2019年3月21日木曜日

チェーン・ストア・パラドックス

(慶応大学商学部2009年度入試「論文テスト」を要約)

 大手チェーンストアがあちこちの町にすでに店を出しています。これに対抗して、同じ商品を扱う零細小売商が「参入する」か「参入しない」かを選びます。その際、大手チェーンストアが選ぶのは「協調する」か「攻撃する」です。
 零細小売店が参入しない場合の大手チェーンストアの利益を100とし、零細小売店の利益を0とします。零細小売店が参入して、大手チェーンストアが協調した場合は、零細小売店が利益25を奪い、大手チェーンストアが利益75を維持するものとします。零細小売店が参入して、大手チェーンストアが値下げ競争を仕掛けて零細小売店を攻撃すれば、競争が泥沼化して、両者とも利益が-25に落ちて、損してしまうものとします。以上のことを図にすると、右のようになります。
さて、このような仮定の下で、零細小売店はどう決断し、大手チェーンストアはどう反応するでしょうか。まず、零細小売店1店だけが参入して、大手チェーンストア1店だけが影響を受ける場合を考えます。この場合、大手チェーンストアは自分の利益を考えて( 7 )という戦略を選ぶでしょう。そしてその場合の零細小売店の利益と、零細小売店が参入しない場合の零細小売店の利益を見比べて、零細小売店は( 8 )という戦略を選ぶでしょう。
 ところが、これと同じ選択が多くの町で行われれば、大手チェーンストアは利益を大きく損なってしまいます。でも、こうやって大手が零細にやられるという結論は、なんだか現実に合いませんね。では、大手チェーンストアが、現実のとおり、零細小売店にやられない方法を考えてみましょう。
  • 零細小売店が「参入する」か「参入しない」かを選ぶ前に、「( ア )」 と宣言しておく。
このとき零細小売店は上図の選択肢のうち2つだけに絞って考えなければならなくなる。このとき零細小売店は( 9 )という戦略を選ぶので、大手チェーンストアは最良の結果を得ることができる。
  • 宣言を無視する零細小売店がいた場合は、一度( 10 )という戦略を選んで、行動で示す。大手チェーンストアが元の1ヶ所の店でコストを支払うものの、この行動は広く報じられ、その結果、他の町では全勝するでしょう。
  • 零細小売店が生き残るには、大手チェーンストアの近くに店を構えて、いわゆる「小判ザメ商法」を行う。ただし、その場合は 大手チェーンストアの取扱商品と重ならないように商品を変更しておく(イ)。大手チェーンストアの集客能力に「タダ乗り」して、零細小売店もかなりの利益を得ることができるだろう。
  • 大手チェーンストアが 自分の店の空きスペースを賃貸して、零細小売店に出店させる(ウ)。大手チェーンストアにとって小判ザメ商法をされるよりは有利である。このようにして、お互いにまずまず協調しつつ、両者が利益を得る仕組みが築かれる。

問1.表中の空欄(1)~(6)にあてはまる数を答えなさい。また、文中の空欄(7)~(10)に当てはまる語句を「参入する/参入しない/協調する/攻撃する」の中から選びなさい。

問2.空欄( ア )にあてはまる一文を 15 字以内で記しなさい。

問3.下線部(イ)の作戦を零細小売店がとらなかったら、大手チェーンストアは零細小売店の参入にどう反応し、零細小売店はどうなるか。40 字以内で記しなさい。

問4.下線部(ウ)の作戦を大手チェーンストアがとる目的は何か。40 字以内で記しなさい。



《答え》
問1.(1) 25   (2) 75   (3) −25   (4) −25   (5) 0   (6) 100   
   (7) 協調する   (8) 参入する   (9) 参入しない   (10) 攻撃する 

問2.零細が参入したら、大手は攻撃する。                (15字) 

問3.大手チェーンストアが値下げ競争を仕掛けて、 零細小売店は損失を被る。(33字) 

問4.大手が賃貸収入を得ると同時に、 店舗数・商品の種類を増やすことで集客力を高める。(39字)


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