゃったみたいです。
 そしてこうなると、もう何でもアリ。間違っていることが証明されなければ、観測結果と矛盾しなければ、言いたい放題です。もちろん間違いがはっきりすれば、その理論はギロチンの露と消えます。でも、もともとあるかないかもわからないものですし、そんなものを直接観測する手段はありませんから、間違いだと言えるはずもありません。ですから、当分の間は大手を振って歩けるでしょう。むしろ黙っていたら、もしそれが正しかった場合に大損しますので、思いついたアイデアにはせっせと唾をつけておくのが、研究者の一番の仕事になります。

 姫と家来のやり取りは続きます。姫は「家来にケーキを作らせろ」と言いますが、庶民には家来なんかいませんよね。そこに話が及ぶと、姫は言いました。「あんたが行けばぁ」。家来は言いました。「では、姫様のお世話は誰がするのですか?」、「あんたに決まってるでしょ」、「そんな無茶な」、「分身の術でも使いなさいよ!」。
 でたぁ、分身の術・・・はい、これが パラレル宇宙論(多重宇宙論)です。「宇宙が1つとは限らない」(宇宙がたくさんあると考えれば、なんとかならないでもない)、「別の宇宙はどこにあるの?」、「それは誰にもわからない」(つまり、絶対無いとは言い切れない)・・・。まさにダークな(わけのわからない)世界です。

 これが ダーク・マター(暗黒物質)と ダーク・エネルギー(暗黒エネルギー)と パラレル宇宙論(多重宇宙論)の正体です。腑に落ちました?


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