2019年4月13日土曜日

☆ いかにして数学の入試問題を解くか?

 最初に確認しておきたいことがあります。それは、「問題が解けない」ことは、数学の受験勉強をする上での「前提」だということです。なぜなら、解けない問題を解けるようにするのが、数学の受験勉強なのですから。いまそれがスラスラ解けるなら、受験勉強する必要などないわけです。そんな人は、明日受ければいいのです。
 ところで、なぜ数学の先生は問題を解けるのでしょうか?
○ 頭がいいから?    → ブーッ、はずれです。
○ ひらめきがあるから? → ブーッ、はずれです。
○ 計算力?       → ブーッ、はずれです。
正解は「解き方を知っているから」です。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、これが「問題を解ける」ことの正体です。数学の入試問題は、解法パターンの組み合わせで解くものです。数学の先生の頭の中には、数学の解法パターンが詰まっています。だから解けるのです。それだけといえば、それだけです。決して頭がいいからでも、ひらめきがあるからでもありません。
 あるいは、数学の授業で先生が毎日なにをやっているか、見てごらんなさい。「この問題は、このパターンで解きましょう」と、授業の大半を解法パターンを紹介することに充てていますね。
 なぜ自分が問題を解けないかというと、解法パターンを知らないから(最初に書いたように、これは「前提」ですから、ちっとも悲観することじゃありません)。なぜ数学の先生が問題を解けるかというと、解法パターンを知っているから。そういうことです。英単語を知らなければ英文を読めません。英単語を知っていれば英文が読めます。それと同じです。
 ところで、解法パターンとは「公式」のことではありません。ここでいう解法パターンとは、問題を解くときの一連の流れのことです。公式のように数行で表現できるものではなくて、問題のパターンと解き方のパターンがセットになったものです。受験数学の問題を解くためには、それを身につけることが必要十分条件なのです。
 「ひらめき」なんて迷信です。受験数学の世界の問題は、過去何十年の間に大勢でやりつくしています。それはすでにパターン化されていて、出題者はその中から選んで、または組み合わせて問題を作っています。一高校生が「誰も考えたことのないやり方で解く」ということは、この世界ではまずありえない話です。
 「計算力」も迷信です。夜の山道を歩くとき、真っ暗闇の中をただガツガツと動き回るだけでは、目的地にたどり着けないでしょう。でも道筋が見えていれば、あるいは目的地の明かりが見えれば自信を持って歩けます。それと同じです。「この計算をやれば解ける」ことがわかっていて計算すれば、そうそうミスるものではありません。道筋が見えないままにとりあえず計算を進めてみたところで、問題を解けるはずがありません。ゴールにたどり着くためには「体力=計算力」より「明かり=解法パターン」の方がずっと大事です。

 さて、次に考えるべきことは「どうやって、解法パターンを身につけるか」です。それはすなわち「解けないものを、どうやって解けるようにするか」ということであり、その方法こそが「受験数学を攻略する方法」に他なりません。
 ここで、こんなケースを想定してみましょう。実は普通の光景なんですが。
○ 解こうとする → 解けない → でも頑張る → やっぱり解けない →
  → 自信をなくす → 疲れる → 答えを見る
さて、この流れの中で意味があるのはどれでしょう?
 最後の「答えを見る」部分だけですね。他は「解法パターンを身につける」ことにほとんどつながりません。しかも困ったことに、疲れ果てて、自信をなくしたころに、ほんのちょっとだけ意味のあることをしています。だったら、最後の段階だけに専念するべきです。貴重なパワーと時間を余計なことに費やすのはやめましょう。そうです、いきなり答えを見ればいいのです。
 受験数学の必勝法は、端的に言えば「解くな、読め」です。問題を読んだら、すぐに答えを読みましょう。
 でも、解答が別冊になっているもの・本の巻末に解答が載っているものは避けた方が賢明です。なぜなら、まず答えの場所を探すのに手間がかかります。しかも、あっちを見たりこっちを見たりしますから、首と目が痛くなります。
 「それくらい、いいじゃないか」と考えてはいけません。ページをめくりながら探す手間と時間、目の焦点を合わせるための集中力はバカになりません。そんなものに注ぐパワーを、答えを読みながら理解することに振り向けるべきです。
 では、どういうものがいいかというと、問題と解説と解答が同じページに載っているものを選びましょう。1ページの上部に「問題」、中ほどに「解説」、その下に「解答」が載っているもの、そのような構成の参考書は本屋に行けばたくさん置いてあります。それが、受験参考書の主流です。それを上から下に向かって真っ直ぐに読めばいいのです。
 念のため繰り返しますが、目的は「解法パターンを身につける」ことです。そのために、参考書を「読む」のです。くれぐれも解いてはいけません。
 高校数学の全範囲(文系なら数学Ⅰ・Ⅱ・A・B、理系ならそれに加えて数学Ⅲ)の問題を一通り解こうとすると、たっぷり1年はかかるでしょう。そしてまた、一通りやったからといって、それで解けるようになるわけではありません。
 前に書いたように、解けないから受験勉強するのです。解けないものを解こうとしても無理です。そこに費やす時間と精神力がもったいない。読んで理解するだけでも、けっこう大変です。それを元気なうちに、たっぷり時間をかけてやりましょう。限られた時間と集中力を、もっぱら答えを読むことに注ぎましょう。
 解いてしまったら、やみくもに時間がかかります。でも読むだけなら、1ヶ月で一通り読めます。
 ここで比較してみましょう。いきなり解き始めるのと、1回読んでそれから解き始めるのとでは、どちらが早いか?
 結局、後者の方が早いんですね。解き始めるのが1ヶ月出遅れても、解法パターンをある程度見につけていれば、ばん回できます。
 でも、もっといい方法があります。2回読むんです。そうすると解き始めるのが2ヶ月遅れますが、すぐに逆転します。
 でも、さらにいい方法があります。3回読むんです。読むのに3ヶ月かかりますが、その後スラスラ解けます。いや、もうほとんど解く必要がないくらいです。
 中には読んでもなかなか理解しにくいものもあるでしょう。そういうものは、1回目は流して読んでも構いません。それが大事なものなら、一通り読む間に似たようなパターンが何回か出てくるはずです。それに3回読むのですから、2回目には理解が深まるでしょうし、3回目にはきっと身につきます。

 余談ですが、「司法試験の勉強法と受験数学の勉強法は同じだ」という話を聞いたことがあります。何が同じかと言うと、「解法パターンをあてはめて、解く」という点です。
 法律の考え方・解釈や判例などが、司法試験での解法パターンにあたります。もちろん、司法試験の問題で解法パターンとまったく同じものが出るわけではありません。また、現実の裁判で扱う事例はすべて異なるでしょう。でもどちらの場合も、過去の判例や法律の解釈をあてはめて、解決を試みる。ひとつの解法パターンで解決しないなら、別の解法パターンをあてはめてみる。それでもダメなら、2つ・3つの解法パターンを同時にあてはめてみる。その手順が、受験数学とそっくりだというわけです。
 ですから司法試験にせよ受験数学にせよ、まずはそれを身につけなければなりません。要は、まずはしっかり理解して、それをがっちり憶えるということです。解法パターンをたくさん身につけて、それを武器にして解くのです。

 では、まとめましょう。
○ 問題と答えが同じページに書いてあるものを用意して、
○ 1ヶ月で一通り読む。
○ これを3回繰り返す。
○ その間、問題は解かない。
これが受験数学の攻略法です。
 解くのはそれからで十分です。要は「解法パターンを当てはめて試行錯誤する」わけですが、何度も繰り返して練習する必要はありません。くれぐれも早く解き始めたら、損します。


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