2019年3月14日木曜日

分譲マンション、スラム化の法則

 分譲マンションを建て替えた実績は、世界中にほとんど無い。日本での実績は、東京都心に数例あるのみだ。表参道にある同潤会アパートや現在は六本木ヒルズになっている場所にあった日ヶ窪団地くらいのものである。日本のマンションの歴史は都心から始まった。その初期のものがいくつか建て替えられたにすぎないのである。
 しかし、その2例は他のマンション建て替えの前例にはならない。その2例はいずれも地価の高い都心にあって、土地の利用価値が高かったから成功したのだ。しかも低層階で空地も広く、敷地面積の割に権利者は少なかった。こんな好条件のマンションは他には無い。
 では、他のマンションは老朽化した後、どうなるか? スラム化する運命にあるのである。建て替えには住民の8割以上の合意が必要だが、経済状況も年齢層も異なる住民同士が合意するのは難しい。ところで、新しいところに住みたいと考える人は、合意を取り付けるために時間と労力をかけるより、古いマンションを売って、新築マンションなり戸建てを買うだろう。その方が安いし、希望に合うし、手っ取り早い。そして、その人から中古マンションを買うのは「まだまだ住める」と考える人である。
 マンションが古くなるにしたがって使用価値が下がり、価格も下がる。ある価格で売れなければさらに価格が下がって、買い手が現れたところで価格が決まる。そのときの買い手は 「そこに住もう」と考える人である。つまり、どの時点においてもその価値と価格にちょうど合う人たちがそこに住む。こうして、マンション住民の間で「建て替えよう」という合意はいつまで経っても得られないことになる。
 大雑把にいえば、まずそこそこ裕福な人が新築マンションを買って、そこに住む。そこが古くなると、裕福な人は新築物件に移り住み、裕福でない人が中古マンションを買って住む。さらに古くなると、裕福でない人はそれを売り、さらに安い価格でもうちょっと貧しい人がそれを買う。
 分譲マンションは個人の資産だから、いくら古くなっても売買できるし、所有者はそこに住むことができる。こうして年が経つにつれ、分譲マンションの価値と価格と住民の生活水準の3つがパラレルに下がっていく。次にそのマンションを買う人は、一人住まいの戸建てを売ってマンションを買い、差額を生活費に充て、それを食いつぶしながら、死ぬまで住み続けるつもりのお年寄りか。

分譲マンションの法則 
第1法則分譲マンションは古くなるにしたがって価値が下がり、価格も下がる。 
第2法則どの時点においてもその価値と価格にちょうど合う人達がそこに住む。 
第3法則分譲マンションはいつまでも建て替えられずに、次第にスラム化する。 

日本中にスラム化したマンション、幽霊屋敷のようなマンションが立ち並ぶ日も遠くない 。。。




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