コインを1回投げて、表が出たらあなたに2円あげよう。2回連続して表が出たら、4円あげよう。3回連続して表が出たら8円、4回連続して表が出たら16円あげる。では、期待値を計算してみよう。
つまり、裏が出るまでコインを投げ続けて、それまでに表が n 回出れば 2n 円をあなたにあげるというわけさ。どうだい、悪い話じゃないだろう?
2 円もらえるのは「表裏」と出る場合で、その確率は 1/4 → 掛け算すると 1/2 円。
4 円もらえるのは「表表裏」と出る場合で、その確率は 1/8 → 掛け算すると 1/2 円。
8 円もらえるのは「表表表裏」と出る場合で、その確率は 1/16 → 掛け算すると 1/2 円。
・・・
2n 円もらえるのは「表…表裏」と出る場合で、確率は (1/2)n+1 → 掛け算すると 1/2 円。
・・・
よって、もらえる金額の期待値は 1/2+1/2+1/2+ … = 無限大!
となる。これはお得なゲームだ。
でもね、このゲームにただで参加させるわけにはいかない。それじゃ私が損するばかりだからね。だから、いくばくかの掛け金を徴収したいのさ。掛け金は100万円でどうだろう?「なぁんだ、掛け金が要るんだったら、やーめた」というのはまだ早い。もう一度、期待値計算してみよう。掛け金100万円を支払う場合に参加者がもらえる金額の期待値は、
さぁ、損得よーく考えて、このゲームに挑戦するかしないか、決めてちょうだい。
◇ 無限大 - 100万円 = 無限大!である。無限大の利得に比べれば、100万円の損失なんて無いに等しい。
さて、あなたはこのゲームに参加しますか?
計算は間違っていないのです。掛け金 100 万円どころか、掛け金 1 億円でも 1 兆円でも、参加者の期待値はやっぱり無限大になります。その意味では「掛け金がどんなに高くても、このゲームをやるべきだ」ということになります。計算上はそういうことです。
でも、現実にはどうでしょうか。掛け金 100 万円の場合、220 ≒100万 です(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/2.html )から、表が連続して 20 回出れば元が取れます。でも表が 20 回連続して出る確率は 1/220≒1/100万 ですから、まず間違いなく損するでしょう。
さて、この辺のことをどのように考えればいいのでしょうか? なぜこんな変なことが起きるのでしょうか? 実際のところ妥当な掛け金はいくらくらいなのでしょうか?
私は、それは「無限」のとらえ方によるのだと思うのです。無限というものが現実にあるのか、それとも無限とは概念上のもので実際は無いものなのか、そのとらえ方の違いなのではないでしょうか。
先ほどのゲームで、無限大の金額の賞金というのは現実的ではありませんよね。そこで、上限を設けてみましょう。現実にある宝くじの賞金の最高額に近い金額、また計算しやすくするために、仮に上限を「10億円」として期待値を計算してみましょう。そうすると、
2 円もらえるのは「表裏」と出る場合で、その確率は 1/4 → 掛け算すると 1/2 円。
4 円もらえるのは「表表裏」と出る場合で、その確率は 1/8 → 掛け算すると 1/2 円。
・・・
230≒10億円もらえるのは「表が連続して30回」出る場合で、その確率は 1/230 → 掛け算すると 1円。
よって、もらえる金額の期待値は、 1/2+…+1/2+1 = 15.5 円
└ 29個 ┘
となります。ということは、掛け金 16 円くらいで期待値トントンということになって、表が連続して 4 回出れば元が取れることになります。
なんだか急に現実的な数字になったように思いませんか。ちなみに、賞金の上限を 1 兆円とすると賞金の期待値は 20.5 円となり、賞金の上限を 1000 兆円とすると賞金の期待値は 25.5 円となります。
実際に「無限がある」と考えると「掛け金がどんなに高くても、このゲームに参加するべきだ」ということになり、「無限は無い」と考えて有限な値を想定すると途端に「掛け金は数十円程度が妥当」となるわけです。
さて、無限というものが現実にあるのか、それとも無限とは概念上のもので実際は無いものなのか、あなたはどう考えますか?
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