2019年4月14日日曜日

なぜ高校で倫理の授業を置きにくいのか?

(2012年冬)

 高校の教科「倫理」の内容は多岐にわたる。ざっくり分けてみると、
  • 哲学系(西洋・日本・中国・インド)
  • 宗教系(キリスト教・イスラム教・仏教・神道)
  • 思索系(人間・自我・人格・青年期の悩みなど)
  • 倫理系(生命・環境・異文化・いじめなど)
これだけのことを週2時間でやるのだから、1つ1つは表面的で薄っぺらいものにならざるをえない。

生徒の側からみると、
  • (社会科の他の科目のように)暗記だけでは、対処できない
  • 試験で、何が (どんな社会問題が)出てくるかわからない
  • つかみどころがない(どの説もハッタリみたいで、互いに矛盾しているようで、正しいとも思えない)
そんな印象を持つかもしれない。

 ところで、高校で倫理の授業を置きにくい本当の理由は、それではない。本当の理由は、文科省の規定と大学の受験科目にある。
 まず、文科省の学習指導要領によると、社会科(表向きは地歴科と公民科に分かれているが、まとめて社会科という認識の方が現実的)の科目のうち
  • 世界史必修
  • 日本史または地理のどちらかを必修
  • 現代社会または倫理&政治経済のどちらかを必修
となっている。つまり、倫理をやらない場合でもあわせて3科目必修で、倫理をやるとなると4科目必修となる。もちろん理系の生徒も同じ条件である。

 次に、センター試験を見てみると、多くの大学の受験科目は
  • 文系では、世界史・日本史・地理または倫理&政治経済から2科目選択
  • 理系では、          〃         から1科目選択
である。つまり、倫理だけではセンター試験を受けられない。(もちろん政治経済だけでも受けられない。一昨年度までは倫理だけでも、あるいは政治経済だけでも受けられたが、昨年度からこうなった)
 そのくせ、国公立大の2次試験、私立大の文系の受験科目は、
  • 東大 → 世界史・日本史・地理から2科目選択(倫理も政治経済も選択肢が無い)
  • 一橋大→ 世界史・日本史・地理・「倫理&政治経済」から1科目選択(政治経済と抱き合わせ)
  • 早大 → 世界史・日本史・地理・政治経済から1科目選択(倫理の選択肢が無い)
  • 慶大 → 世界史・日本史から1科目選択        (    〃    )
である(学部によって微妙に異なるが、概ねこんなところだ)。
 すなわち、まとめて言うと、
  • 倫理をやろうとすると、授業でも受験でも政治経済がもれなくついてくる
    (└→ 理系にとってやりにくい)
  • 倫理と政治経済を両方やっても、受験できる大学の選択肢が限られる
    (└→ 文系にとってやりにくい)
のである。そんなことをするよりも、
  • 現代社会を形だけやる(←これは受験科目の対象外)
  • 世界史・日本史・地理のうち2つをがっちりやる(←このうちの1つか2つで受験する)
方が現実的なのである。実際、そのようにやっている高校が多い。
 でも、ウチの学校では倫理をやりたいとボクは思うのである。そのわけは 次の記事 で。

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