2019年3月21日木曜日

ゲームを変える

 練習問題 No.2(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/no2.html )の《解説・解答》です。



まず、(1)の状況になる以前の話から。
 S社とT社はもともと対等な立場で次世代DVDの規格争いをしていた。そのときの利得表は<表1>である。このゲームでは、撤退するより競争を続けた方が両社の利得が大きい。だから、(S社,T社)=(競争,競争)がゲームの解になる。
 ところで、あるときS社は所有する半導体工場をT社に売却した。S社は半導体事業から撤退し、T社は半導体事業でより強くなった。そして、<表2>のようにゲームが変わったのである。
 このゲームでは、S社はT社の選択にかかわらず競争を選ぶ。そうなるとT社は撤退した方が利得が大きくなる。こうしてゲームの解が
(S社,T社)=(競争,撤退)へと変わる。これが(1)の答えである。
 半導体事業で優勢なT社が小さな利益に甘んじて、半導体事業を持たないS社が大儲けすることになった。S社の戦略は「背水の陣」と言えるのかもしれない。撤退という選択肢を自ら消して、競争に突き進むしかない状況に自らを追い込んだわけだ。あるいは、「T社に撤退という選択肢を与えた」とも言える。S社が「ウチは絶対に撤退しない」とT社に宣告したとも受け取れる。「T社はS社に一杯食わされた」ということなのかもしれない。

続いて、(2)の答えから。
◇法案が成立した場合、X氏は反対した野党に100億円寄付する。
◇野党Aと野党Bにとっては法案が成立しようとしまいとどうでもよい。
◇寄付金はほしい。寄付金を他の野党に持って行かれるのは困る。
これらの条件から、<表3>の利得表が得られる。
 野党Aの立場で考えると、野党Bの選択に関わらず「反対」した方が利得が大きいから、野党Aは反対する。野党Bも同様で、両党とも反対して法案は否決される。これがゲームの解である。ところで、このときX氏に寄付の義務は生じない。こうしてX氏の思うつぼの展開になる。
 ところで、両野党は悔しかったらゲームを変えればいいのだ。両野党が話し合って、「一方が賛成し、他方が反対して、100憶円を山分けする」ことにすればいい。そうすれば野党Aと野党Bの利得は<表4>のように変わり、(50,50)がゲームの解になる。両野党はウハウハ、X氏にとっては踏んだり蹴ったりの結果になる。



 「ゲームを変える」方法には、記事に書いたこと以外にもいろいろあるでしょう。このあと「同時ゲーム」を「時間差ゲーム」に変えることで「ゲームを変える」ことを扱います。


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