慶応大学総合政策学部2018「小論文」より
《資料2》アメリカには共和党と民主党の二大政党があり、大統領選挙では毎回、両党が接戦を繰り広げる。なかでも2000年の戦いは熾烈なものだった共和党のジョージ・W・ブッシュ、父親も大統領を務めた二世政治家のテキサス州知事だ。対する民主党のアル・ゴア、環境保護と情報通信政策に通じた当時の副大統領である。
事前の世論調査ではゴアが有利、そのまま行けばおそらくゴアが勝ったはずだ。ところが結果はそうはならず、最終的にブッシュが勝った。この選挙は、票の数えミスや不正カウント疑惑など、それだけでも本が1冊書けるほど問題含みのものだったが、ここでは次の点だけに注目しよう。
途中でラルフ・ネーダーが「第3の候補」として立候補したのだ。彼は、大企業や圧力団体などの特定勢力が献金やロビー活動で政治に強い影響力を持つことに対して、反対活動を長く行ってきた弁護士の社会活動家だ。政治的平等を重視する民主主義の実践家だといってもよい。1960年代には自動車の安全性をめぐって巨大企業ゼネラル・モーターズに戦いを挑み、勝利を収めたこともある。
ネーダーの立候補には、二大政党制に異議申し立てをする、有権者に新たな選択肢を提供するという意義があった。とはいえ二大政党に抗して彼が取れる票はたかが知れている。話題にはなっても当選の見込みはない。
ネーダーの政策はブッシュよりもゴアに近く、選挙でゴアの支持層を一部奪うことになる。ゴア陣営は「ネーダーに票を入れるのは、ブッシュに票を入れるようなものだ」とキャンペーンを張るが、十分な効果は上げられない。ゴアがリードしていたとはいえ激戦の大統領選挙である。この痛手でゴアは負け、ブッシュが勝つことになった。
特に難しい話をしているわけではない。要するに票が割れてブッシュが漁夫の利を得たわけだ。ゴアにしてみれば、ネーダーは随分と余計なことをしてくれたことになる。そもそもネーダーだって一有権者としては、ブッシュとゴアなら、ゴアの方が相対的にはマシだと思っていたのではないか。
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