文化祭のシーズン、会場では警備体制を敷く。最近ではそういう学校が多い。ガードマンを配置したり、教員が巡回したりして、怪しい人物がやってきたらマークするなり、お引き取り願うなりして混乱を防止する。
さて、そういうときの判断基準は、見た目。「人を見た目で判断するな」というが、不特定多数の中からターゲットを絞るには他にどんな基準があるだろう。もちろん、見た目で悪人と決め付けているわけではない。いわば、見当をつけているのだ。そして往々にして外れる。
ところで、似たような判断の仕方はIT機器でもネット技術でもいろんなところで使われている (2) 。たとえば、手書き文字判読システム。読みにくい文字でもとりあえずいずれかの文字と判断して、ユーザーが修正すればユーザーのクセを学習して、少しずつ精度を上げる。そして使えば使うほどヒット率が向上する。これは情報技術の1つであるが、ベースには「ベイズ推定」という定式化された理論がある。それは、ぶっちゃけ言えば、高校数学で習う「条件付き確率」に他ならない。
「人を見た目で判断」するのも結局はそれと同じことをしているのである。まず、見た目で「怪しい」と思う。言葉は悪いが、仮に「悪人率50%」と判断したとしておこう。そこで声をかける。そして相手の顔を見る。穏やかな表情ならその率を下げ、慌てた様子ならその率を上げる。次に相手が声を出す。「なんですか?」ときたら率を下げ、「なんだてめぇ」ときたら率を上げる。・・・
人の感覚による判断とコンピュータによるデータの蓄積という違いはあるが、「はじめに( A )、続いて( B )、しかし( C )」という流れは全く同じなのだ。
「見た目で判断」であれ「ベイズ推定」であれ、それから得られるものは「正しいもの」ではなくて、「マシなもの」である。それで十分役に立つ。
(1) 下線部( A ),( B ),( C )に入れるのに適当な文を、各1行で書きなさい。
(2) 下線部 (2) の例を「手書き文字判読システム」以外に1つ挙げなさい。
《解答例》
(1) A (はじめに) 雑な基準でとりあえず判別する
B (続いて) データを集めながら少しずつ精度を上げる
C (しかし) どこまでいっても正確なものにならない
(2) 漢字変換時の候補 / グーグル検索のヒット率アップ /
/ 迷惑メール自動判別 / アマゾンのお勧め本 など
《解説》
問題文をよく読めば、なんとか答えられるだろう。要するにこれは、常識問題である。
ところで、設問に「1行で」という指示がある。要するにこれは、作文練習でもある。
解答者がしっかり読んで考えれば、出題者が言いたいことが伝わるだろうな。
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