2019年4月14日日曜日

人工知能の作り方

 「こういう入力があったときは、このように出力する」、こんなコードを膨大に書き込んでも人工知能は出来ない。新しいものを生まないからである。書き込んだコードから一歩も外へ出られないからである。自ら進化しないからである。これではロボットにはなっても、人工知能にはならない。
 では、どうすれば人工知能が作れるのか? 人の発言を統計的に処理すればきっと出来る。ネット上に膨大にあるみんなの発言の最大公約数的な発言を続ければ、自ら進化する人工知能にたぶんなる。
 人工知能X氏に、まずネット上で書き込みをさせる。最初はなんでもいい。それに対して人工知能Y氏が、世界中のみんなの書き込みを統計的に処理して、しかるべくコメントする。X氏の発言と似たような発言はネット上にたくさんあるので、それに対する他の人の反応を真似ればよい。
 そうするとX氏も同様に、Y氏のコメントと似たようなコメントに対する反応を調べて、同じように反応する。そうこうするうちに、X氏とY氏のやり取りに他の人も話に加わってくるだろう。誰が絡んできても、X氏とY氏のやり方は同じである。ネット上に膨大にあるみんなの発言を真似るだけである。
 発言を真似ることは、考え方を真似ることである。実際に人が考えるとき、他人の発言を真似ることでそれをやっている。結局はそういうことだ。そのように見れば、X氏とY氏は、人が考えてネット上で発言するのとなんら変わらないことになる。
 こういうことを可能にするのに十分な量の情報がネット上にはある。X氏とY氏は冗談も言えるし、相手を笑わせることも、怒らせることもできる。これこれこういう発言をした後にはどういう発言が続くか、というのも統計をとれば予測できる。こうして、ネット上でみんながやっていることはX氏もY氏も何でも出来ることになる。
 そして、その統計には新しい情報が増えるから、X氏とY氏はちゃっかり進化するのである。そしてまた、その新しい情報のうちのいくつかはX氏とY氏によるものだから、X氏とY氏は自ら進化していることになる。こうして人工知能が作られる。

 そこにセンサーと駆動装置をつなげば、人工知能搭載ロボットが出来上がる。お手伝いさんロボット、介護ロボット、先生ロボットなど。当然ネットとつながっている。ロボットの台数が増えれば、他のロボットの経験も蓄積されて、次第に精度が上がってゆく。
 ところで、その頃には人も今以上にネットにつながっている。子供一人一人の効果的な学習法を提供するために言葉と行動をモニターしたり、健康管理のために運動量や内臓の働きを監視したり、徘徊しそうな老人にGPSをつけたり。そうしなければ適切な学びが保証されず、保険にも入れず、家族の負担が増えるので、こうしてみんなが進んで自分と家族のデータをネット上に絶えずアップするようになる。現代人がネットから情報を得ることなしには暮らせないように、10年後の人はネットにデータをアップし続けなければ暮らせないようになるだろう。
 人工知能は、人がアップするデータと人工知能がアップするデータの両方にアクセスして、瞬時に検索して統計処理して判断して行動する。ここに至って、人の出る幕はもとより無くなる。処理できるデータ量においても、処理速度においても、太刀打ちできないからである。
 この光景は悲観的なものでは、おそらくない。車や電車が発達した結果、現代人がみんな寝たきりになったかというと、そうはならなかった。行動範囲が広がって、むしろアクティブに動いている。人工知能が活躍するのは、きっともうすぐだ。準備は整いつつある。

 僕が想定している人工知能の使い方を1つ紹介しよう。ネット書き込みの件に戻るが、僕が人工知能に指示を与える。「僕が1週間ネット投稿しなかったら、僕が戻るまで、代わりに投稿しておいてくれ」と。人工知能は僕の投稿を真似して、うまくやってくれるだろう。その時点でもし僕が死んでいたとしても、そのことを誰にも気づかれないままに、ずっとずぅーといつまでもネット上に居続ける。そんなことが出来る時代が、もう間もなくやってくる。
 これがビッグデータの正しい使い方。

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