2019年4月23日火曜日

不思議の国の論理学

「不思議の国のアリスの著者ルイス・キャロルは大学で数学を教える数学者でした。彼の著作には論理学を話題にしたものがいくつかあります。1つ紹介しましょう。
 アンクル・トムとアンクル・ジョーが床屋に行こうとしています。床屋にはカーとアレンとブラウンの3人の店員がいます。3人のうち腕が確かなのはカーだけなので、アンクル・トムとアンクル・ジョーはカーが店にいることを期待しています。
 アンクル・ジョーが言います。「カーが外出しているなら、もしアレンもまた外出しているとすれば、ブラウンは店にいる (A)」と。アンクル・トムもそれを認めました。それを認めなければ、店に店員が誰もいなくなってしまうからです。
 アンクル・ジョーが続けます。「アレンが外出しているなら、ブラウンは外出している (B)」と。 アンクル・トムはそれも認めました。アレンは体をこわしていて、一人で外出するのが難しいからです。
 さて、以上のことからアンクル・ジョーは「カーは店にいる (C)」と結論づけました。アンクル・ジョーの考え方は「もしカーが外出しているなら、『アレンが外出しているなら、ブラウンは店にいる』と『アレンが外出しているなら、ブラウンは外出している』が同時に成り立たなければならないことになるが、これは矛盾である」ということです。そして背理法を使って「カーは店にいる」と主張したわけです。
 アンクル・トムは反論しました。アンクル・トムは、2つの仮定を認めたとして、そこから導けることは「カーとアレンが両方いっしょに外出することはありえない (D)」ということであって、「カーが店にいる」という結論にはならないと主張しました。
 さて、アンクル・トムとアンクル・ジョーの議論はどちらが正しいのでしょうか? どちらが間違っているのでしょうか?
では、ここで 【問題】です。上の文章から条件 P , Q , R  を設定し、前提 (A) と (B) ならびにアンクル・ジョーの結論 (C) とアンクル・トムの結論 (D) を論理式で表し、真理表を作って、2人の導出の正誤を判断しなさい。



《解答例 》
P :   カーが外出している    
Q :   アレンが外出している    
R :   ブラウンが外出している    とすると、 
前提 (A):  P ⇒ (Q ⇒ ¬R)   
前提 (B):  Q ⇒ R          
アンクル・ジョーの結論 (C) :    ¬P          
アンクル・トムの結論 (D)   :   ¬(P∧Q)      となる。 


※ 文章全体をよく読めば、前提 (A) は  P ⇒ (Q ⇒ ¬R) となるはずなのだが、
  下線部 (A) だけからは   P∧Q ⇒ ¬R   と読めなくもない。
  だから、それも良しとしよう。その場合も導出の正誤は上と同じになる。

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