【定理1】
a2+b2=c2 を満たす自然数 a , b , c のうち、どれかは3の倍数であり、どれかは4の倍数であり、どれかは5の倍数である。
【例】
・
32+
42=
52 では、
3 が 3 の倍数で、
4 が 4 の倍数で、
5 が 5 の倍数である。
・
52+
122=
132 では、
12 が 3 の倍数であり 4 の倍数でもある。また、
5 が 5 の倍数である。
・
82+
152=
172 では、
15 が 3 の倍数であり 5 の倍数でもある。また、
8 が 4 の倍数である。
:
【証明1】
(A) a , b , c がいずれも3の倍数でないと仮定すると、
a ≡ ±1 , b ≡ ±1 , c ≡ ±1(mod 3)より a
2 ≡ 1 , b
2 ≡ 1 , c
2 ≡ 1
このとき a
2+b
2 ≡ 2 となり、これは a
2+b
2 ≡ c
2 に矛盾する。
よって、a , b , c のいずれかは3の倍数である。
(B) a , b , c がいずれも5の倍数でないと仮定すると、
a ≡ ±1 , ±2(mod 5)より a
2 ≡ 1 , 4 ≡ ±1 同様に b
2 ≡ ±1 , c
2 ≡ ±1
このとき a
2+b
2 ≡ ±2 , 0 となり、これは a
2+b
2 ≡ c
2 に矛盾する。
よって、a , b , c のいずれかは5の倍数である。
(C) a , b , c がいずれも4の倍数でないと仮定すると、
(4n±1)
2 = 16n
2±8n+1 ≡ 1(mod 8)
(4n+2)
2 = 16n
2+16n+4 ≡ 4(mod 8)より
a
2+b
2 ≡ 2 , 5 , 0 であり、c
2 ≡ 1 , 4 であるが、これは a
2+b
2 ≡ c
2 に矛盾する。
よって、a , b , c のいずれかは4の倍数である。
※ 高校数学Aの合同式を使った。
(C) では「mod 4」ではなく「mod 8」でやるのがミソ。
【定理2】
自然数 a , b , c が互いに素であり、かつ a2+b2=c2 を満たすとき、a , b , c の中に3の倍数・4の倍数・5の倍数がちょうど1つずつある。
また、このうち3の倍数は a , b のどちらかで、4の倍数は a , b のどちらかである。5の倍数は a , b に限らず、c の可能性もある。
【証明2】
(A') ┌ n ≡ 0(mod 3)のとき n
2 ≡ 0 (← 3 で割り切れる数)
└ n ≡ ±1( 〃 )のとき n
2 ≡ 1 (← 3 で割って 1 または 2 余る数)
a
2+b
2 ≡ c
2(mod 3)を満たすのは、(a , b , c) ≡ (0 , 0 , 0) を除いて、
(a , b , c) ≡ (0 , ±1 , ±1) , (±1 , 0 , ±1) の場合で、このとき a
2+b
2 ≡ c
2 ≡ 1 となる。
よって、a , b のどちらか一方だけが3の倍数で、他2つは3の倍数でない。
(B') ┌ n ≡ 0(mod 5)のとき n
2 ≡ 0 (← 5 で割り切れる数)
├ n ≡ ±1( 〃 )のとき n
2 ≡ +1 (← 5 で割って 1 または 4 余る数)
└ n ≡ ±2( 〃 )のとき n
2 ≡ 4 ≡ −1 (← 5 で割って 2 または 3 余る数)
a
2+b
2 ≡ c
2(mod 5)を満たすのは、(a , b , c) ≡ (0 , 0 , 0) を除いて、
(a
2 , b
2 , c
2) ≡ (0 , ±1 , ±1) , (±1 , 0 , ±1) , (±1 , ∓1 , 0) のとき。(複号同順)
よって、a , b , c のうち1つだけが5の倍数で、他2つは5の倍数でない。
(C') ┌ (2n)
2 = 4n
2 (← 偶数
2 は4の倍数)
└ (2n+1)
2 = 4n
2+4n+1 (← 奇数
2 を4で割ると 1 余る)
a
2+b
2 = c
2 を満たすのは「a , b , c がすべて偶数」の場合を除いて、
(a , b , c) = (偶 , 奇 , 奇) , (奇 , 偶 , 奇) の場合。
すなわち、a , b のどちらか一方だけが偶数が、他2つは奇数である。
上記【証明1】の (C) と合わせて、
「a , b のどちらか一方だけが4の倍数で、他2つは4の倍数でない」ことがいえる。
※ (C') では、偶数と奇数に分けて考えた。つまり「mod 4」の問題を「mod 2」でやった。
その中で (C) を使ったが、(C) では「mod 4」の問題を「mod 8」でやった。
3 と 5 は素数だから良かったが、4 は合成数なので何かと工夫が要る。