2019年3月13日水曜日

お茶目なブラックホール

《腑に落ちる最新宇宙論(2)》

 青く見える物は本当は黄色なんです。というのは、青い光を反射するから青く見えるのであって、その物は青の反対の色すなわち黄色い光を吸収しているから、本当は黄色に染まっているのです。同じように、緑に見える物は、赤い光を取り込んで、緑色の光を跳ね除けているのであって、だから本当は真っ赤なのです。
 さて、ブラックホールは何色でしょうか? ブラックホールが黒いなんて俗説を信じちゃいけません。だってブラックホールは本当は光り輝いているんですから。
 ブラックホールは重力がとても大きくて、星でも何でも飲み込んでしまうモンスターのように言われます。そのあまりの重力の強さゆえに、光さえも出てこられないと言います。確かに地球から見るとそのように見えるのですが、本当はそんなにおどろおどろしいものじゃないんです。
 説明しましょう。光を飲み込んで、しかも光が出てこないということは、ブラックホールは光り輝いているということですね。でも太陽みたいに自分で燃えて光を放っているわけではありません。ブラックホールは恒星が燃え尽きて出来るものですから、むしろひんやりしています。ひんやりしているけれども、外から光を無限に取り込んで閉じ込めて、永遠に光り輝いているのです。
 そして宇宙空間を移動しながら、その辺りの星やら塵やらもどんどん取り込みます。この様子、何かと同じですね。ひんやり冷たくて光り輝くものが、ゴロゴロ転がりながら辺りにあるものを取り込んでどんどん大きくなるわけです。そうです、雪だるまです。この段階では雪だるまと言うより、雪玉と言った方がいいかもしれませんが。
 雪だるまになるには、もう1ステップ必要です。説明を続けましょう。ブラックホールはブラックホールも飲み込みます。お互いの強力な重力で引き合うのですから、ブラックホール同士が近づけばくっつくのは当然です。そしてこのとき、2つの雪玉がくっついて、人形型の雪だるまが完成します。めでたしめでたし。
 ところで、銀河の中心には特に大きなブラックホールがあります。それが中心にあって他の恒星を引っ張るから、渦巻き状の銀河になるんですね。さて、私たちがいる天の川銀河のお隣にアンドロメダ銀河があります。アンドロメダ銀河は天の川銀河に近づいてきています。ということは、あと何十億年かすると、私たちがいる天の川銀河とお隣のアンドロメダ銀河が衝突するはずです。そのとき、当然2つの銀河の中心にあるブラックホール同士もくっつくでしょう。そうすると、超巨大な雪だるまが出現します。すばらしい天体ショーですね。
 もちろん地球にいたら、その光景は見えません。その光景を間近に見るには、いわゆる事象の地平面の内側に入り込むことが必須です。でも考えてみたら、そのときには太陽は燃え尽きているでしょうから、地球にいても仕方がないわけで、ならばいっそのこと天の川銀河の中心部に移動して、せっかくだから世紀の天体ショーを見学するというのはむしろ合理的な選択と言えるかもしれません。
 ちなみに現在修行中の弥勒菩薩が56億7千万年後にみんなを救ってくれることになっていますから、心配無用です。絶妙のタイミングですね。さすがです。
 それはそうと、ごろごろ、ぺたぺた、ひんやり、きらきら、これがブラックホールです。そんなにおどろおどろしいものじゃありません。むしろなかなかお茶目です。腑に落ちました?


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