オークションには主に4種類あります。
◇ イングリッシュ・オークション
参加者が一堂に会して、マグロの競りのように「価格が吊り上がっていく」もの。
◇ ダッチ・オークション
参加者が一堂に会して、バナナの叩き売りのように「価格が下がっていく」もの。
◇ ファースト・プライス・オークション
事前に入札して、「最高値で入札した人に、その価格で売る」もの。
◇ セカンド・プライス・オークション
事前に入札して、「最高値で入札した人に、2番目に高い入札額で売る」もの。
いずれも「買い手を決める」オークションですが、自治体が行う競争入札のように売り手を決める「逆オークション」もあります。また、株式市場のように売り手と買い手の双方が価格を提示する「ダブル・オークション」もあります。
ここで ファースト・プライス・オークション と セカンド・プライス・オークション を比べてみましょう。
【問題】ある品物がオークションに出品されました。あなたにとってその品物には100円の価値があります。すなわち、あなたが x 円で落札した場合、あなたは 100-x 円の利益を得ることになります。ですから、あなたはなるべく安い価格で応札したい。その方が利益が増えるからです。また、このとき、もちろん x≦100 です。なぜなら、100円より高い金額で応札すると、あなたは損してしまうからです。
いま、あなた以外にもう一人だけ入札者がいて、彼は1円から200円までの200通りの金額それぞれ同じ確率(200分の1の確率)で入札するものと仮定します。また、計算を簡単にするために、二人が同じ金額を入札したときは、あなたが落札するものとします。
さて、あなたはいくらで入札したらいいでしょうか。ファースト・プライス・オークションの場合とセカンド・プライス・オークションの場合のそれぞれについて、あなたが x 円で入札した場合のあなたの利益の期待値 E(x) を計算して、期待値が最大になるときの x の値を求めてみましょう。その値が、あなたが入札するべき金額です。
(1) まず、ファースト・プライス・オークションの場合。あなたが x 円で入札したとき、あなたが落札する確率(相手の入札額があなたの入札額以下である確率)は _____ で、そのときの利益は _____ 円です。ですから、あなたが x 円で入札したときの利益の期待値 E(x) は __________ 円となり、E(x) は x= ___ で最大値 ___ 円をとります。
(2) 次に、セカンド・プライス・オークションの場合。あなたが x 円で入札したときの利益の期待値 E(x) を求め、E(x) が最大になるときの x の値を求めてください。ただし、x は自然数とします。
(3) 以下の〔 〕の中から、ファースト・プライス・オークション(F)、セカンド・プライス・オークション(S)、イングリッシュ・オークション(E)、ダッチ・オークション(D)のいずれかを選んで、文章を完成させてください。
(1) と (2) の結果から、「相手の入札額にかかわらず、自分の評価額で入札した方が良い」のは 〔F,S〕 である。一方、〔F,S〕 では「相手の入札額がわからないと、自分の入札額を合理的に決めにくい」。
また、入札する人の評価額があらかじめ決まっているとすると、イングリッシュ・オークション(E) と ダッチ・オークション(D)のうち「2番目に高い評価額の近くで価格が決まる」のは 〔E,D〕 である。一方、「相手の評価額がわからないと、どのタイミングで買ったらいいのかわからない」のは 〔E,D〕 である。
そのことを考えると、、ファースト・プライス・オークション(F) と同じような結果になるのは 〔E,D〕 であり、セカンド・プライス・オークション(S) と同じような結果になるのは 〔E,D〕だと言える。
東大の入試問題(2010後期)をアレンジして、もう少し簡単で分かりやすいであろう問題を作ってみました。答えは、以下の通りです。
(1) まず、ファースト・プライス・オークションの場合。あなたが x 円で入札したとき、あなたが落札する確率(相手の入札額があなたの入札額以下である確率)は x/200 で、そのときの利益は (100-x) 円です。ですから、あなたが x 円で入札したときの利益の期待値 E(x) は E(x)=x/200 × (100-x) 円となり、E(x) は x= 50 で最大値 12.5 円をとります。
(2) 次に、セカンド・プライス・オークションの場合。あなたが掲示した額が最高値 x 円であった場合、相手が提示した金額 y 円 (x ≧ y)が買い値になりますから、計算は多少複雑になります。たとえば、相手が提示した金額が 1 円である確率は 1/200 で、そのときのあなたの利益は 100-1=99 円です。…あるいは、相手が提示した金額が x 円である確率は 1/200 で、そのときのあなたの利益は (100-x) 円です。そのことからあなたが x 円で入札したときの利益の期待値 E(x) は
E(x)=1/200・(100-1)+…+1/200・(100-x)=x/200×{100-(x+1)/2}
円となります。x を自然数とすると、この式は x= 99 または x= 100 で最大値 24.75 円をとります。
(3) (1)と(2)の結果から、「相手の入札額にかかわらず、自分の評価額で入札した方が良い」のは セカンド・プライス・オークション(S)である。一方、ファースト・プライス・オークション(F)では「相手の入札額がわからないと、自分の入札額を合理的に決めにくい」。
また、入札する人の評価額があらかじめ決まっているとすると、「2番目に高い評価額の近くで価格が決まる」のは イングリッシュ・オークション(E)である。一方、「相手の評価額がわからないと、どのタイミングで買ったらいいのかわからない」のはダッチ・オークション(D)である。
そのことを考えると、ファースト・プライス・オークション(F) と同じような結果になるのは ダッチ・オークション(D)であり、セカンド・プライス・オークション(S) と同じような結果になるのは イングリッシュ・オークション(E)だと言える。
以上まとめると、ファースト・プライス・オークション(F)や ダッチ・オークション(D)では 「他の入札者と駆け引きしながら動かなければならない」 が、セカンド・プライス・オークション(S)や イングリッシュ・オークション(E)では 「他の入札者の動向とは無関係に入札できる」 ということです。 あなたはどのオークションに参加したいですか?
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