「損か得か」、「有利か不利か」を判断する数値が期待値です。だから、期待値こそが確率の肝なのです。
◇ グー・パーじゃんけんで勝負する
◇ サイコロ・ゲーム(京大の入試問題より)
◇ 倍々ゲームの期待値
◇ パスカルの賭け
◇ 原発誘致という逆保険の論理
ところで、今の大学入試では期待値が出題されない。2014年度入試までは当たり前に出ていたが、2015年度入試から出なくなった。つまりここ2年は出ていなくて、文科省の学習指導要領が改定されるまでは基本的に出題されない。
まず、その事情から説明しよう。高校数学の教科書に入ってはいる。けれども選択項目になったのである。2年前以前は期待値が「数学Ⅰ」の「確率」の章に入っていたが、2年前から期待値が「数学B」の「確率分布」に移った、その影響である。
数学Bには「数列、ベクトル、確率分布」の3つが入っていて、文科省の学習指導要領によれば「その中から2つを選んで履修する」ことになっている。選択制そのものが悪いとは思わないが、大学入試問題を作る立場に立てば、受験生によって学んだ分野が違うのでは現実的に問題を作れない。そこでほとんどの大学が「数学Bからは数列、ベクトルから出題する」と言うのである。元はと言えば東大がそう言ったのを他の大学が後追いしているということなんだろうけれど、結果としてほとんどの大学が数学Bの「確率分布」から出題しないことになる。そしてそうなると、ほとんどすべての高校で数学Bの数列とベクトルを選択することになり、確率分布をやらなくなる。その構造は期待値が確率分布に入ってからも変わらない。こうして高校では期待値を教えず、大学入試でも期待値を出さないようになったのである。
例外はある。慶応大学だ。慶応大学だけは「数学Bの数列、ベクトル、確率分布のすべての範囲から出題する」とい言っている。慶応大学の言わんとしているのは「確率分布全体から出すつもりは無いが、期待値だけは出すよ」ということなんだろうけれど、そう言うわけにもいかないようで、形の上では上記のように言っているわけだ。
そして、その点が今の高校数学の欠陥だと私は思っているが、次のカリキュラム改定を待つまでもなく、ちょうどこれから大学入試制度そのものが変わろうとしているので、数年後には期待値は復活するだろう。
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