慶應義塾大学総合政策学部で研究されている様々な問題は、多くの場合、「選択」に関わっています。選択と言っても、個人の選択ばかりでなく、集団、組織、地域社会、国家、国際社会の選択も射程に含まれます。以下の問題では、ある国政政党の党首の選択の例が挙げられています。どのような選択がなされ、その結果はどう評価されるべきなのか、各資料を読んだ上で、じっくりと考えてみて下さい。
【問題】
ある政党に所属する国会議員は51名おり、彼(彼女)らの中から党首を選ぼうとしている。今、A 氏、B 氏、C 氏、D 氏、E 氏の5人が立候補したとする。ここで、51名の議員(立候補者自身を含む)は各候補者に対して、下記の表にあるような党首としての望ましさの順位を付けているものとする。
例えば、1番左の「2人」と書いてある列には、上から順番に1位 A、2位 C、3位 B、4位 D、5位 E と書いてある。これは2人の国会議員が、各候補者に対してこの順番で党首としての望ましさの順位を付けていることを意味する。また、右隣の「4人」と書いてある列には、上から順番に1位 A、2位 D、3位 B、4位 C、5位 E と書いてある。これは4人の国会議員が、各候補者に対してこの順番で党首としての望ましさの順位を付けていることを意味する。他の列についても同様である。
表1:
2人 | 4人 | 8人 | 9人 | 11人 | 17人 | |
1位 | A | A | B | C | D | E |
2位 | C | D | C | D | A | B |
3位 | B | B | A | A | B | A |
4位 | D | C | D | B | C | C |
5位 | E | E | E | E | E | D |
次に、党首選のルールについて考える。ただし、以下では取りあえず、与えられたルールの下で、各議員は前ページの表に従って正直に行動するものとする。
(1) 単純多数決
全員が1位の候補者に投票し、得られた票数が1番多い候補者が選ばれるルールを単純多数決と呼ぶ。単純多数決の下では 17 票を獲得した E が選ばれる。
(2) 決選投票付き多数決
上記の単純多数決で選ばれる E の得票数は 17 票だが、議員は 51 名いるので 26 票以上で過半数であることから、E の票数は過半数に満たない。この時、票数の1位と2位で決選投票を行い、票数の多かった(過半数を得た)方の候補者が選ばれるルールを決選投票付き多数決と呼ぶ。この場合、E と D の決選投票となり、34 票獲得する D が選ばれる。
(3) 逐次消去法
全員が1位の候補者に投票し、得られた票数の1番少ない候補者を除いた上で、再度全員が投票を行う。但しこの時、投票した候補者が除かれた議員は、除かれていない者の中で最上位の候補者に投票することになる。こうして最低得票数の候補者を1人ずつ除きながら投票を繰り返していき、最後に残った候補者が選ばれるルールを、逐次消去法と呼ぶ。
(4) ペアごとの多数決
候補者のペア(全部で10通り)ごとに投票を行い、いかなる相手に対しても票数で上回る候補者(ペア全勝者と呼ばれる)が選ばれるルールを、ペアごとの多数決と呼ぶ。例えば、A と B のペアに対する投票の場合は、A が 26 票、B が 25 票となるので、A が B に票数で上回る(A が B に勝利する)ことになる。
(5) 順位評点法
議員ごとに1位の候補者に4点、2位の候補者に3点、3位の候補者に2点、4位の候補者に1点、5位の候補者に0点を付けて、候補者ごとに点数を合計し、最多得点を獲得した候補者が選ばれるルールを、順位評点法と呼ぶ。
問1
上記の説明の通り、単純多数決では E が、また決選投票付き多数決では D が党首として選ばれるが、それら以外の逐次消去法、ペアごとの多数決、順位評点法では、どの候補者が選ばれるだろうか。
さらに、5つのルールでは、1位の候補者が党首として選ばれるだけではなく、ごく自然に5人の候補者の1位から5位までの順位を決まることができる。ルールごとの5人の候補者の順位を答えよ。
例えば、単純多数決では、1位が E、2位が D、3位が C、4位が B、5位が A となる。
決選投票付き多数決では、2位以下の順位の決め方に多少の議論の余地が残るが、ここでは資料1の冒頭に書かれているやり方で2位以下の順位を決めるものとする。
逐次消去法では、最初に除かれた候補者が5位、次に除かれた候補者が4位、3番目に除かれた候補者が3位、4番目に除かれた候補者が2位、最後に除かれた候補者が1位となる。
ペアごとの多数決では、候補者のペアごとのすべての対戦結果(どちらが勝ったか)を見て、強い順番に候補者を並べれば良い。
最後に、順位評点法では、合計された点数の高い順に候補者を並べれば良い。
問2
問1で得られた結果を基にすると、5つのルールをどのようにグループ化できるか、必要に応じて補足説明を加えて、簡潔に図示せよ。
問3
問1、問2の解答を踏まえ、さらに資料1〜6も参考にしつつ、上記の5つのルールに対して、党首選のルールとしての望ましさの観点から相対的に順位を付けてみよ(但し、同順位のものが複数あっても構わない)。その様に考えた根拠と共に、600字以内で答えよ。
問4
社会的選択の分析枠組みに基づいた分析が可能な現実の事例の中で、あなたが興味深いと思うものを、簡単な説明と共に300字以内で紹介せよ。
※ 《答え》というより《答えるための考え方》は こちら をどうぞ。
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