2019年3月15日金曜日

アース・ダイビングしてみよう

 前の記事で「地面に垂直に穴を掘って地球の裏側まで貫通させて、そこに飛び込んで自由落下すると、38 分で地球の裏側に到着する」ことを書きました。運動方程式を立てて計算したから、およそ合ってるはずです。我ながら、考えれば考えるほど、楽しそうなイベントですね。
 穴に飛び込んで始めの19分間は地球の中心に向かって重力に引っ張られて、どんどん加速します。中心を超えると逆方向に重力が働いて、後半の19分間は減速して、速度がちょうどゼロになったときに地球の裏側に到着します。以上は、前の記事に書いたとおりです。

 さて、その記述は地球上の人が自由落下する人を見たときのものですが、自由落下する人の視点で見るとちょっと様相が違います。その人は38分間、無重力体験をしているのです。その間にトンネルの壁が移動していく。壁の移動速度は最高時速40000㎞。彼にとってはそうなのです。
 トンネル内部が真っ暗であれば、彼はトンネルの壁が移動することにも気付かないでしょう。その場合、真っ暗な中で無重力遊泳を楽しんで、38分経過したときに突然ポッと陽の光が見えると、そこが地球の裏側。なんとも楽しい経験ではありませんか。
 地球上で無重力体験をする唯一の方法は、自由落下することです。他に方法はありません。NASAの宇宙飛行士養成プログラムの宇宙遊泳トレーニングは、無重力もどきにすぎません。つまり、ニセモノ。ちょっと考えてみてほしいのですが、地上10,000mの高さからスカイ・ダイビングしても、無重力体験できるのは1分未満。しかも極めて危険です。
 それに比べて、先ほどの方法ははるかに長時間の無重力体験ができて、しかも安全確実。「アース・ダイビング」と名付けましょう。地球の裏側まで貫通する穴を掘って、そこに飛び込みます。穴に飛び込んだ瞬間から無重力体験が始まります。始めは穴の壁がどんどん加速しながら移動して、途中から壁の移動速度がだんだん遅くなって、壁が止まった瞬間に地球の裏側に到着します。時間にして38分間。ほら、安全確実でしょ。しかも地球の裏側に到達する最短の方法だから、実用的でもあります。

 ただし、快適にアース・ダイビングするためには1つだけ条件があります。それは、穴の内部を真空にしておくこと。そうじゃないと、最大で時速40,000㎞の風を受けて、無重力というより風に吹き飛ばされる体験をすることになります。
 それだけではありません。真空にしておかないと、他にも困ったことが起きます。空気抵抗によって減速すれば、地球の裏側に到着する前に速度がゼロになって、そこからトンネルの壁をよじ登らなければならないことになります。
 ところで、ボーっとしているとまた地球の中心に向かって引き戻されます。そのまんまずっといると、減衰振動を繰り返して、最後には地球の中心に取り残されます。そこにとどまる限りは無重力が続くのですが、地上に出るためには重力に逆らって6,400㎞のロック・クライミングをしなければならないことになります。
 だから、やっぱり穴の内部を真空にした方がよさそうですね。そういうわけで、快適なアース・ダイビングのためにはフタが2つ必需品です。フタの取っ手から手を離してスタートして、地球の裏側のフタの取っ手をつかんでゴール。もう一つ、38分間も息しないわけにいかないから、酸素ボンベ背負ってくださいね。
 そのうちきっと誰かやるでしょうね。やるなら早い者勝ちですよ。グッド・ラック!


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