でも、我が身を振り返ってみると、入試で満点なんて取れるはずがありませんし、落ち着いて考えてみれば、満点を取る必要もないのです。合格ラインに達するのが目標なら、ざっくり言って70点くらい取れればいいはずです。逆に言うと、30点分は捨てていいのです。
時間も限られています。労力も限られています。時間と労力を無限にかけていいならあれもこれも全部やれるかもしれませんが、そうではないのですから、自ずからやれることとやれないことが出てきます。そうであれば、なるべく効果が上がるやり方でやりたいものです。逆に言えば、あるものは思い切ってばっさり切っていいのです。
さて、これから英語・数学・国語・理科・社会の順に、受験勉強する上で押さえなければならない最も大事なポイントを1つずつ挙げて、それを攻略する方法を具体的に示します。
小手先のテクニックではありません。肝心要の部分をなるべく短期間で効率よく習得するための方法論です。中には「身もふたもない」と感じるものもあるかもしれませんが、それもまた他の場面でも使えるノウハウになっているはずです。
そうは言っても、理解の仕方は人それぞれで、どこで引っかかって前に進めないのかも人によってまちまちです。ですから、個々の事情に合わせて適当にアレンジしていただいてもかまいません。
目安として言うと、3カ月の勉強で7割取る方法です。では、始めます。
◇ 国語力の多種多様
かつて「有名大学に入ってしまえば、ほとんど自動的に卒業できて、大手企業に就職して、定年まで安泰」という時代がありました。経済成長・受験競争・学歴社会・年功序列・終身雇用が当たり前だった時代です。そのころ大学はレジャーランドと呼ばれ、成績が低い生徒は落ちこぼれと呼ばれました。
けれどもその姿は大きく変わりました。まず変わったのは企業です。作ればどんどん売れた時代は終わって、企業の拡大も止まり、それまでの雇用慣行を維持できなくなりました。派遣社員など非正規雇用が増え、フリーター・ニートと呼ばれる人たちも増えました。
それに連動して次に変わったのは、大学生の就職活動と大学の授業です。有名大学を出ても内定をもらえない学生が多く出るようになって、大学では社会で通用する人材を育てるために大学でしっかり教育するようになりました。かつての大学生のように遊んでばかりいては卒業も就職もできないように変わったのです。
いま現在、およそこの段階にあると言えるでしょう。企業が変わって、就活が変わって、大学が変わって、ちょうどこの辺りまで進んできたようです。
さて、次に変わるのは何でしょうか。私は、そろそろ大学受験と高校の授業が変わる番だろうと思うのです。上から下に向かって、じわりじわりと変化が伝わってきていると思うのです。
私がここに書いた受験勉強法は、いま現在の、すなわち変わる前の大学入試問題への対処法です。間もなく時代遅れになるだろうと、私は実はそう思っています。受験競争・学歴社会時代の末期に咲いたあだ花と言っていただいてもけっこうです。
これまで企業で求めていたのは、与えられた仕事をテキパキこなせる人でした。現行の大学入試に受かる人は、与えられた教材を手際よくマスターする人です。どちらも情報処理力が高い人です。だから、これまでは有名大学の学生がそのまま企業の戦力になったのです。
けれども、今では与えられた仕事をこなすのは、コンピュータかアルバイトか派遣社員の仕事になりました。そして企業が欲しがる人材も変わりました。今の企業が欲しがるのは、新しいものを作れる人です。たとえば、企画して段取りして予測して新規プロジェクトを立ち上げられる人、問題点を探り出して改善策を提案してその結果を評価できる人、既存のものを組み合わせて同時に足りないものを補って商品やシステムや需要そのものを作れる人、そういう人です。そのために必要なのは、情報編集力です。その場面では、情報処理力はあまり役に立ちません。
かつては社会が求める人材と大学受験のスタイルがきちんとリンクしていたのです。良くも悪くも、そうだったと言えるでしょう。けれども、今ではミスマッチが起きています。このミスマッチが解消される方向に動くのだろうと私は思っているわけです。
参考までに付け加えると、大学に入るために一斉テストがあって、その点数で上から順に入学させるというスタイルは、東アジアに特徴的なことであって、世界的にみると少数派です。そういう受験スタイルをとっている国は、ざっくり言えば、日本と韓国と中国くらいです。欧米はもちろん東南アジアの国々でも受験スタイルはそれとは大きく異なります。
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