(早大法学部2007年度入試「政治経済」より)
近年、四年制大学で、学生の就職活動の開始時期がどんどん早まってきている。かつては最終学年になってから就職活動をするのが普通だったが、昨今は3年生で就職活動を開始する学生が増えている。その結果、彼らが実質的に内定をもらう時期も以前よりずっと早くなっている。このような就職活動の早期傾向化(このような現象はしばしば「 A 」と呼ばれる)がなぜ生じるのかを、(1) ゲーム理論 の考え方を使って説明してみよう。
話を簡単にするため、甲社と乙社という2社が大学生の求人活動をしているものとしよう。つまり、この2つの会社がゲームの B である。それぞれの会社には、「早めに内定を出す」と「遅めに内定を出す」という2つの選択肢があるものとする。なお、このような B の選択肢のことを戦略と言う。
甲社と乙社が、選択の結果として得られる成果のレベルは (2) 得点で表される ものとしよう。各社が獲得できる得点は、自分が選んだ戦略だけでなく相手が選んだそれにも依存する。甲社について言えば、「早めに内定を出す」という戦略を選んだときに、乙社も「早めに内定を出す」を選んだなら、3点を獲得できるものとしよう。だが、この場合乙社が「遅めに内定を出す」を選んだなら、6点を獲得できる。一方、甲社が「遅めに内定を出す」という戦略を選んで、乙社が「早めに内定を出す」を選んだ場合、甲社は (3) 2点しか獲得できない 。逆にこの場合に乙社も「遅めに内定を出す」を選んだなら、両社ともじっくりとした選考ができるので、得点は4点になる。今述べたのは甲社の得点だが、乙社についても同様なことが成り立つものと想定しよう。
このような形で「新卒学生獲得競争」が繰り広げられた場合、両社がともに「早めに内定を出す」というのがこのゲームの (4) 均衡状態 になる。つまり、企業間での競争の結果、「就職内定の早期化」という結末が生じることになるが、この種の早期化は決して企業にとっても社会にとっても (5) 望ましいことではない だろう。このように考えると、競争は常に望ましい社会的帰結を生じさせるとは限らないのである。
(これ以降のリード文、ならびに 問7, 問8・・・略)
問1 空欄 A ~
問2 下線部 (1) について、ゲーム理論の誕生や発展に直接的な貢献のある2人の名前の番号を、
1.J.ナッシュ 2.J.M.ケインズ 3.D.リカード
4.J.フォン・ノイマン 5.M.フリードマン
問3 下線部 (2) について、
問4 下線部 (3) について、この場合に獲得できる得点が2点になってしまう理由を・・・40 字以内で記述せよ。
問5 下線部 (4) について、この均衡状態に関する記述として正しいものを1つ・・・選べ。
- 両社はいずれも、相手が早めに内定を出したときに限って早めに内定を出すので、相手の出方次第で均衡は「互いに早めに内定を出す」以外のものになることもあり得る。
- 両社はいずれも、相手がいかなる戦略を選ぶかにかかわりなく早めに内定を出すので、均衡では両社とも早めに内定を出すことになる。
- 両社がライバル関係にあって激しく競り合っているときには「互いに早めに内定を出す」が均衡になるが、そうでないときは「互いに遅めに内定を出す」ことが均衡になる。
- 両社の強さが拮抗しているときには、「互いに早めに内定を出す」が均衡になるが、両社の力関係次第でこれ以外の均衡が成り立つこともある。
問6 下線部 (5) について、現実社会において内定の早期化がもたらす弊害を1つとりあげ、・・・記述せよ。
大学生の「就職活動」をテーマにした問題で、大学生活に想いをはせるという意味でもよい問題だと思います。
《解答》
問1 A 青田買い B プレーヤー
問2 1 , 4 (← 政経の授業で聞いたことのない名前を選べば、正解!です)
問3
乙社の戦略 | |||
早めに内定を出す | 遅めに内定を出す | ||
甲社の選択 | 早めに内定を出す | ( 3 , 3 ) | ( 6 , 2 ) |
遅めに内定を出す | ( 2 , 6 ) | ( 4 , 4 ) |
※ 上表において(甲社の利得 , 乙社の利得)
問4 優秀な学生を先に乙社に採られてしまい、甲社は優秀な学生を採れなくなるから。(37 字)
問5 2
問6 ◇ 内定をもらった後、学生が勉強しなくなる。
◇ 企業側は、学業が進んでいない段階で学生を選考しなければならない。
◇ 就職活動の期間が長くなって、学生が学業に割ける時間が短くなる。
◇ 内定から就職までの間に経営環境が変わって内定取消が起きる可能性が高くなる。
◇ 〃 学生の志望 〃 就職辞退 〃 。
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