2019年5月26日日曜日

★ アニメと神話と童話にみる、日本人の心

☆ アンパンマン・ワールドは八百万の神の国
(→ https://omori555.blogspot.com/2019/04/blog-post_33.html )

  ◇ アンパンマンの不思議を神話で読み解く 
  ◇ バイキン城はどこにある? 
  ◇ アンパンマン・ワールドの経済学                など


☆ 古事記の成り立ち
(→ https://omori555.blogspot.com/2019/04/blog-post_19.html )

  ◇ 古事記の成り立ち 
  ◇ 海水で身を清めるバカ               因幡のしろうさぎ
  ◇ 海の政権をやっつけた話               海幸彦・山幸彦
                                   など

☆ 宮沢賢治の童話
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/04/blog-post_37.html )

  ◇ 宮沢賢治の童話にみる、動物と人との関係        氷河鼠の毛皮
  ◇ 宮沢賢治も知っていた、二酸化炭素の温室効果  グスコーブドリの伝記
  ◇ 「雨にも負けず」のアンバランス                など


☆ 昔話にみる日本人の心
(→ https://omori555.blogspot.com/2019/03/blog-post_49.html )

  ◇ 浦島太郎の不倫騒動
   かちかち山の報復合戦
   こぶとり爺さんの不条理

★ 使える確率の学び方

☆ 条件付き確率からベイズ推定へ
(→ https://omori55.blogspot.com/2021/01/blog-post_20.html )

  ◇ 
  ◇ 
  ◇ 


☆ 期待値から機械学習へ
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/04/blog-post_96.html

  ◇ グー・パーじゃんけんで勝負する
  ◇ サイコロ・ゲーム(京大の入試問題より)
  ◇ 倍々ゲームの期待値


☆ 確率名人への道
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/04/blog-post_265.html )

  ◇ 場合の数の数え方と確率の数え方の違い
  ◇ だまされやすい確率
  ◇ 気づきにくいダブりとモレ     など

2019年5月25日土曜日

★ 大学受験必勝法

 授業中に先生が黒板に書く答案はいつも満点答案です。大学入試の過去問を集めた問題集を開いてみても、そこに載っている解答はどれもこれも満点です。そういうものをいつも見ていると、入試では満点を目指さなければならないような印象を持ってしまいそうです。
 でも、我が身を振り返ってみると、入試で満点なんて取れるはずがありませんし、落ち着いて考えてみれば、満点を取る必要もないのです。合格ラインに達するのが目標なら、ざっくり言って70点くらい取れればいいはずです。逆に言うと、30点分は捨てていいのです。
 時間も限られています。労力も限られています。時間と労力を無限にかけていいならあれもこれも全部やれるかもしれませんが、そうではないのですから、自ずからやれることとやれないことが出てきます。そうであれば、なるべく効果が上がるやり方でやりたいものです。逆に言えば、あるものは思い切ってばっさり切っていいのです。
 さて、これから英語・数学・国語・理科・社会の順に、受験勉強する上で押さえなければならない最も大事なポイントを1つずつ挙げて、それを攻略する方法を具体的に示します。
 小手先のテクニックではありません。肝心要の部分をなるべく短期間で効率よく習得するための方法論です。中には「身もふたもない」と感じるものもあるかもしれませんが、それもまた他の場面でも使えるノウハウになっているはずです。
 そうは言っても、理解の仕方は人それぞれで、どこで引っかかって前に進めないのかも人によってまちまちです。ですから、個々の事情に合わせて適当にアレンジしていただいてもかまいません。
 目安として言うと、3カ月の勉強で7割取る方法です。では、始めます。

  ◇ 国語力の多種多様 

 かつて「有名大学に入ってしまえば、ほとんど自動的に卒業できて、大手企業に就職して、定年まで安泰」という時代がありました。経済成長・受験競争・学歴社会・年功序列・終身雇用が当たり前だった時代です。そのころ大学はレジャーランドと呼ばれ、成績が低い生徒は落ちこぼれと呼ばれました。
 けれどもその姿は大きく変わりました。まず変わったのは企業です。作ればどんどん売れた時代は終わって、企業の拡大も止まり、それまでの雇用慣行を維持できなくなりました。派遣社員など非正規雇用が増え、フリーター・ニートと呼ばれる人たちも増えました。
 それに連動して次に変わったのは、大学生の就職活動と大学の授業です。有名大学を出ても内定をもらえない学生が多く出るようになって、大学では社会で通用する人材を育てるために大学でしっかり教育するようになりました。かつての大学生のように遊んでばかりいては卒業も就職もできないように変わったのです。
 いま現在、およそこの段階にあると言えるでしょう。企業が変わって、就活が変わって、大学が変わって、ちょうどこの辺りまで進んできたようです。
 さて、次に変わるのは何でしょうか。私は、そろそろ大学受験と高校の授業が変わる番だろうと思うのです。上から下に向かって、じわりじわりと変化が伝わってきていると思うのです。

 私がここに書いた受験勉強法は、いま現在の、すなわち変わる前の大学入試問題への対処法です。間もなく時代遅れになるだろうと、私は実はそう思っています。受験競争・学歴社会時代の末期に咲いたあだ花と言っていただいてもけっこうです。
 これまで企業で求めていたのは、与えられた仕事をテキパキこなせる人でした。現行の大学入試に受かる人は、与えられた教材を手際よくマスターする人です。どちらも情報処理力が高い人です。だから、これまでは有名大学の学生がそのまま企業の戦力になったのです。
 けれども、今では与えられた仕事をこなすのは、コンピュータかアルバイトか派遣社員の仕事になりました。そして企業が欲しがる人材も変わりました。今の企業が欲しがるのは、新しいものを作れる人です。たとえば、企画して段取りして予測して新規プロジェクトを立ち上げられる人、問題点を探り出して改善策を提案してその結果を評価できる人、既存のものを組み合わせて同時に足りないものを補って商品やシステムや需要そのものを作れる人、そういう人です。そのために必要なのは、情報編集力です。その場面では、情報処理力はあまり役に立ちません。
 かつては社会が求める人材と大学受験のスタイルがきちんとリンクしていたのです。良くも悪くも、そうだったと言えるでしょう。けれども、今ではミスマッチが起きています。このミスマッチが解消される方向に動くのだろうと私は思っているわけです。
 参考までに付け加えると、大学に入るために一斉テストがあって、その点数で上から順に入学させるというスタイルは、東アジアに特徴的なことであって、世界的にみると少数派です。そういう受験スタイルをとっている国は、ざっくり言えば、日本と韓国と中国くらいです。欧米はもちろん東南アジアの国々でも受験スタイルはそれとは大きく異なります。
 大学受験が変わった暁には、ここに書いた話は笑い話になるでしょう。そうなるのは、きっともう間もなくです。すぐそこまで来ています。一足早くみなさんに笑って読んでいただけたなら、それはそれで嬉しいです。


大学受験必勝法 → 英語 ・ 数学 ・ 国語 ・ 社会 ・ 理科

2019年5月20日月曜日

☆ フィリピンで語学留学

 フィリピンは英語圏です。島国で統一言語がなかった頃にアメリカの植民地になって、英語が共通言語になりました。今ではテレビ番組はほとんどすべて英語放送ですから、子供も老人もみんな英語がわかります。
 英語留学というと、これまではアメリカ・イギリス・オーストラリアなどが主流でしたが、それらの国々はどこも遠い。それに比べてフィリピンは日本から近いから、早く安く行けます。
 しかもフィリピンは物価も人件費も安いですから、フィリピンの英語学校の多くはマン・ツー・マンで習えます。ここが米・英・豪と大きく異なる点で、米・英・豪では集団で勉強することになりますから、一部屋に日本人ばかり集められて、結局のところ日本で英語を勉強するのとあまり変わらないことになりがちです。それに比べて、マン・ツー・マンで習えば、学習効果はだいぶ違うでしょう。それでも安く上がるのは、人件費が安い故です。

  ◇ フィリピン語学学校、潜入取材計画 
  ◇ 娘をフィリピンにおいてくる案 
  ◇ 部屋に鍵をかけない生活 
  ◇ 自分のペースで学ぶ 

  ☆ 英単語を楽してたくさん覚える方法 

娘をフィリピンにおいてくる案

(2016年夏)

 前の記事「フィリピン英語学校、潜入取材計画」に書いたように、この夏休みに中学2年の娘と2人でフィリピンに英語留学に出かけます。
 さて、フィリピンに英語学校は星の数ほどあります。多いのは首都圏マニラとフィリピン第2の都市セブですが、私と娘が選んだのはマニラからバスで3~4時間ほど離れたところにある英語学校です。なぜそこを選んだのかを話しましょう。
 マニラなど都会の英語学校ではビルの一室をブースで区切ったような場所でレッスンする形が多いのですが、そんな場所で1人の先生とマンツーマンで1日6時間もいると息が詰まりそうです。それに比べて田舎の学校では木陰や庭のベンチや東屋のような屋外でレッスンできて、その方が開放的で楽しそうです。私たちが選んだ英語学校はマンゴー畑に囲まれているということです。その環境が良さそうに思ったわけです。
 そこを選んだのには、もう1つ理由があります。実はその学校は、幼稚園から大学まで抱える総合学校で、その一部として英語学校があるのです。
 以下、現在の私の推測で、実際のところは夏休みに現地に滞在してインタビューしてこようと思っているのですが、現在の私の考えを聞いてください。
 英語学校の学生は日本人が多いようですが、メインの幼稚園~大学に通っているのはほとんどがフィリピン人の上流階級の子供たちでしょう。フィリピンには貧しい家庭が多いのですが、そんな家庭の子たちは通えないはずです。そこの授業料などについても夏に行ったときに聞こうと思っていますが、恐らくはフィリピンの物価水準からすればずいぶん高額でしょう。でも、日本の物価水準からすれば、とても安い。だから狙い目だと思うのです。
 授業料だけではありません。恐らくその学校に通うフィリピン人の子たちは10年後、20年後のフィリピンのリーダー達なのではないだろうかと思うのです。企業のオーナーだったり、幹部だったり、そんな家系の子供たちばかりが通っているのではないかと私は想像するのです。
 フィリピンは発展途上国ですから平均的には日本よりずっと貧しいですが、貧富の差は日本よりずっと大きい。フィリピンのお金持ちは私よりよっぽどお金持ちで、そんな人たちがたくさんいるのです。しかもフィリピンは現在急成長中で、英語圏という点も有利に働いて、将来性は高いと思うのです。
 さらに言うと、フィリピンの人口はすでに一億人を超え、人口ピラミッドを見ると、まさにきれいなピラミッド型をしています。人口減少にある日本とはまるで違います。
 その学校に、もし娘が通うとしたならば、さてどうなるでしょうか。これまた私の想像なのですが、娘は英語を学び、英語で他の教科を学び、未来のフィリピンのリーダーたちと一緒に学び生活することになるわけです。そのネットワークは、娘が社会に出る際に大きなアドバンテージになるでしょう。もちろん娘は日本語は堪能です。家族や友人を通じて、日本ともつながりもあります。そう考えると、チャンスが広がるんじゃないかと、そんな気がするのです。
 こういう育ち方も良いんじゃないでしょうか。「留学するなら欧米の方が良い」と言う人もいるでしょう。けれども、私は必ずしもそうは思わないのです。実際問題、日本企業がどこの国々の企業と一緒に仕事をするかと言うと、中国や韓国や東南アジアの企業と仕事をする方が多いんですね。また、多くの学生が欧米を目指すなら、なおさら東南アジア方面は狙い目だと思うのです。

 そんなことを考えて、私は娘に言っています。「場合によっては、お前をフィリピンに置いてくるからね。父さん一人で帰っちゃうかもしれないよ」と。冗談9割、本気1割で、そう言っています。
 この夏にその決断をすることはないでしょうけれど、来年中学3年になってから、あるいは高校生になってからも何度かその英語学校に通うことになれば、そのうちにフィリピンの学校に正規入学することもあり得ない話ではないと私は思っています。可能性の1つと捉えています。日本の大学に進む場合も、その経歴はマイナスになるよりも、むしろプラスに働くかもしれませんし。

自分のペースで学ぶ

 フィリピンの英会話学校では、普段考えてもいないような質問をぶつけられて、考えながら何とか英語で喋ると、即座に先生に直された。時制が間違っている、sがついてない、こんな言い方もあるよ、などなど。マンツーマンならではだ。
 体験で1時間ほど学んだプログラミング・スクールでは、ネット上の教材を見ながら自分でプログラムを組んでみて、わからないことがあったら、いつでも何でも先生に聞いていい。自分で手と頭を動かす時間が確保されながら、無駄に滞ることがない。
 どちらもとても効率的で合理的なやり方だ。どちらにも大勢に一斉に説明するという場面がない。共通しているのは、
◯ 自分の体(頭・口・手)を使って
◯ 自分のペースで
◯ 先生の対応は即座に
という点。これ、大事なポイントだと思う。中学・高校でも見習わなきゃいけないな。

特技

 ウチの娘がテレビアニメを見ながらちょくちょく口にする言葉がある。
あっ、◯◯(見ているアニメの登場人物)の声、△△(他のアニメ番組)に出てくる◇◇(その番組の登場人物)の声と同じだ!
そしてネットで検索して確認する。そんなことをしているものだから、いつの間にか声優さんにも詳しくなった。
 今日も夕飯中に普段は見ないアニメ番組を見ながら、同じような発言を連発した。それに続く娘と僕の会話。
僕:それって、君の特技だよね。
娘:「特技は何ですか?」って聞かれたら「アニメ見ながら声優さんを当てることです」って答えればいいのかな?
僕:そうそう、それが良いよ。「特技はダンス(とかスポーツなど)です」なんて言うよりよっぽどインパクトあるよ。
娘:「ピカー」(ピカチュウの声)っていうのを聞いて「あっミツヒコ(名探偵コナンの登場人物)の声だ」と思ったときは自分でも感動したわ。
僕:それだけの耳があったら、英会話なんか楽勝でしょ。
娘:いやいや、そうでもない。。。
僕:普通の人はそんなこと気にもしないからね。声を聞いてわかるってものすごいけど、そんなことが気になってしまうというのがそもそもすごい。
娘:でもこんな特技、活かせる場面ってあまりないでしょ。
僕:いやいや、そういうつまらないことが活きるんだよ。だいたい誰にも真似できないからね。
娘:ふぅーん。
娘は僕がほめると普段は嫌がる(僕がすぐにほめるから信用できないらしい)のだが、このときばかりはうれしそうだった(ちなみに滅多にほめない妻にほめられると娘はいつも喜ぶ)。なにはともあれ、娘の特技に違いない。
人より優れていることが特技なんじゃない。誰にも真似できないものが特技なんだ。
それはそうと、特技なんてものは狙って作れるものでもない。邪魔せずに放っておくのが吉。

部屋に鍵をかけない生活

(2016年夏)

 フィリピンに2週間の語学留学にやってきた。娘と一緒だ。
 さて、この学校のすごいところは、部屋に鍵をかけずに財布を置きっぱなしにしてもお金が無くならないところ。入校した日に職員の人が言った。「4人部屋・2人部屋でも鍵が1つしかないから、誰も鍵をかけない。でも、お金が無くなったことは、これまで一度もない」と。
 これって、本当にすごいことだと思う。確かにこの学校の出入口にはガードマンがいるが、同じ敷地に地元の子供たちが通う学校もあるし、掃除をしに部屋に入る人もいる。ここで英語を学ぶ学生たちは初顔合わせがほとんどだ。それでも、無くならないのである。
 日本でもこんな場所はそうそう無い。みんなが顔見知りの田舎ならともかく、都会ではあり得ない。学校でもホテルでも鍵をかけるか、財布を持ち歩くかするのが常識だ。
 実際に僕はここにきて一度も部屋に鍵をかけたことがないが、もちろん物が無くなったりはしない。部屋に鍵をかけない生活は楽だ。だからだろう、自宅にいるような心地良さが、この学校にはある。ここはフィリピン。

 この学校の良いところはもう一つ、先生たちが楽しそうにしているところ。休み時間にバスケットボールをやったり、ステージに上がってバンド演奏をしたり、学生と一緒にポケモンを捕まえたり。また、仕事という面もあるのだろうけれど、先生たちがいろんなアクティビティーやイベントを催してくれる。
 だから学生たちの間からも、いろんな企画が自然と持ち上がる。大学で学んでいることを発表したり、自然とダンス教室が始まったり、何かしらミーティングを開いたり。もちろんそういう場面では、英語で話すのがお約束。こうして、授業以外の時間が充実しているのである。
 学校というところは、先生が楽しむことが一番大事なんだろうな。そうであれば、生徒たちは自然と学ぶ。その事情は国を問わず、年齢を問わず、同じなんだろうな、と思う。

2019年5月19日日曜日

理科目線が生きる場所

 高校の理科は「式で理解する」ものです。理科の原理や法則の多くは式で表されますし、理科の入試問題はそれらの式をもとに計算するものが大半ですから、式以外の方法で理解してもまるで得点できないでしょう。
 そのように言うと、理科は数学と同じだと思うかもしれませんが、実はだいぶ違います。3つ挙げましょう。

○ 理科は自然界の出来事を扱っている
○ 公式の数は数学に比べてずっと少ない
○ 公式の形も計算も数学に比べてずっと簡単

 抽象的でともすると現実離れしているような感さえ漂う数学と比べて、理科で扱う内容は現に身の回りで起きていることばかりです。力も運動も天体も、電気も光も熱も、地震も津波も原発も、現実世界である原理・法則にしたがって動いているものであり、その原理・法則を学ぶのが理科です。
 たったいま並べたものを見るとたくさんの原理・法則があるように思うかもしれませんが、それでも数学の解法パターンに比べればはるかに少ない数です。物理・化学・生物・地学に分けて、原理や法則を書き並べれば、それぞれ1枚の紙にほぼ収まってしまうくらいです。それら原理・法則から現れる現象は様々で、教科書や参考書は現象と説明を載せているから分厚いのであって、原理・法則そのものはとても少ないのです。
 しかも式そのものがとてもシンプルです。どれくらいシンプルかと言うと、たとえば、
○ F=ma  (F:力、m:質量、a:加速度)
○ v=at   (v:速さ、a:加速度、t:時間)
○ PV=nRT (P:圧力、V:体積、n:モル数、R:定数、T:温度)
これくらいシンプルです。いずれも比例・反比例の関係ですから、小学生でも処理できる程度のものです。(第1式において、質量一定のとき、力と加速度は比例します。また、力が一定のとき、質量と加速度は反比例します。)
 他に2乗に比例するもの(自由落下するとき、落下距離は時間の2乗に比例する)、2乗に反比例するもの(引力は物体間の距離の2乗に反比例する)もありますが、それとて中学生なら処理できる程度のもので、高校理科で出てくる式は、ほとんどこのレベルのものばかりです。
 以上をまとめると、理科とは「自然現象を数少ないシンプルな式で表したもの」と言うことができるでしょう。科学とはそういうものです。シンプルさが科学の命です。

 とはいうものの、理科の苦手な人が世の中には多いんですね。さて、理科はなぜ難しいのでしょう? あんなにシンプルな式なのに、なぜわかりにくいのでしょう? 数もあんなに少ないのに、なぜ使えないのでしょう?
 ここで理科の成り立ちを図で説明しましょう。
 理科では「リアルな自然」からエッセンスを抜き出して「式」で表します。それは一種の「モデル」であって、リアルな自然そのものではありません。いわば「バーチャルな自然」です。また式ができれば、逆に式で(バーチャルな)自然を「シミュレーション」することができるようになります。その過程が「理科の問題」になるわけです。
 「バーチャルな自然」と呼んだのにはもちろん訳があります。まず、いろんなものを無視するからです。空気抵抗や摩擦を無視したり、熱の出入りを無視したり、場合によっては大きさや重さまで無視したりもします。ですから理科の式と実際の現象との間に誤差があるのは当たり前で、その差は現実とは大きくかけ離れたものになることもしばしばです。
 誤差だけではありません。先ほど挙げた「PV=nRT」は「理想気体の状態方程式」と言われるものですが、そこで言う理想状態とは「原理的にありえない状態」です。さらに言うと、先ほど挙げた「自由落下するとき、落下距離は時間の2乗に比例する」という理論と「引力は物体間の距離の2乗に反比例する」という理論は、よくよく考えると矛盾します(興味のある方のために説明しますと、前者は「重力加速度は一定」という前提のもとで成り立つのですが、後者によれば「引力によって引き合えば、距離が変わって引力の強さも変わる」のですから、厳密にはその前提は成り立たないのです)。
 このように、理科の原理・法則すなわち公式は、ウソっぽいと言えば確かにウソっぽいものなのです。それは、いろんなことが複雑に入り乱れた「リアルな自然」を数少ないシンプルな式で表すためのカラクリでもあり代償でもあるのですが、おかげでツッコミどころ満載です。
 でも一方で、その式が真実だと言えば確かにその通りなのです。シンプルできれいな理論体系です。つまり理科はいわば「ウソっぽい真実」なのでありまして、だからこそ理科を「式で表したバーチャルな自然体系」だと捉えるのが合理的なのです。

 さて、結局のところどうすればいいのでしょう。ここでコツを一つ伝授しましょう。

○ 現実から式を見るな。式から現実を見よ。

 現実から式を見ようとすると「リアルな自然から式を見る」ことになります。そうなると、その式は誤差が大きくて、現実を映しているとはとても言えず、適用できる範囲が狭くて、中途半端で怪しい代物だということになります。
 反対に式から現実を見れば「式を通してバーチャルな自然を見る」ことになります。そうなると、その式は本質をうまくとらえていて、あらゆる場面に適用できて、自然現象をうまく説明できるし、計算によって結果を知ることもできる完全無欠なものであると、そういうことになります。
 実験する際にも「実験から式を見るよりも、式から実験を見る」ようにしましょう。式を先に見ると、実験することで「式が現実の自然と(おおよそ)整合性が取れている」ことが確認できます。
 反対に実験を先に見ると、何のための実験なのかさっぱりわからなかったり、実験結果の誤差ばかりが目について式のウソっぽさが際立ったり、実験のやり方そのものがウソっぽく感じられたりすることもあるでしょう。
 たとえば「塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜるとどうなるか?」という実験をする場合、「NaOH+HCl→NaCl+H2O」という式を先に見れば「ふむふむ」とうなづけるでしょうけれども、実験を先に見ると「それって本当に塩酸なの? どうしてそれが水酸化ナトリウムだってわかるの?」と実験そのものが疑わしく感じられるでしょう。
 「空気抵抗や摩擦を無視する」という件についても同じです。そもそも「空気抵抗や摩擦を無視すれば・・・云々」と言ってのけられる人は原理・法則が理解できているからであって、それをまだ理解していない人は「どうしてそれを無視するんだ?」と思うはずです。考えてもみてください。空気抵抗を無視したら鳥は空を飛べないし、摩擦がなければ車のタイヤは回らないし、それどころか人は一歩たりとも歩けないのですから、そんな条件の下で運動を考えること自体がナンセンスだと感じるのは、いたってまともな感覚だと言えるでしょう。
 そう考えると「空気抵抗や摩擦を無視する」という条件は、かなり無茶な条件でもあるわけです。それでも無視しなければいけないわけです。人によってはその点もなかなか腑に落ちないところだと思いますが、ではどうやってそれを腑に落とせばいいのかというと、結局のところ「式から現実を見る」ようにすればいいのです。式には空気抵抗を表す文字も摩擦を表す文字も出てこないのですから、それらを無視するしかないのです。単純な話です。

 話を元に戻しましょう。どうやって理科を攻略したらいいかというと、シンプルで数少ない原理・法則をしっかり「式で理解する」ことです。ウソっぽさ・疑わしさを解消して、「そりゃそうだよ」と心から納得できるくらいに、「当たり前だ」と思えるくらいに式をしっかり腑に落とすことです。
 そのために、まず式に出てくるパーツの意味をしっかりつかみましょう。たとえば「F=ma」の「F:力」は「押したときにかかる力」です。学力とか計算力とか努力とか、そういう力とは無関係です。「m:質量」は重力とは微妙に違います。その違いを丁寧に確認しましょう。「a:加速度」は変化率です。その概念を確実につかみましょう。また、Fとmとaの単位も大事です。そこをおろそかにしたままで計算に走ると、すぐに行き詰ります。
 というより、計算する必要はほとんど無いんです。先ほど書いたように、小学校レベルかせいぜい中学校レベルの計算しか出てこないのですから、計算が難しいはずはないんです。式を理解するために、簡単なシミュレーション(つまり計算)をしてみることはあってよいと思いますが、反復練習する必要はまるでありません。それより式で表された原理・法則をしっかり腑に落とすことに専念するべきです。
 物理の力学分野で4つか5つ、電気分野で4つか5つ・・・そうやって分野ごとにストン、ストンといくつかずつ腑に落とせば物理は完成です。化学でも生物でも地学でも基本的には同じです。
 大学受験に限らず、中学受験でも高校受験でも同じです。つり合いでストン、バネでストン、滑車でストン、自転でストン、公転でストン・・・こんな風に理科の理解は進みます。理科の学習で大事なことは、ストンを経験することです。ストンの数だけ理解が深まります。
 教科書や参考書に載っている図や写真やグラフは、その感覚を補強してくれます。授業中に先生がやる小道具を使ったパフォーマンスもそうですし、みんなが手を下してやる実験もそうです。物を投げれば放物線軌道を描きながら飛んでいくことなど、身の回りで起きている現象を式に引き寄せてとらえれば「なるほど」と腑に落ちることもあるでしょう。
 もともと理科の教材は、そのためにあるのです。あの手この手の説明も、中途半端な小道具も、デフォルメされた図解も、的外れのような気がしなくもない例え話も、すべては原理・法則をしっかり腑に落とすためにあるのです。
 ところで、次のことが大事なポイントなのですが、いろんな説明や現象の1つ1つをしっかり理解しなくてもいいのです。分からないものは分からなくても構わないのです。要するに、山ほどある説明や現象のうち、どれかが自分にヒットすればいいのです。
 たとえば、理科の先生が栓抜きで「てこの原理」を説明する場合、栓抜きを見たことがない人には理解できないでしょう。でも、缶ジュースのプルタブでその原理が理解できるなら、それでいいのです。なにも栓抜きで理解しなければならない道理はないのです。
 もちろん、いろんな説明や現象で理解できるなら、それに越したことはないのですが、ある説明やある現象が分からないからといって、そこで立ち止まってしまっては何にもなりません。原理・法則を腑に落とすことが目的なのですから、つまみ食いでも選り好みでも、自分に合うものをちゃっかり利用すればいいのです。

 ではそろそろ結論といきましょう。

○ どの参考書が自分にぴったり合うか、本屋で3時間ねばって選べ。



 理科の原理や法則や公式は、自然をそのまま表したものというより、モデルです。理科の練習問題や試験問題は、モデルをもとにしたシミュレーション。そのように受け取りましょう。
 現実の自然はたくさんの要因が複雑に絡まっていますが、そこからある要因を抜き出してシンプルにモデル化したものが理科。だから、現実そのものではありません。そして学習が進むにつれて、すなわち学年が進むにつれてモデルが変わります。小学校で習うモデルと、中学校で習うモデルと、高校で習うモデルは違うのです。そしてモデルが変われば、シミュレーション結果も変わります。これは他の教科には無い、理科だけの特徴です。理科とはそういうものなのです。

理科目線が生きる場所
 さて、理科を学ぶことが、将来何につながるかというと、理学や工学を挙げるより、私は経済学とプログラミングを挙げたい。複雑怪奇なお金の世界のある部分を抜き出してモデル化して、条件を変えながらシミュレーションするのが経済学。実現したいこと・コンピュータにさせたい動きをモデル化して、コードを書いてシミュレーションするのがプログラミング。そのように考えると、理科は文系・理系を問わず、とても大事な教科だと言えます。
 そして経済学もプログラミングも、現実とはだいぶ違うわけです。現実はそんなにシンプルなものじゃない。もっともっと複雑怪奇。ですからだいぶ違います。けれど、そこそこの整合性はある。
 理科も同じなのです。くれぐれも、そこに現れた光景は現実そのものではありません。あくまでもモデルに基づいたシミュレーション結果なのです。もちろん現実との整合性はあるのでしょうけれど、そのことはあまり積極的に考えない方が良い。なぜなら、突き詰めれば突き詰めるほど、整合性どころか綻びの方が目立つからです。モデルとは、そういうものです。
 でも現実そのものではないけれど、何かしら真理みたいなものを含んでいるとみなせる。理想形と呼んでも良い。
 そして、そのように理科という教科を捉えることで、理科の勉強がやりやすくなる。分かりやすくなる。

理科の原理・法則を腑に落とす
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大学受験必勝法 → 英語 ・ 数学 ・ 国語 ・ 社会 ・ 理科

2019年5月17日金曜日

★ 指数・対数の感性を養う

☆ 2のn乗のザックリ計算
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/2_13.html )

  ◇ ザックリ公式1  → ザックリ公式2
  ◇ 問題演習編(1)
  ◇ 問題演習編(2) → 問題演習編(3)


☆ 原子から宇宙までを1つの数直線に表してみよう
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/blog-post_65.html )

  ◇ 太陽系のミニチュアモデルを作る
  ◇ ナノ・ワールドを探索する
  ◇ 原子から宇宙までを1つの数直線に表してみよう


☆ 指数・対数が見える場面
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/04/blog-post_36.html )

  ◇ 指数法則 ⇄ 対数法則
  ◇ 世の中の増減は率で変わる
  ◇ 最上位の数字はどのような割合で現れるか?       など

☆ 人工知能と共に暮らす社会

  ◇ バーチャルとリアルがシンクロする時代 
  ◇ 自動運転がもたらす未来 
  ◇ 動物の脳が人間を超えるときこそがシンギュラリティ 
  ◇ 人工知能の作り方 
  ◇ 人工知能の多種多様 
  ◇ 人工知能とブロックチェーンとIoT、3つ合わせて出来ること 


  ◎ 人工知能時代の確率・統計の学び方 with エクセル

★ お金の相対性理論

☆ お金の相対性理論
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/blog-post_13.html )

◎ ゲーム理論・練習帳

 最近流行りのゲーム理論を問題形式で構成しました。ゲーム理論のおもしろいトピックスは一通り盛り込めたんじゃないかと思っています。生徒たちもおもしろがってくれるでしょう。
 ゲーム理論は経済学・政治学・社会学でよく使われるツールになっています。その理論的なベースは数学にあります。ところで、ゲーム理論とはなんなのか? ここではざっくり答えておきましょう。それは人と人との「コミュニケーションのモデル」です。「駆け引きの科学」と言ってもいいでしょう。
 ゲーム理論が自然科学と異なる点は、プレーヤーに意思があることです。そして、意思が結果を左右することです。相手の動きが変われば、自分も動きを変えます。自分が動きを変えれば、それに応じて相手も動くでしょう。スポーツでもビジネスでも恋愛でも、人はこのように動きます。それを扱うための枠組みがゲーム理論だといってもいいでしょう。
 授業や講習などでやるなら、想定時間は6時間。ゲーム理論の問題を3パターンに分け、1~3時間目のそれぞれの時間の前半でサンプル問題を1題ずつ説明し、その時間の後半ならびに4~5時間目にどんどん問題を解きます。

問題テーマ解説・解答時間
ゲームの解き方ゲームの解とは?1 , 2 , 3
1同時ゲームのサンプル旅行の行き先(利得表)1
2時間差ゲームのサンプルジャンケン(ゲームの木)2
3確率ゲームのサンプルサッカーのPK戦(期待値グラフ)3
4練習問題 No.1(同時ゲーム)分捕り合戦の取り分(1)
5練習問題 No.2(同時ゲーム)ゲームを変える(1)
6練習問題 No.3(時間差ゲーム)先手必勝と後手必勝(2)
7練習問題 No.4(同時ゲーム)社会的ジレンマの数々(1)
8練習問題 No.5(時間差ゲーム)駆け引きの力学(2)
9練習問題 No.6(確率ゲーム)利得表 連立方程式 3Dグラフ(3)
10練習問題 No.7(記述式問題)就活の力学 大手 VS 零細(1 , 2)
予備問題ぶたレース 共同作業 あいのり(1 , 2)
ところで、ゲーム理論とは?
  ※ 上表中の (1) は「1時間目の後半以降に生徒が取り組める問題」です。(2) , (3) も同様。

 なお、ゲーム理論は大学入試問題でも何度か出題されています。
大学入試教科
センター試験2004年度 2008年度 2011年度 2016年度 政治・経済
慶應大学商学部2007年度 商学部2009年度論文テスト
早稲田大学法学部2007年度政治・経済
京都大学文系学部1977年度数学(確率)

 その他、読み物系は以下をどうぞ。
シェア・タクシーの運賃をどう割り振るか?ゲーム理論で「賭け事」を解く  

★ 途方もない宇宙

☆ 宇宙人に出会える確率
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/blog-post_65.html )

  ◇ 皆既日食を体感する
  ◇ スカスカの宇宙
  ◇ 宇宙人に出会える確率


☆ 腑に落ちる最新宇宙論
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/03/blog-post_58.html )

  ◇ ビッグバン理論のほころび
  ◇ お茶目なブラックホール
  ◇ 宇宙にひしめくダークなもの


☆ 地球の周りを回るもの
(→ https://omori55.blogspot.com/2019/05/blog-post_65.html )

  ◇ 国際宇宙ステーションの軌道
  ◇ アポロが月に行ってない疑惑
  ◇ 地球が宇宙ゴミに囲まれる日

2019年5月15日水曜日

数学を勉強すると論理的思考力が身につくのか?

 数学を学ぶことで、どんな力が身につくのでしょうか? 数学を勉強することで身につく「将来役立つ能力」とは、どんなものなのでしょうか?
 数学の先生は「論理的思考力」だと言うでしょう。ところが、残念でした。ハズレです。説明しましょう。
 一言で「論理的」と言いますが、その意味合いは多様なのです。実は 論理には何種類かある のです。数学は確かに論理的な学問です。けれどもそれは、世間でいうところの論理、将来役立つ論理的思考力とはちょっと違います。
 というのは、数学でいうところの論理とは「100%正しい論理」です。正しさは完璧でなければなりません。99%正しくても、例外が1つでもあれば「偽=間違い」とされます。それが数学の論理です。
 その点が決定的に、現実社会で「使えない」のです。考えてもみてください。現実社会では、はっきりと白黒が付くようなものは最初から問題にならないのですよ。現実に考えたり議論になったりするような問題は、どちらをとっても一長一短、結果はやってみないとわからない、わからないけれども決めなければならない、そういう類の問題です。
 その場に数学の論理、つまり「100%正しい論理」を持ち込んだらどうなるか。両方とも「絶対に正しいとは言えない」、つまり「偽」となるに決まっています。こうして結局、何も決められないことになるでしょう。
 あるいは、その場で「数学的に正しい」とされるものは何かというと、要するに誰が考えても「当たり前のこと」であって、それを持ち出しても目の前にある問題を解決したりはしないのです。
 確かに、数学で身につく論理もあります。そして、数学では身につかない論理もあります。現実社会で必要とされる論理は、後者です。数学で身につく論理は確かにあって、それを「論理的思考力」と呼んでも間違いではないのですが、案外とその論理は実社会で役に立たないのです。実社会で役立つ「論理的思考力」は、それとはちょっと違うものです。

 では、初めに戻って、数学を勉強することで身につく「将来役立つ能力」とは、どんなものなのでしょうか?
 「試行錯誤力」だと私は思います。数学の問題を前にして、○○の公式を使おうか、それとも参考書に載っていたあの解き方でやってみようか、あるいはもっと簡単にやる方法はないかな、とあれこれ考えて、何はともあれやってみる。それでうまくいかなければ、違う方法でやってみる。
 この流れが試行錯誤です。そして、これが現実社会で大いに役立つのです。そのためには、いろんな解き方・考え方が身についていなければなりません。1つしか方法を持ち合わせていないと、それが行き詰った時点でお終いです。数学の問題でも現実の問題でも、オプションをいくつか持って、試行錯誤しながら解決を図ります。その訓練ならびに経験として、数学の勉強が生きるのです。
 数学の問題を解くのも、現実の問題に取り組むのも、試行錯誤という点では同じです。けれども、ゴールはまるで違います。数学の問題を解いて最後に得られるのは「100%正しい答え」ですが、現実の問題に取り組んで最後に得られるのはそれではありません。
 現実の問題というのは「どうやったらロケットがまっすぐ飛ぶのだろう」だったり、「なぜ組織がうまく機能しないのか」だったり、「どうやって彼女のハートを射止めようか」だったりするのでしょうけれど、そんなものに完全正解なんてないのです。それでもより良い結果を求めて、あの手この手でやってみる。そして最終的にうまくいけば、それが答えです。何が正しいかは、最終的にはやってみなきゃわからないのです。あるいは、やってみても最後までわからないものなのです。

 ところで、「数学の論理」は「現実社会で役立たない」と言いましたが、では「現実社会で役立つ論理」とはどんなものなのでしょうか。詳しくは拙著「高校生が学んでいるビジネス思考の授業」の第2章「考え方の作法」をご覧いただきたいのですが、ここでは手短にサンプルを示しましょう。
 「現実社会で役立つ論理」とは、私がこの記事で展開しているような論理です。私はこの記事で「100%絶対に正しい」ことは何一つ書いていません。でも、私がここに書いたことに、みなさんが納得してくれるなら、この記事は「論理的な説明」ができているということになるでしょう。そういう意味での論理です。そしてそれは、数学的にはまったくデタラメな論理です。
 ここでまとめましょう。数学を勉強することで身につく「将来役立つ能力」がどんなものかというと、それは「試行錯誤力」です。「論理的思考力」ではありません。数学である面の論理的思考力は養えますが、それは実社会では案外役に立ちません。
 高校生のみなさん、数学を勉強しましょう。

2019年5月14日火曜日

数学を学ぶことが論理的思考力を身につけることにつながるのか?

 Facebookの寺西隆行さんの 投稿 にコメントした。彼の問題意識は「数学を学ぶことが論理的思考力を身につけることにつながるのか?」というもので、彼自身それに対して否定的に考えていたようだ。それに対する僕の考えを記したものだ。
 数学の論理は「100%正しい論理」。「論理的な思考」というときの論理は、それとは違う。そもそも100%正しいものなら現実には最初から議論にならないわけです。
 では、数学が現実に生きる場面は無いのかというと、それも違う。2つ挙げます。
 1つは「社会を数字で見る目を養う」こと。そのためには「中学までの数学+指数・対数」で十分です。(指数・対数が必要な訳は、世の中の物事は指数関数的に変化するから)
 もう1つは「コンピュータを動かす論理に通じる」こと。数学の論理=100%正しい論理は「コンピュータの中で現実に動いている論理」だからです。
 以上まとめて言うと、プログラミング教育が入るのに合わせて、高校数学から指数・対数以外のものを全部やめればいいと(中高の数学教員である)私は考えています。
勢いでバァーっと書いたもので、極論のように見えるかもしれないが、なかなか的を射ていると我ながら思う。後できちんと 記事 にまとめたい。

☆ 地球の周りを回るもの

 恒星は「いつまでもある星」で、地球から見れば「(つね)に決まった動きをする星」です。惑星は「不規則に動くう星」で、地球から見れば確かにそう見えます。衛星は「惑星の周りを回る星」で、「惑星の周りを回る」という点では人工衛星もそれに含まれます。

  ◇ 国際宇宙ステーションの軌道 
  ◇ アポロが月に行ってない疑惑 
  ◇ 地球が宇宙ゴミに囲まれる日 

 衛星は英語では Satellite 。サテライト・オフィスというときのサテライトです。メインの居住区から少々離れていて毎日通うようなところではないけれども、行き来が可能で居住も可能なスペースです。実際に手軽にそこまで行けるかどうかはともかく、衛星=Satellite という言葉にはそれくらいの距離感があるようです。

地球が宇宙ゴミに囲まれる日

 火星移住ロケット1号がまもなく発射される。まずは移住のために必要な資材が火星に送り込まれる。大勢の人類が火星に行くのは、その後だ。この後、2号、3号と続いて、最終的には全人類とたくさんの動植物が火星に送り込まれる計画だ。
 でも、最近じゃ人工衛星やら使い捨てた機材やら宇宙飛行士が落としたハンマーやらが地球の周りをぐるぐる廻っている。大きいものも小さいものも含めて、秒速何キロメートルの速さで飛び廻っているのだから、うまくすり抜けないと大変なことになる。小さいものは弾丸さながらに、大きいものはミサイルさながらに、いつなんどき何が飛んでくるかわからない状況だからである。
 かつて人工衛星を打ち上げるために使った燃料タンクやその他もろもろの機材も軌道上に放置されて、今でもぐるぐる廻っている。故障して使えなくなった人工衛星も、耐用年数が経って放棄した人工衛星も相変わらず地球の軌道を廻っている。大きいものは把握できても、小さいものはどの程度の数がどの軌道をどれくらいのスピードで飛んでいるかは、世界中の誰も知らない。
 もちろん隕石もある。隕石にぶつかる可能性は昔からあった。昔はその可能性はほとんどゼロに近かったからよかったが、今では地球の軌道を廻る人工物が昔とは比較にならないほど増えている。ぶつかる可能性が、もはや無視できないくらいの確率になってきたのである。
 ところで、なぜ火星移住計画が持ち上がったかというと、地球に住めなくなったからである。なぜ住めなくなったのかは、この際気にしないことにしよう。地球温暖化であれ、宇宙人の侵略であれ、戦争であれ、理由はともかく地球を脱出せざるをえなくなったということだ。
 3秒前、2秒前、1秒前、発射。火星移住ロケット1号が打ち上げられた。順調に高度を上げた。こういう場合、通常は地球の軌道を何回か廻ってから宇宙へ飛び出すが、火星移住ロケット1号は一気に軌道を突っ切って、まっすぐに宇宙に飛び出した。成功である。拍手が起こった。
 ロケットは軌道を廻る危険なルートを避けて、ぶつかる可能性が低いルートを選んだのである。それが功を奏したということだ。でもそのために、より大量のエネルギーを必要とした。火星移住ロケット1号は3段の発射ロケットを搭載していた。地球脱出に成功した代わりに、新たに3つの大きな物体が地球の軌道に残された。
 1号の成功に続いて、次に2号が打ち上げられる。その準備をしていた矢先に、空に異常が起こった。通信衛星から外れて宇宙を漂っていた1枚の太陽光パネルが、火星移住ロケット1号が残した燃料タンクに衝突したのである。太陽光パネルは粉々に砕け散り、燃料タンクは大きく3つに割れた。
 これが連鎖の始まりだった。太陽光パネルの欠片と燃料タンクの残骸はてんでバラバラの楕円軌道を描いて廻り始め、他の宇宙ゴミに衝突した。こうして宇宙ゴミの数は飛躍的に増えていった。
 政治家と科学者は、計画を予定通り実施するか、それとも延期するか、あるいは中止するかを話し合っている。人々は、先に行くべきか、様子を見ようか、地球にとどまろうかと考えている。火星移住ロケット2号の打ち上げ予定日は2日後である。
そうは言っても、他の星で人間が住める環境を一から作るのに比べれば、地球の環境を修復するほうがはるかに簡単でしょう。地球がどんなにひどいことになっていようとも、新しい星に行こうとするより、地球に住み続けることを選んだほうがいいと思いますよ、たぶん。

アポロが月に行ってない疑惑


 光はモノに当たって光ります。当たるモノが無ければ光は黙って通過します。地球では光が空気に当たって乱反射します。だから、昼間の地球の空は明るいのです。
 ところが月には空気がありません。太陽の光はまるごと月面に届きます。だから、月の空はいつでも真っ黒なのです。月で昼間に空を見上げると、真っ黒な中にギラギラ光る太陽が浮かんでいます。そして太陽のすぐそばを天の川が流れています。空気がなければ、そういうことになります。
 それだけではありません。空気がないと対流も起こりませんから、日なたはジリジリ暑く、日陰はシンシン寒い。日陰の場所が平らなのか穴があいているのか、懐中電灯を当ててみないとわからない。そういうことになります。
 しかも、月はいつも同じ面を地球に向けながら、1ヶ月かけて地球の周りをまわっています。ということは、月では半月間昼が続き、半月間夜が続きます。さて月に住んだ場合、いかにして夜を乗り切るか。 天井は透明なガラスかプラスチックに限ります。そうじゃないと、夜が明けたことに誰も気がつかないでしょう。
 ガガーリン大佐(1961年に世界で初めて宇宙飛行した旧ソ連の宇宙飛行士)は「地球は青かった」と言いました。彼は本当はこう言いたかったのです。「宇宙は黒かった。地球以外はどっちを向いても真っ黒だった」と。

 さて、「アポロは実は月に行っていないのではないか?」という疑惑があります。疑惑の中心は、アポロから届いたという月面での映像にあります。そこにいくつかの矛盾があるというのです。主なものは、
○ 月面に突き立てた星条旗(アメリカ国旗)がゆらめいている。
  → 月には空気がない → 風が吹かない → 地球で撮った疑惑
○ 宇宙船の影と宇宙飛行士の影が、違う方向を向いている。
  → 月での光源は太陽だけ → 影は平行になるはず → 合成写真疑惑
これらを根拠に、ネット上では「アメリカ政府の陰謀説」「NASAとハリウッドの共謀説」などが渦巻いています。映像以外の状況証拠としては、
○ 米ソの宇宙開発競争に後れをとったことで、アメリカは焦っていた。
  → 1961年に旧ソ連が世界で字初めて有人宇宙飛行に成功した。
○ アポロ以降、誰も月に行っていない。
  → 1969~1972年の3年間の間に6回月に到達したというが、
    それで月を調べ尽したわけでもあるまいに。
これらを総合して「アポロは月に行っていない」と考える人が多いのです。その話は、誰かが仕組んだデッチ上げだというわけです。

 ではここで、先ほど挙げた映像に関する疑惑を検証してみましょう。
 まずは、「月ではためく星条旗の疑惑」について。月には空気がありません。だから、風が吹かない。ここまでは正しい。しかし、旗が揺れないわけではありません。
 むしろ、月には空気抵抗が無いから、一度揺れた旗はいつまでも揺れ続ける のです。地球上で振った振り子は空気抵抗のために振れ幅が次第に小さくなってやがて止まりますが、もし空気抵抗が無ければいつまで経っても振れ幅は変わらないし、止まらない。エネルギー保存則です。それと同じで、宇宙飛行士が月面に突き立てたときに星条旗に与えた振動はいつまでも消えないのです。
 よって、映像の中で星条旗が揺れていることはデッチ上げとする根拠にはなりません。むしろ、あのとき星条旗が揺れていたのなら、いま現在でも同じタイミングで月面で揺れ続けていることでしょう。そう考える方が自然です。
 もう1つ「月面であらぬ方向を向く影の疑惑」について。これについては、地面が平らでなければいくらでも起こることです。月には水も空気もないから風化しません。つまり、地形がなだらかになりにくい。しかも空気の揺らぎがないということは、地形がそのまま影になる。そんなこんなを考えると、影があらぬ方向を向ているように写真に写るのは、いかにもありそうなことに思えます。

 私は「アポロが月に行った」とも「行ってない」とも言うつもりはありません。ただ「行ってない」という主張は面白いし、けれどもその証拠をあげるのはなかなか難しいし、仮に映像が偽造だとすると「かなり手の込んだ策略だなぁ」と感心したりもするわけです。

国際宇宙ステーションの軌道

国際宇宙ステーションは地球の上空400kmを秒速約7.7kmで飛び、約90分で地球を一回りしています。これより遅ければ地球に落ちてしまいます。これより速ければ宇宙に飛び出してしまいます。高度400kmを飛びながら、落ちもせず飛び出しもしないちょうどいいスピードが秒速約7.7kmというわけです。
 ところで、地球の直径は12800kmです。そこで、国際宇宙ステーションの軌道を、なるべく正確な縮尺で描いてみました。〈図1〉が地球と軌道を丸ごと描いたもの、〈図2〉がそれらの一部を描いたものです。こうして描いてみて、意外と地表すれすれを回っているんだなぁと思った次第です。

 他の人工衛星はどうでしょうか。典型的な人工衛星に静止衛星があります。公転周期(地球の周りを1周回る時間)が地球の自転周期とちょうど同じ24時間になる人工衛星で、地球から見ると静止しているように見えます(正確にいうと、赤道の真上の軌道を回る静止衛星は地球から見て静止しているように見えますが、それ以外の軌道を回る静止衛星は南北方向に少しぶれているように見えます)。その使用目的は、放送衛星・通信衛星・気象衛星などです。
 静止衛星の高度は約36000km。国際宇宙ステーションの高度が400kmでしたから、その90倍です。地球の半径6400kmと比較すると、その5.6倍です。では、再び描いてみましょう。


〈図3〉がそれです。地球の大きさを〈図1〉の4分の1にしました。国際宇宙ステーションよりはるかに高いところを飛んでいることがわかるでしょう。この縮尺では国際宇宙ステーションの軌道は地球表面とほぼ重なってしまいます。
 宇宙エレベータの無重力ステーションはこの軌道上に作られます。これより低いところには地球の重力が働きますから、下に引っ張られます。無重力ステーションより高いところには遠心力が働いて外に引っ張られますから、そこに宇宙船発射台を設置すれば、切り離すだけで宇宙船は宇宙に飛び出します。〈図4〉に示しましたが、この縮尺では宇宙エレベータ本体ならびにステーションの大きさはほとんどゼロになってしまいますので、点で位置だけを表しています。

 さて、他に地球を回っているものといえば、月ですね。月の半径は1737km、地球の半径の約4分の1です。地球から月までの距離は384400km、静止衛星の高度の10倍強です。では続いて地球と月と月の軌道をなるべく正しい縮尺で描いてみましょう。
 〈図5〉の真ん中の円が地球です。そのすぐ外側の点線が静止衛星の軌道です。そして、大きな円が月の軌道です。軌道上に月を描きましたが、軌道の点線に埋もれてしました。見えるでしょうか。
 もうちょっと大き目に描いたのが〈図6〉です。月ははっきりわかるでしょうけれども、軌道ぜんぶは入りきらなくなりました。


 アポロはこんなに遠いところまで行ったんですね。かぐや姫はこんなに遠いところからやってきたんですね。
 ここまで「地球の周りを回るもの」を3種類、国際宇宙ステーションと静止衛星と月の大きさ・位置関係をなるべく正しい縮尺で描いてきました。こうして描いてみると、国際宇宙ステーションが地表すれすれを飛んでいること、月がべらぼうに遠いことが実感できますね。
 それはそうと、かぐや姫は結婚する気がさらさらないのに取引をするような素振りをして、ありもしないものを持ってこいと無茶を言う。それでもあきらめきれない男どもは月から来た使者を追い返そうとしましたが、かぐや姫は「はい、さよなら」と月へ帰りました。
 ところで、かぐや姫と結婚する方法が1つだけあったんです。みなさん、お気づきでしょうか。というのは、かぐや姫といっしょに御車に乗り込んでしまえばよかったのです。そうすればかぐや姫と結婚できて、さらに加えてアポロ11号のアームストロング船長よりも先に月面着陸できたはずなんです。例の男たち、惜しいことをしましたね。

2019年5月13日月曜日

空でチカチカ光るもの

1994年にロサンゼルスで地震が起きて、停電になった。
そのとき役所や研究所にたくさんの問い合わせの電話があったそうだ。
「空でチカチカ光るあれは何だ? すごくたくさんあるぞ。UFOか?」と。
 地震と停電で大騒ぎしているときにそんな質問がたくさんやってきて、お役所の方は困ってしまったようです。

奇跡の作り方

 今朝のちょうど7時に起きた出来事である。通勤で駅まで歩いている途中、ちょうど3丁目の交差点を曲がろうとしたとき、犬のウンチを踏みそうになった。慌てて足をよけたら、足を移動したちょうどその場所に 100 円玉が落ちていた。
 運か不運かはてまた犬のフンか、なにはともあれ 100 円拾ったわけだ。

 これは 奇跡 なのだ。この前 100 円を拾ったのはいつだったろうか? 覚えちゃいないが、仮に3年前としておこう。そうすると 3年≒1000日だから、今日 100 円を拾う確率は 1000 分の 1 の確率ということになる。かなり小さい確率だが、まだ奇跡というには及ばない。
 でも、拾った場所が3丁目の交差点だったという点もなかなか珍しいことなのだ。100 円玉が他の場所でなく、まさにその場所に落ちてる確率は、おそらく 1000 分の 1 くらいの確率だろう。ここまでで 1/1,000×1/1,000 = 1/1,000,000 = 百万分の1 の確率となった。
 計算を続けよう。実は、ボクは今朝ちょっと寝坊したのだ。だから普段なら7時前に通過するその場所を、今朝はたまたま7時ちょうどに通ったのだ。ちょうどその時刻にその場所を通る確率を仮に 1000 分の 1 としよう。ここまでで確率は 十億分の1。
 まだ続く。100 円玉と犬のウンチがすぐそばに落ちている確率は、さてどれくらいか?
これも 1000 分の 1 くらいの確率なんじゃなかろうか。そうすると今朝ボクが経験したことが起きる確率は 1/1,000×1/1,000×1/1,000 ×1/1,000 = 1/1,000,000,000,000 = 1 兆分の 1 ということになる。

 これを 奇跡 と呼ばずして何と呼ぶ?

津波は防波堤を越える

 普通の波では、水は 上下 に動く。1つの波の幅は 数m 。高潮も同じ。波は後から後からやってくるが、水そのものが移動してくるわけではない。水の一部が防波堤を越えても、越えなかった水は海に戻っていく。


 一方、津波は水そのものが に移動する。その幅は km 単位の大きさである。防波堤にあたった水は、後ろからやってくる水に押されて防波堤を駆け上がる。津波の高さは地形にもよるが、まず第一に移動する水の 体積 によって決まる。

自衛する免疫機能

 免疫とは、それが宿る生物の体を守るためのものだが、免疫それ自体を守る働きをすることがある。前者(それが宿る生物の体を守る)は、体内に有害な異物が入ってきたときにそれをやっつけることであり、それが本来の免疫の働きである。後者(免疫それ自体を守る)は、その能力を維持するために行う活動で、免疫の本来の活動ができない場合に限ってこの活動は行われる。
 すなわち、細菌やゴミなど有害な異物が一定量体内に入ってくるなら、免疫はそれをやっつけるだけだ。他のことはしない。する必要が無い。けれども、いつまで待っても攻撃対象が現れないと、免疫は自衛手段に出る。無害な物に対して、すなわち本来攻撃する必要が無い対象を攻撃する。これがアレルギー症状である。
 平和な世の中であっても定期的に軍事演習をするようなもので、何故そんなことをするかというと、軍事力を維持するためである。免疫も同じだ。定期的に実戦するか、もしくは実戦を想定した演習を行わないと、その能力を維持できない。
 「小人閑居して不善をなす」ということわざは免疫にも当てはまる。ヒマにさせておくとロクでもないことを始める。だから、ヒマにさせない方がいい。むしろ、ときどき毒を盛ってやった方がいい。そうすればきっと免疫は正常に働く。反対に、そうでもしないと免疫は人体に全く無害な花粉のような物に対して攻撃を仕掛ける。花粉症を薬で抑えることは、免疫がその機能を維持しようとするのを妨害することだから、機能低下は必至だろう。
 医学的なことはオレは知らない。なにはともあれ、花粉症がつらい。

コンピュータって自転車みたいなものだな

コンピュータって、自転車みたいなものだな。
自分の力でこがなければ、少しも前に進まない。
自分の力でこげば、歩くより走るよりずっと速く進む。

実習生におしゃべりしてもらった(その1)

(2015年夏)

 先月ウチの学校で教育実習があった。ボク自身には実習生はついていなかったのだが、実習生の一人が「授業を見せてくれ」というので、見せても誰の得にもならないと思って、せっかくだから実習生におしゃべりしてもらうことにした。
 というのは、授業の練習は担当の教員の授業でやっているはずだし、ボクの授業を見ても勉強にはなりそうにない。むしろこれから大学へ進もうとしている高校生に向かって研究のことでも大学生活でも何でもいいので話してもらった方が、生徒のためにもなるし、実習生のためにもなるし、ボク自身も楽しめそうだったので、それを提案したわけだ。
 今日は(その1)。教育実習に来ていた女子学生、女子高出身のリケ女である。その話の中から、ボクが面白いと思ったことを書いておく。

◇ 女子高出身者と男子高出身者は、実は気が合う。
 女子高出身者と男子高出身者も、どちらもあけすけに何でも言いたいことを言う習慣が身についている。
 それに対して共学では、女の子も男の子も異性の目を気にしてあまり本音を出さない。
◇ 理工学部では男子と女子の割合がほぼ9;1であるのに対して、文学部ではほぼ男女半々。
 でも、文学部に行った方が女の子と仲良くなれるかというと、そうでもない。文系の授業は教授の話を聞くだけの授業が多いから、周りに女の子がたくさんいても話す機会が無い。
 それに対して理系では実験や実習などみんなでいっしょにやる授業が多いから、女の子と話す機会も多い。

 ウチの高校は男子校だから、この話でみんな安心したというか、喜んだというか、ボクにとっても面白かった。

実習生におしゃべりしてもらった(その2)

(2015年夏)

 昨日の 記事 に続いて、今日は(その2)。授業中に教育実習生に、研究のことでも大学生活のことでも何でもいいのでしゃべってもらった。ウチの学校の卒業生で、現在は東北大学の学生。以下、彼の談をボクの記憶に残っている範囲で要約して紹介する。

◇ 彼が高校を卒業したのが2010年度。
 2011年度の大学受験で彼は国立前期で東北大に、後期で北海道大に出願した。
 前期試験の合格発表が3月10日、彼は晴れて東北大に合格した。

◇ そうなると後期試験は受験する意味がなくなった。後期の試験日は3月12日。
 あらかじめ羽田から千歳までのフライトと札幌市内のホテルの予約も入れていた。
 受験する意味がなくなったけれども、カニ食いたい、ラーメン食いたい、合格祝いに北海道で遊びたい。

◇ こうして後期試験の前日の昼頃に羽田発・千歳行きの飛行機に乗った。
 3.11当日である。ちょうど津波が襲ってくる時間帯、彼は三陸上空にいた。
 飛行機の小さい窓から下を見れば波が見えたのかもしれないが、乗客がそのことを知るはずもない。

◇ 千歳空港に着いて電車で札幌に向かった。電車は普通に動いていた。
 電器屋が好きな彼は、札幌駅に着いてまず駅前のビックカメラに入った。そこで震災を知った。
 彼は予定通りあれ食ってこれ食って、後期試験終了に合わせたフライトで東京に戻ってきた。

◇ それから彼は東北大学の学生として、いま5年目の学生生活を送っている。
 志望校を決める頃、受験に挑む頃には全く考えてもいないことだったが、復興とともに学生生活を送ることになった。

 そういえば、そんなタイミングだったんだよね。彼に限らず、東北在住の受験生、東北方面を受けた受験生はいろんな経験をしたんだろう。
 話を聞いたのは現高校1年生。震災当時は小学5年生だった。実習生に何でもいいから話してもらおうというこの企画、気に入った。来年以降もどんどん取り入れたいと思う。

グラフは3ステップで(エクセル)

 グラフを作る手順は、
◇ 先にデータ範囲を選択して、
◇ 「挿入リボン」のタグをクリックして、
◇ 「グラフ」の中から適当なものを選ぶ

これだけです。 グラフのレイアウトなど凝り出したらキリがないのですが、上の手順で十分です。

混色の原理をワードで体感する

混色の原理をMSワードで体感できます。文字列を選択して「ホーム」リボン→「フォント」→「フォントの色」と進むと、ウィンドウが開きます。さらに「ユーザー設定」タグをクリックすると、右のようになります。
 描図形を選択して「描画ツール」リボン→「図形のスタイル」→「図形の塗りつぶし」を進んでも同じウィンドウが開きます。
 ウィンドウの中の「赤」「緑」「青」の値は、それぞれの色の光の強さを表しています。0から255まで256段階で変えられます。3色とも0のときが光が全く当たっていない状態で、「黒」を表します。3つとも255のときが3色とも最も強い光を当てた状態を表して、このとき3色を重ね合わせると「白」になります。
 右図は「赤」の強さが最高の255で、「緑」が99の中程度の強さで、「青」は0つまり全く当てていない状態です。このとき、オレンジ色に近い色になりました。右図の数字の右にある「▼」「▲」ボタンをクリックすれば光の強さを1段階ずつ変えられます。
 このような手順で文字の色でも図形の色でも、細かく決めることができます。ワードに限らず、エクセルでもパワーポイントでもほぼ同じ操作で色を変えることができます。
 ちなみに、255を2進法で表すと「11111111」(←1を8個並べた数)です。要するにコンピュータの画面では「赤」「緑」「青」の各色あたり8ビット(=1バイト)使って28(=256)段階の光の強さを決め、その3色を重ね合わせて約1600万色の色を作っているということです。
 理屈を学んだ後に、この要領で文字色でも図形の色でもエクセルのセルの色でも実際に色を変えてみれば、腑に落ちることでしょう。

ゲーム理論の例題集 (1)

 ネット上で ゲーム理論の例題集 を見つけた。こんなネタをこのブログ上に収集したいんだが、ただコピペするだけでは著作権法上問題があるやも知れぬ。
 では、どうすればいいか? そうだ! 引用すればいいんだ。さて、引用と認められるためにはどうすればいいか? そうだ! 答えを書けばいいんだ。
 答えがあっているかどうかは分からないので、みなさん、チェックしてね。



【問題1】
 あなたは、従業員を100人抱えた企業の経営者である。各従業員の勤務状況に応じた利得(満足度を金額に換算)は、一生懸命働いた場合30万円、怠けた場合60万円、 解雇された場合0円である。あなたは、従業員を真面目に働かせたい。そのために、一生懸命働かないと解雇するという脅かしをちらつかせる。しかし、会社を運営してゆくには、解雇できるのは最大でも1人だけである。以上のような状況で、全員を真面目に働かせるには、経営者はどうしたらよいかをゲーム理論の観点から説明せよ。

【問題2】
 現在、3つの携帯電話会社が顧客の獲得を競っているとしよう。顧客は利用料金の安い方と 契約するものとする。各社とも、様々な料金プランを設定している。このような、価格戦略をとる意味を、ゲーム理論の観点から説明せよ。

【問題3】
 2台の自動車がそれぞれ、直行する方向から交差点に近づいて来ており、直進しようとしている。このとき、交差点で各車が信号にしたがって行動する。ドライバーのこのような行動選択を、 交通法規や社会規範の観点ではなく、ゲーム理論の観点から説明せよ。

【問題4】
 一社しか利益を出せないような地域のマーケットにA, B 2社が参入しようとしている。2社とも我が社は断固としてこの小さな市場に参入すると宣言している。このとき、A社がB社に対して、スパイを送り込み、B社は本当に参入するつもりかを探らせた。このとき、B社はこのスパイに対して、 どう対処すべきであろうか。追い払うべきであろうかを、ゲーム理論の観点から説明せよ。



では、答えです。

【問題1】
 この場合、実際に誰かを解雇するべきではない。なぜなら「解雇できるのは最大でも1人だけ」だから、誰かが解雇されたら、他には誰も解雇されないことになって、従業員は怠けるからである(従業員にとっては怠ける方が。利得が大きい)。これでは逆効果になる。
 ではどうすればいいかというと、従業員に通し番号を付けて(年齢順とか五十音順とか)、「怠けている従業員のうち、最も番号の小さい者を解雇する」と言えばよい。そうすると従業員1は真面目に働く(解雇されるよりは利得が大きいから)。 「従業員1は真面目に働くという選択をする」ことが分かれば、従業員2も真面目に働く(怠ければ自分が解雇されるから)。・・・こうして、全員が真面目に働くようになる。

【問題2】
 どれが安いかを比較できないようにしている。どの機能をどれだけ使うかは未定だから、どの会社が安いのか、どのプランが安いのかは実際にわからない。だから「利用料金の安い方と契約する」ことは現実にはできない。こうして、携帯電話会社は値下げ競争を回避できて、結果的に利用者は高い金額を払わされる。
※ 各社がたとえば「通話時間に比例する」ような料金体系だけを掲げたら、「どこが安いか」を比較できる。
 その場合、料金が安い方に客が流れていって、携帯電話会社同士の値下げ競争が始まるだろう。

【問題3】
 自分にとっての損得は、得な方から「(ア) そのまま直進してぶつからない > (イ) いったん止まって相手が通り過ぎるのを待つ > (ウ) 衝突する」の順である。 自分の前が赤信号で相手の前の信号が青信号のとき、相手が直進してくると考えられるので、(イ) と (ウ) を比べて、自分は (イ) を選ぶ。自分の前が青信号で相手の前の信号が赤信号のとき、相手が止まると考えられるので、(ア) と (イ) を比べて、自分は (ア) を選ぶ。相手も損得を考えれば同じように行動する。つまり、お互いに「信号を守る」というのがゲームの解(ナッシュ均衡)になる

【問題4】
 仮に参入のためのコストを 6、その地域での総売上げを 10 とする。1社だけが参入した場合の利益は 4 となるが、2社が参入した場合は各社のコストは 6 のままで、売上げは総売り上げの半分の 5 となって2社の利益は −1 となる。 また、参入しなければ、コストも売上げも利益も 0 である。 そのように想定してみよう。
 さて、A社にとっては「B社が参入するなら、A社は参入しない方が得(0>−1)。B社が参入しないなら、A社は参入した方が得(6>0)」である。だから、B社はA社のスパイに 対して、参入する姿勢を見せる 方が良い。そうすれば、A社は参入する場合の利益 −1 と参入しない場合の利益 0 を比べて、「参入しない」という選択をするはずだからである。そしてその場合、B社は利益 4 を得る。

2019年5月12日日曜日

「風が吹くと桶屋が儲かる」確率を計算する

「風が吹くと桶屋が儲かる」という話は、次のような話のようです。
風が吹く → 砂埃が舞う → 砂が目に入る → 目が不自由になる
→ 三味線弾きになる → 猫の皮が必要になる → 猫が減る → 鼠が増える
→ 桶をかじる → 桶の修理が増える → 桶屋が儲かる
形だけ見ると、
命題:
「A → B 、B → C 、・・・ 、J → K」が成り立つ ならば「A → K」が成り立つ
とそっくりです。
 でも、実際には全然違います。前者の (ならば)が 確率的に成り立つ のに対して、後者の 必ず成り立つ という意味です。

 後者については別の記事で考えるとして、今日は前者について考えます。さっそく確率を計算してみましょう。
 ・・・ と言ってはみたものの、皆目見当がつきません。まぁいいや、ものすごぉくザックリいきます。「風が吹く」と「桶屋が儲かる」との間に 10 個の → がありますので、すべて同じ確率としちゃいましょう。
そうすると、
(1) 各 → の確率を 0.8 とすると、「風が吹いたときに桶屋が儲かる」確率は (0.8)10 ≒ 0.1
(2)    〃   0.5        〃          (0.5)10 ≒ 0.001
(3)    〃   0.1        〃      (0.1)10 = 0.0000000001
となります。
(1) なら「あるかもしれない」という感じでしょうか。(でも、0.8 という数字がかなり無謀でしょう)
(2) なら「現実には起こらない」と考えてよさそうです。(0.5 でも高すぎるような気がします)
(3) なら「絶対にありえない!」と断言していいでしょう。(実際には案外これくらいなのかも)

 はい、ここで今日の結論。「ならば」(→)を 10 個も並べた時点で、アウト。
 現実の論が確率的に成り立つとすると、→ を並べれば並べるほど、論が成り立つ確率がみるみる下がっていく。
 0.8(というかなり精度のいいもの)を3つ並べた場合で、(0.8)3 ≒ 0.5 。これがせいぜいでしょ。学術的研究なら10個でも20個でも必要なだけ並べればいいと思うが、普通は2~3個も並べればもうたくさん。それ以上並べたら、逆効果です。

 ところで、確率を上げる方法があります。 どうすればいいか、わかりますか?
 → を 直列 に並べるんじゃなくて、並列 に並べればいいんです。たとえば、0.5 の確率で成り立つものを3つ並列に並べれば、論が成り立つ確率は 1-(1-0.5)3 = 0.875 。
 まぁ計算上はこうなります。 ・・・ 現実の論って、こうだと思うんだよねぇ。1つの理由・根拠だけで押し切るんじゃなくて、いくつかの理由・根拠を挙げるってこと。その複数の根拠のいずれもが、「絶対に正しい」とは言えないけれども、3つあげればどれかが該当する確率はだいぶ上がる、と。

2019年5月11日土曜日

ソルバーの使い方(その2)

◯ 球面 x2+y2+z2=4 上の点 A と点 B(1,2,3) との距離の最小値は?
エクセルを使って、AB の長さの最小値とそのときの A の座標を求めてみましょう。
 下のシートにおいて、
セル D3 : =SQRT(4-B3^2-C3^2)
セル E3 : =SQRT((1-B3)^2+(2-C3)^2+(3-D3)^2)
が入力されています。それぞれの式は、
セル D3 : 点 A は球面 x2+y2+z2=4 上にある
セル E3 : 2点 AB 間の距離 d
を表しています。
 続いて「データ」リボンから「ソルバー」を選んで、


「解決」ボタンを押すと、 ↓


距離 d の最小値とそのときの x , y , z の値を求めてくれます。



 なお、これは次のように計算で求めることもできます。

○ x2+y2+z2=4 に (x , y , z)=(k , 2k , 3k) (ただし k>0)を代入して、k=4/√14
  よって (x , y , z)=(√14/7 , 2√14/7 , 3√14/7) のとき 最短距離 d=√14-2
○ 電卓で近似値を求めると、
  (x , y , z)=(0.534522 , 1.069045 , 1.603567) のとき d=1.741657

結果はほとんど一致しますね。

ソルバーの使い方(その1)

 エクセルでセル C3 の式を「=B3^2+6*B3+3」として、「データ」リボンから「ソルバー」を選んで、


「解決」ボタンを押すと、 ↓


y の最小値とそのときの x の値を求めてくれます。



なお、これは2次関数ですから、下のように平方完成して求めることもできます。
○ y=x2+6x+3=(x+3)2-6 より x=-3 のとき y は最小値 -6 をとる。
結果はもちろん一致しますね。

好きな数字

 先日の数学関係の イベント 後の懇親会で 数学大好きとしちゃん こと星野利夫さんが発した「あなたの好きな数字は何ですか?」の問いに、その場では出てこなかったのですが、後で思いつきました。私が好きな数字は「5963」(ごくろうさん)です。
 別にトシちゃんやイベントを主催した タカタ先生 に「ごくろうさん」と言いたいわけではありません。ましてや自分自身に向けて言いたいわけでもありません。では、なぜ好きなのかというと、5963 を素因数分解してみればわかります。きっとあなたも大好きになるでしょう。
 5963 は素数ではありません。それを素因数分解すると「5963=67×89」となります。見ての通り「6→7→8→9 」と連番になるんです。もちろん 67 も 89 も素数です。 
 私が発見しました! 確認はしていませんが、おそらく世界初だと思っています。

 以前、授業で「ユークリッドの互除法」を扱った際に、7298(なにくわぬ)顔で「7298/5963 を約分して!」という練習問題を出してみました。ここでは途中の計算は省略しますが、結果だけ示すと「82/67」になります。分子・分母の最大公約数を見つけるのがポイントですが、約数だから 89(やく)。「ユークリッドの互除法を使わずにやろうとすると、ごくろうさん(5963)なことになるよ〜。四苦八苦(89)するよ〜」とかなんとか言いながら。そして計算の最終ステップで気づくんですね。「5963=67×89」、おぉーっ! と。

2019年5月9日木曜日

人工知能時代の確率・統計の学び方

人工知能の燃料は、ビッグデータです。すなわち統計なくして人工知能は動きません。
燃料を力に変えるエンジンが、数学です。エンジンが変われば、得られる力も変わります。
そしてそれらを制御するのがプログラミング。規則正しく事を進めるための仕様書です。
すなわち「統計+数学+プログラミング=人工知能」と言っても過言ではありません。

統計で大事なのは「社会を見る目線」です。数字の処理より、むしろ感性が大事です。
また、ここでの数学の使い方は、理論をはめ込むことです。計算は機械がやります。
そして、プログラミングは言語です。それは翻訳作業・編集作業に似ています。
ですから人工知能に文系も理系もないのです。それは今どきの一般教養であっていい。

人工知能を理解するための近道は、統計を学ぶことです。結局そこが本質ですから。
数学やプログラミングから入ると、人工知能に行きつくのはだいぶ先になるでしょう。
統計を学ぶには、エクセルでやるのが一番です。理屈だけではピンとこないでしょう。
というわけで「エクセル→統計→人工知能」の順番で進めるのが効率的かつ効果的です。

確率と統計は似ています。けれども、高校の確率と統計はむしろ真逆だとも言えます。
高校の確率では「サイコロ=1/6 , じゃんけん=1/3 , コイン=1/2」から話が始まります。
つまり高校の確率では「大元が与えられて、そこから具体例を計算する」わけです。
それに対して「周辺情報から大元を探る」のが統計です。その意味で真逆なのです。

「周辺情報から大元を探る」というのは、要するに「条件付き確率」を計算すること。
もう一つ、高校の確率の中で人工知能を理解するために必要なのは「期待値」です。
要するに、情報に「重み付け」するわけです。その考え方・計算法は期待値と同じです。
条件付き確率も期待値も教科書での扱いは小さいですが、それこそが将来役立ちます。

情報の重み付けとは、一律に受け取るのではなく、強弱をつけて受け取ること。
生物の脳も人工知能も同じです。忘れることやぼんやり見ることは大事な機能です。
そこから意味が出てくるからです。そしてそれをなしているのがディープラーニング。
ビッグデータを元にして、情報の重み付け、すなわち「係数」を決めているのです。

数学が嫌い・苦手だという人こそ、統計とプログラミングと人工知能を学びましょう。
数学は「抽象的で非現実的でどこで役に立つかわからない」と言う人がいます。
確かに受験数学と一部の授業にはそういう面があるかもしれません。残念ながら。
でも、統計とプログラミングと人工知能は十分に「具体的で現実的で実用的」ですよ。

これから流行る学校

 授業料は3ヶ月で100万円、半年で200万円。それ以降月ごとに30万円ずつ払えばいつまでもいられるが、基本は半年コース。
 授業料が高いと思うだろうか。でも、その学校で学ぶことで収入が倍増したり、年棒1000万円超えの職に就いたりする人が多ければ、必ずしもそうは思わないだろう。それどころか、大学で学ぶのと同じかそれ以上のものが得られるのであれば、4年かけて400万円支払って大学に通うより、よほど安い上に効率的でもある。
 その学校に入学試験はない。授業料を払えば、誰でも学べる。中卒の人も高卒の人も大卒の人も、ビジネスマンも高齢者もいる。他の学校で不登校だったり、発達障害と呼ばれた人もいるが、その学校で特に優秀なのはそういう人だったりもする。
 入学後のテストもない。成績もつかない。卒業証明書もない。すなわち公的に保証するものは何もないが、社会からの信頼は厚い。企業からの目線も熱い。
 そこで学んで得られるものはスキル。それだけだ。分野は多岐に渡っている。IT・プログラミング・統計・経営・語学など。社会のニーズに合わせて、人工知能やブロックチェーンを学べる学校・コースもある。その中のどれを学ぶか、いずれかを集中して学ぶか、あるいは広く学ぶか、それは受講生が決める。もともとテストもないし成績もつかないし出欠をとることもないので、途中から加わるも途中で止めるも自由。
 イベントもたくさんある。ワークショップ・コンテスト・講演会など、在籍していればいつ何時どのイベントに参加するも参加しないも自由。
 受講生が主催するイベントもある。娯楽・親交・学びなど趣旨は様々だが、他の学校でいうところのサークル活動みたいなものだと思ってもいい。
 コーチ陣はみんなプロフェッショナルだ。そして彼らの最も重要な仕事はカウンセリング。受講生がどんな技能を身につけたいのか、何を身につけるべきなのか、そのために何を学ぶのが良いのか。受講生の特性を見ながら、一緒に考えるのがコーチの最も大事な仕事だ。

 これから流行るのはそんな学校だ。もうすでに始まっている。アメリカには現存するし、日本でももう少し短い期間で、もう少し安い金額で、つまりもう少し低いレベルで学べる場所がたくさんできている。
 さて、今ある学校はこれからどうなるのだろうか。多くの大学は職業訓練校の色合いを強めるだろう。ちなみに、いま現在、職業訓練校としての色合いが最も強いのは医学部だ。あんなに入るのが難しいのに、医者という職業があんなにブラックなのに、それでも医学部が人気なのは、そこが職業訓練校だからという面が確かにある。
 それと同時に高校は、大学受験のために勉強する場ではなくなる。これから流行る学校に入試はないのだから、そこを目指す人は学校に入るために勉強するよりも、学校に入った後のことを考えて、やがて学ぶことになる分野の周辺情報を仕入れる方に力を注ぐだろう。
 中学生も変わる。先にあげたような学校に進むことを視野に入れながら、自分に何ができるか、何に向いているか、夢中になれるものは何か、そんなことを探るために時間と労力を割くようになる。
 こうして大学も高校も中学も、これから良くなっていくに違いないのである。

Ruby on Rails とは

かわいらしい Ruby たちが飛び回る野原に、
Rails というおどろおどろしい館をおっ立てて、
そこにみんなでよってたかって化け物を放り込んだ。
こうして出来上がったのが Ruby on Rails というプログラミングの世界。

もったいないのはお金だけじゃない

 ある家族の会話。
 子供が「今日、塾に行きたくない」と言った。何か事情があるのか、他にやりたいことがあるのか、やる気が出ないのか、それはわからない。
 親の片方が言った。「お金がもったいないから、行きなさい」
 もう片方の親が言った。「今日行くと、お金に加えて、きっと時間と気力も無駄になる。2重・3重にもったいないことになる。だから、行かない方がいい」

 実は我が家の会話である。
 お金は出す。なぜ出すかと言えば、その社会的活動の意義を認めて、その活動を支えるためだ。特定個人の利益に見合う金額を出そうという意図ではない。塾の月謝であれ学校の授業料であれ、そういうことだ。そもそも勉強に損得勘定はそぐわない。
 私は常々娘に言っている。塾であれ学校であれ、行くか行かないかは「お前が決めろ」。お金の使い方も「お前が決めろ」。


《関連記事》
◇ 使った分が財産だ
◇ 肯定形でしゃべろう
◇ 高校卒業したら子供に1000万円あげちゃう計画
◇ なぜ授業料を払うのか?
◇ ぶったるんでる君らに贈る、勉強論・仕事論
◇ 「学校に行かなくていい」と言うその前に

なぜ授業料を払うのか?

(2017年春)

 受けたサービスの対価としてお金を払うという考え方はやめよう。組織を経済的に支えるためにお金を払うんだと捉えよう。学校の授業料も同じである。学校の価値を認めて、授業料を支払うことでその運営を支援していると考えれば良いのである。
 いまスキー部の春大会の引率でスキー場に来ているのだが、部員たちが支払っているリフト代も同じ。高校生は技術者・管理者・従業員という形でリフト運行やスキー場運営に関わることはできない。けれどもお金を払うという形でならリフト運行を支えることはできる。そしてそういう形でスキー場の運営に関われる。だからリフト代を払うのである。
 私は自分の勤務校にお金を払うどころか、学校からお金を受け取っている立場だが、私は授業を受け持ったりスキー部の引率をするという形で学校運営を支えている。だからお金を払わなくて良いわけだ。むしろ私なりのやり方で学校を支えるために、私は給料を受け取っている。そう捉えれば良いのだと思う。
 一方で私は娘が通う学校の授業料を支払っている。また去年の夏にはフィリピンの語学学校にお金を払い、今年の春にはプログラミング・スクールにお金を払った。いずれも私がそれら学校の存在意義を認め、お金を払うこと以外に支援できないから、お金を払ったわけである。
 もちろん学校でいろんなことを学んだわけだが、学んだ分だけ支払ったというわけではない。1万円払ったから、1万円以上の成果を得てはならないということではない。また、2万円払ったから、それに見合う成果を得なければ損するという話でもない。学びの場にそんな損得勘定を持ち込んではならない。自分が学べる環境を維持するために、それら組織の社会的存在意義を認めてお金を払うのだと考えれば良い。
 同じように、スキー場のリフトに何らかの事情で少ない本数しか乗れなかったとしても、勿体無いだの損しただの思うより、自分が使った以上に支えたのだと、そう思えば良いのである。
 食材を購入するのも、生活必需品を購入するのも同じ。お金を払う目的はあくまでも農家の人を支え、メーカーを支えること。そういう形で農業や工業に参画するためにお金を払うのである。

卒業生へのメッセージ(2019春)

(2019年春)

 今年の卒業生、僕は接点が少なかったのだが、メッセージを送れる機会があったので、作文した。



 121回生のみなさんとは中1の時にG組1クラスを持っただけ、他には生活指導部でたむろする学実・体実の人に「早く帰れ」と言っただけ。
 ところで何の因果か、高2の時に生活指導部でたむろしていた人たちには、元中1Gの人がやけに多かったんだよね。生徒会長も学実委員長も体実委員長も元中1Gだった。他に中心的に活動している人にも元中1Gが多かった。
 中1G組は代数の成績があまり良くなかった。誰のせいとは言わない。そのメンバーの多くが高2になって生活指導部に頻繁に出入りするようになった。たまたまなのか、何か訳があるのかは知らない。
 生活指導部でグダグダ・ダラダラやったことも、これからの力になるだろうな。数学ができるかどうかより、もっと大事なことかもしれないよ。これからもいろんなことをやってくれたまえ。



 なかなかうまく書けたので、ここに記録しておく。

◎ 人工知能時代の確率・統計の学び方 with エクセル

 高校1年生対象の夏期講習の教材です。タイトルは「人工知能時代の確率・統計の学び方 with エクセル」。その名の通り、エクセルも使って確率・統計を学びながら、人工知能やネット社会がどのような仕組みで動いているのかについてある程度のイメージをつかむための講習です。

   実習  mission
 0この講習で使うエクセル関数一覧---
 1大人の相対的貧困率寿命の平均値と中央値と最頻値
 2ばらつきと相関入試で2科目が逆相関?
 3乱数を使ってみよう自動席替えシート
 4サイコロを投げるサンプル数はどれくらいが適当か?
 5データの変換変換して相関係数を求める公式を作れ
 6 正規分布の作り方正規分布を作ってみよう
 7母集団が大きければ正規分布に近づくのか?実習7を検証せよ
 8最上位の数はどのような割合で現れるか?実習8の理論値を探れ
 9埃が風に舞う埃は部屋の隅にたまる
10ベイズ推定とは?そのコイン、まとも? いかさま?
11グー・パーじゃんけんで勝負する-(未完)-
12ミッション・ファイナル他にエクセルか統計がらみで何か面白いことやれ

 この講習で私は「アクティブ・ラーニング(AL)」と「学び合い」を取り入れました。先生が知識を一方通行的に生徒に与える学習スタイルではなくて、生徒たち自らが能動的に動き、お互いに学び合う学習スタイルです。
 講習の中で「実習」と「mission」をほぼ交互に与えます。実習は全員がきちんと習得するもの。そのために、わからなかったら友だちに聞いたり、教えてあげたり、一緒に考えたり、答え合わせしたりすることになります。
 一方の mission はチームで取り組むもの。それは実習を踏まえた発展的なもので、チームで取り組んで講習中の適当なタイミングで発表(プレゼンテーション)してもらいます。でも中にはかなり高度なもの・無茶なものもありますから、そのいくつかにトライすれば十分ですし、出来ないものはそれでも構いません。
 全員が完全にマスターしなければならない実習と、出来なくても出来ないなりに取り組む mission と、その2つは正反対に見えるかもしれませんが、そうではありません。それどころか、その2つの根っこは同じです。何が同じかというと、どちらも生徒同士が関わり合って、力を合わせて成し遂げるという点です。そして、それこそが「アクティブ・ラーニング」と「学び合い」なのです。

  ※ 大学入試問題にチャレンジしよう
分散投資のリスク削減効果     世論調査は難しい
人口推計サンクトペテルブルクのパラドックス


2019年5月5日日曜日

正直に挙手してもらう方法

 挙手でアンケートを取って、全体のどれくらいの割合が該当するかを調べる場面を想定する。ところが、質問内容が人に知られたくないようなことだと、正直に答えてくれないかもしれない。そうなると、調査の目的を達成することが出来なくなる。
 たとえば、「バツイチの人は手を挙げて」と言われても、人前では手を挙げにくいだろう。あるいは、中学・技術科や高校・情報科の授業中に「家にパソコンある人、手を挙げて」というと、本当は無いのに手を挙げたくなる生徒もいるかもしれない。今どきパソコンが無い家庭はおそらく少数派だろうから。
 こんなとき、正直に答えてもらって、該当する人の割合を推定する良い方法がある。まず、各人にコインを投げてもらい、表が出たか裏が出たかをみてもらう。続いて「表が出た人かまたはバツイチの人は手を挙げてください」と言う。
 この場合、手を挙げた人がバツイチかどうかは誰にもわからない。あるいは「表が出た人の中で、家にパソコンがある人は手を挙げてください」と言う。この場合、手を挙げていない人の家にパソコンがあるか無いかは誰にもわからない。だから、正直に答えてくれると期待できる。それでいて、バツイチの人の数、家にパソコンがある人の数がまぁまぁの精度で推定できる。

 ここで【問題】です。
  1.  100人の人に「コインを投げて表が出た人またはバツイチの人は手を挙げてください」と質問したら54人が手を挙げた。このことから、バツイチの人の人数を推定せよ。
  2.  100人の人に「コインを投げて表が出た人の中で、家にパソコンがある人は手を挙げてください」と質問したら、41人が手を挙げた。このことから、家にパソコンがある人の人数を推定せよ。
さっそく《正解》を発表します。
コインを投げて表が出た人数も裏が出た人数も50人だったと仮定できる。
  1. (手を挙げた54人のうち4人は(裏が出たかつバツイチ)だと考えられる。すなわち、裏が出た50人のうちの4人がバツイチということだ。割合でいうと8%。そして、表が出た50人の中にもほぼ同じ割合でバツイチがいると考えられる。以上から、バツイチの人数は全部で8人だと推定できる。
  2. (表が出たかつ家にパソコンがある)人が41人いるということは、(裏が出たかつ家にパソコンがある)人もほぼ同数(41人)いると考えられる。以上から、家にパソコンがある人は全部で82人と推定できる。



 中学・数学で学習する「場合の数と確率」の中で「標本調査」に触れ、その中で「推定」を扱っている。上の問題は「標本調査」ではないが、「確率」を使って「推定」しているという点ではニアピンである。
 面白いネタだと思うので、中学・技術科か高校・情報科で統計をやる際には盛り込んでもいいかな、と思う。

 大学入試で出題された類題は こちら をどうぞ。

☆ シミュレーション・ソフトとしてのエクセルの利用

 エクセルは、表計算ソフトというより、シミュレーション・ソフトです。そのようにとらえましょう。
 その際、いろいろな事柄(自然現象や社会現象など)をモデル化するのは人。それに従ってシミュレーションするのがコンピュータ。エクセルも人工知能も同じです。

◇ コインを投げる → サイコロを振る
◇ 埃が風に舞う → 埃は部屋の隅にたまる
◇ あみだくじを作る
◇ 九九の表
◇ 待ち行列
◇ 自動席替えシート
◇ 100m競走予選
◇ 駅伝の記録集計
◇ 入試の合否判定
◇ 渋滞(1)→ 渋滞(2)

◇ 人口ピラミッド
◇ ねずみ算 → 頭打ちねずみ算(S字カーブ) → 流行終息曲線
◇ やかんのお湯が冷める → エアコンのサーモ・スタット機能
◇ 食物連鎖

他に、
◇ 人工知能時代の確率・統計 with エクセル
◇ モデル化の技術
にもいろいろあります。

待ち行列

(モデル化とシミュレーション)

 平日の昼時にはラーメン屋の前にサラリーマンの行列ができ、夕方にはスーパーマーケットのレジに行列ができ、休日のショッピングセンターでは駐車場の空きを待つ車の行列ができる。 ところで、行列とは、人が列を作って並ぶものだけを言うのではない。 コールセンターに電話して待たされるのも、サーバーにアクセスが集中して動きが鈍くなるのも、行列ができているのと同じようなことである。
 では、行列ができる様子をモデル化してシミュレーションしてみよう。 2つのケースを考える。 スーパーマーケットのレジに客が並ぶ様子を表したものが <例1> で、サーバーへのアクセスに応答する様子を表したものが <例2> である。

<例1>
  ABCDEFG
1
 (人目) 
 到着間隔 
(分)
 到着時刻 
(分)
 開始時刻 
(分)
 終了時刻 
(分)
 待ち時間 
(分)
 行列人数 
(人)
211.141.141.142.140.000
320.561.702.143.140.441
430.312.013.144.141.132
541.933.944.145.140.201
651.365.305.306.300.000

 <例1> と <例2> において、サービスを提供するのに要する時間はちょうど1分とする。 B 列が客が到着する間隔だが、乱数を使って最大で2分で、平均しておよそ1分になるように設定した。 C列は業務をスタートしてからの通算の時間である。 ここまでは <例1> も <例2> も同じである。

<例2>
  ABCDE
1
(人目)
 到着間隔 
(分)
 到着時刻 
(分)
サーバー
の処理
 終了時刻 
(分)
211.561.56 proceed 2.56
321.733.29proceed4.29
430.183.47busy4.29
540.584.05busy4.29
651.775.82proceed6.82

 <例1> と <例2> の違いは次の点である。 <例1> では、前の客の支払いが済んでいればすぐにレジ打ちを始めるが、前の客の処理が終わっていないときは行列に並んで順番を待つ。 <例2> では、サーバーが他の処理をしていなければ次のアクセスに対する処理を進める (proceed) が、前のアクセスに対する処理が終わっていない (busy) ときは次のアクセスを無視する (つまり、行列に並ばせない) ものとする。
 ところで、上の例ではレジもサーバーも1台という想定でモデル化・シミュレーションした。 でも、2系統で分散処理すれば、サービス向上になる。 もちろんその分だけ経費がかかるので、経営者はサービスと経費との兼ね合いでレジ係りを何人置いたらよいか、サーバーを何台用意したよいかを判断するだろう。 そして、その場合は上の例をアレンジしてモデル化・シミュレーションすればよいだろう。

(1) <例1> のセル B3 , C3 , D3 , E3 , F3 , G3 ならびに <例2> のセル D3 , E3 の関数式を答えなさい。ただし、下方向にコピーして正しく動く式を答えること。

(2) <例2> のD列以降を書き換えて、2系統で分散処理するためのエクセル・シートを作りなさい。 ただし、1行目に適当な列のタイトルをつけ、3行目の関数式を明記すること。 なお、経費のことは考えなくてよい。



《 解答例 》
 (1) <例1>
   B3    = RAND ( )*2
   C3    = C2+B3
   D3    = MAX (C3 , E2)
   E3    = D3+1
   F3    = D3-C3
   G3    = ROUNDUP (F3 , 0)
   <例2>
   D3    = IF (C3>=E2 , "proceed" , "busy")
   E3    = IF (D3="proceed" , C3+1 , E2)

 (2)
  ABCDEF
1
 (人目) 
 到着間隔 
(分)
 到着時刻 
(分)
 サーバー 
の処理
Aの
 終了時刻 
Bの
 終了時刻 
    
210.940.941.940.00
320.821.761.942.76
0.061.82busy1.942.76

   セル D1 のタイトル    サーバーの処理        
   セル D3 の関数式    = IF (C3>=E2 , "A" , IF (C3>=F2 , "B" , "busy"))
   セル E1 のタイトル    Aの終了時刻
   セル E3 の関数式    = IF (D3="A" , C3+1 , E2)
   セル F1 のタイトル    Bの終了時刻
   セル F3 の関数式    = IF (D3="B" , C3+1 , F2)

東京特許許可局はどこにあるか?

【問題】
次の文章が正しければ解答欄に「◯」を書き、正しくなければ下線部の言葉をふさわしい言葉に書き換えなさい。

  (1) 著作権は  役所に届け出て認められた  時点から発効する。

  (2) 東京都民が特許を申請しに行く役所は  東京特許許可局  である。

  (3) 著作権を英語で  Write Right  という。



 知的財産権に関する誤文訂正の問題です。

(1) 特許権などは「役所に届け出て認められた時点から発効」しますが、著作権は「届け出などしなくても、創作した時点で発行」します。というわけで、正解は「創作した」です。「作った」でもまぁいいでしょう。「発表した」や「作り始めた」はバツでしょうか。「完成した」ならよさそうですね。

(2) 「東京特許許可局」は実在しません。架空のものです。霞が関の端から端まで探しても、都庁ビルの全フロアの隅から隅まで調べてもきっと見つからないでしょう。もしかしたら地下X階の端っこに・・・いや、たぶん無いでしょう。
 では特許権をどこに申請したらいいかというと、「特許庁」です。都民だろうが県民だろうが、特許庁です。経済産業省の一部ですから「経済産業省」でも良いかもしれませんね。

(3) 「著作する」とは「書くこと」ですから「著作」を英訳すると「Write」になりそうですね。「権利」はもちろん「Right」です。というわけで、著作権を英訳すると「Write Right」・・・ごめんなさい。ウソです。おやじギャグですみません。
 もとい。「著作権」を英語でいうと「Copy Right」です。つまり著作権とはずばり「コピーする権利」なわけです。日本の著作権法では著作権の一部として「複製権」があるという形になっていますが、やっぱり「コピーする権利」が著作権の最も基本的な権利だと考えるべきなんでしょう。

 以上から正解は (1)  創作した  (2)  特許庁  (3)  Copy Right  です。



 ところで実際に採点してみると「◯」と書いた答案がちらほらありました。意外と◯が多かったのが(2)でした。「東京特許許可局」が間違いであると分かっていても、「特許庁」という単語が出てこなかったのかもしれません。でも、役所名を覚えることにあまり意味はないと思うし、要するに私が「東京特許許可局」と言いたかっただけなので、出来なくても気にしないでくださいね。(3)でご丁寧に「Write」を過去分詞形に直しているものもありました。なるほど現在形よりは近づいた感がありますが、外国人に伝わるでしょうか。

2019年5月4日土曜日

タイトルとサブタイトルをつけよ(慶大SFC入試より)

 今年の慶応大学環境情報学部で出た小論文の問題は「与えられた文章にタイトルとサブタイトルをつけよ」というものだった。実は似たようなものをウチの学校の情報科の授業でやったことがある(→「問題と解決をセットで挙げる」)。もしかしたら出題者はこのブログを見ているのかな、と思った。



(慶応大学 環境情報学部 小論文 2015)

 資料【A】~【H】は、過去から現在までの、何らかの発明や創造と、その社会展開に関する文章です。有形のモノから無形のコンセプトまで、情報のテクノロジーから物質のデザインまで、小スケールから大スケールまで、さまざまな種類のものを、時代順はランダムに並べてあります。

設問1 資料をよく読んだうえで、【A】~【H】のそれぞれの文章について、その発明や創造の内容と、それが社会与えた影響を表現する、わかりやすいタイトルと魅力的なサブタイトルをつけてください。
【A】 (自転車 に関する文章)
【B】 (インターネット  〃  )
【C】 (半導体の構造  〃  )
【D】 (3Dプリンティング  〃  )
【E】 (クリエイティブリユース (創造的再利用)  〃  )
【F】 (冷蔵庫  〃  )
【G】 (暗号の安全性  〃  )
【H】 (インド僻地での流通業  〃  )



 【A】~【H】は各1400~2800字の文章量だが、いずれもボクたちがよく知らないことをわかりやすくコンパクトに説明してくれている。それを読むだけでも勉強になる。

発明せよ(慶大SFC入試より)

(慶大・環境情報学部 2006年度入試 小論文より)

問題 21世紀にふさわしいモノやサービスを「発明」してください。

 資料1「来るべき産業革命」は現在の社会を分析しながら、来るべき社会システムについて説明したものです。この資料をよく読んで、「問題発見」をしてください。資料2「ファクター10」はデザインによって環境問題を解決する方法について説明したものです。資料3「発見・発明の方法」は問題解決のために新しい機器やシステムをデザインすることを「発明」と呼び、そのプロセスを説明しています。これら3つの資料を参考にして、21世紀にふさわしいモノやサービスを「発明」してください。
[注] 自動車はすでに様々な角度から環境問題に関係づけて議論されています。今回の回答では自動車に関する「発明」は避けてください。

問1 あなたが発見した「問題」を簡潔に35字で説明してください。

問2 あなたの発明したモノあるいはサービスを図で描いてください。

問3 あなたの発明したモノあるいはサービスの仕様と機能を文章(200字)で説明してください。

問4 発明したモノやサービスを実現するためには、その価値を人に説得させる必要があります。800字で売り込みの文章を書いてください。

 あなたが発明したモノの意義・仕組み・魅力を、技術・経済など様々な角度から複眼的に検討して、実現方法をあみだし、論理的で魅力的なストーリーを書きましょう。社会的使命を見失わず、自由奔放にアイデアを生み出し、そのアイデアを整理して、説得力のある説明をしてください。

(以下「資料1,2,3」(長文)が続く。略)



 慶大SFC小論文の典型的な問題と言えるでしょうか。お行儀のよい文章を書くより、多少ぶっ飛んでるくらいのもの、採点者の笑いを誘うようなものの方がよさそうです。

研究プロジェクトを提案せよ(慶大SFC入試より)

(慶大・環境情報学部 2007年度入試 小論文より)

 環境情報学部の教授になったつもりで、SFCで展開する新しい研究プロジェクトを提案してください。
 資料1はSFCホームページから抜粋したもので、SFCの理念と現在どのようなプロジェクトが行われているかの一部を例として紹介しています。
 提案するプロジェクトは、すでにSFCに存在するプロジェクトの一部を分担するようなもの、あるいはまったく新規のものでもよいし、分野横断型のものや総合政策学部と連携したもの、あるいは他機関と連携して行うものでもかまいません。また理論的な基礎研究でも実践的な応用研究でもどちらでもかまいませんし、一人で行う研究でも、大人数のグループで行う研究でもかまいません。

(1) 研究プロジェクトのタイトル。研究内容が推測できるような具体的な文言で35字以内。
(2) 研究期間(年)、研究費総額(円)および研究費申請先(SFC内部資金、○○企業、○○省など)
(3) プロジェクトの説明。背景・目的、手法・プロジェクトメンバーの人数・年次計画、期待される効果などについて、自由になるべく具体的に記載してください。枠内からはみ出さなければ原稿用紙の一部を図・イラストなどのために割いてもかまいません。提案するプロジェクトをSFCで実施することの意義・優位性を明確にしてください。(解答欄:35字×18行 <630字>)
(4) このプロジェクトに環境情報学部生を参加させる場合、教授であるあなたはその学生にSFCでどんな勉強をすることを勧めますか(資料2)。それはなぜですか。(解答欄:35字×6行 <210字>)

(SFCに入学した場合、本小論文に記載されたことになんら縛られることなく、自由に研究テーマを決めることができます。)

資料1
 (SFCホームページより抜粋、一部改編)    → 略
資料2
 慶應義塾大学「大学案内2007」(p56-57)より → 略



 こんなもので入学者を選抜すれば、良い学生が採れるだろうなと思う。

2015 の回文っぷり

(2016年初春)

【問題】
「たけやぶやけた」のように、上から読んでも下から読んでも同じ言葉になるものを回文といいます。
 さて、年が明けて2016年になって、すでに2015年は終わってしまいましたが、実は2015年は回文年でした。というのは、2015という数が見事な回文数だからです。
 もちろんそのままでは回文ではありません。前から読むと「2015」で、後ろから読むと「5102」ですから、まるで違います。けれども、2015を素因数分解すると、回文になるのです。
    2015=13×5×31
ほら、見事な回文になりました。右辺は、右から読んでも左から読んでも「13×5×31」ですね。
 では、ここで【問題】です。十進数の2015を二進数で表しなさい。



《解答》
 なにはともあれ、やってみましょう。
2015=1024+512+256+128+64+16+8+4+2+1(← 32 が抜けている)
    =210+29+28+27+26+24+23+22+21+20 (← 25 が抜けている)
    =11111011111 (2)
おぉっ、またまた見事な回文になりました。二進数表記したものは、右から読んでも左から読んでも「11111011111」になります。というわけで、正解は「11111011111」です。

《解説》
 なんのことはない、単に十進数を二進数に変換するだけの問題といえばそうなのですが、たまたまきれいな回文風の数になったものですから、問題を作ってみました。2015を素因数分解すると回文風になるという話はネット上で見かけたものです。
 実はこの問題を思いついたのはつい最近のことで、実際の試験にはまだ出していません。2015年は終わってしまったけれど、2015年度ということならあと1回だけ使うチャンスはありますが。
 試験に出していないので何とも言えないのですが、もし出したら正答率は思いのほか高くなるんじゃないでしょうか。というのは、2015という大きな数を二進数に直すと計算ミスが頻発しそうですが、上のように出せば生徒たちは「回文になるのかな?」と思いながら計算するでしょうから、計算ミスは減ると思うのです。回文風の結果が出た生徒は自信をもって答え、そうならなかった生徒は計算し直して、多くの生徒が正解に辿り着くような気がするのですが、いかがでしょうか。

反証可能性(慶応大の入試問題より)

 論理学ネタの入試問題が、今年も慶応大学商学部の論文テストで出た。 情報科で論理式を扱った際に、そのまんま定期試験に出してもよさそう。



(慶応大 商学部 論文テスト 2015)


◇ 以下の文章を読んで、次の問1~問2に答えなさい。

 いま、以下のような4つの命題 p , q , r , s がある。
p:すべての天体の軌道は円である。
q:すべての惑星の軌道は円である。
r:すべての天体の軌道は楕円である。
s:すべての惑星の軌道は楕円である。
これら4つの命題に関して、「天体」という言葉は「惑星」よりも(1)の度合が高く、「円」という言葉は「楕円」よりも(2)の度合が高い。いずれも度合も高いほど、命題は経験的にテストされやすく、それゆえ反証される可能性も高い。つまり、命題の反証可能性は高くなる。
 これら4つの命題 p , q , r , s のあいだの演繹可能性関係は、上のダイヤグラムの矢によって示される。p から他のすべての命題が結果する。q からは s が帰結し、s はまた r からも帰結する。したがって、s は他のすべてから帰結する。
 p から q に移ると、(3)の度合が減少する。惑星の軌道は天体の軌道の真部分集合であるから、(4)は p よりも(5)の度合が少ないわけである。したがって、p は q よりもいっそう容易に反証されうる。もし q が反証されれば、p は(6)されるが、しかしその逆は真ではない。
 (7)から r に移ると、(8)の度合が減少する。円は楕円の真部分集合だからである。そして、もし r が(9)されれば、p は反証されるが、その逆は成り立たない。
 同じことが他の移行についてもいえる。(10)から s に移れば(11)と正確性の両者が減少し、q から s へと移ると(12)が減少し、r から s へと移ると(13)が減少する。
 したがって、以上のことから p が最も反証可能性が高く、s は反証可能性が最も低いといえる。

問1.文中の(1)(13)にあてはまる最も適当なものを下の選択肢から選びなさい。
   なお、同じ選択肢を2回以上使用してもよい。
p  q  r  s  演繹  検証  合理性  実証  正確性  妥当性  反証  普遍性  有意性
問2.命題 q と r は、どちらが反証可能性が高いのか、比較することができない。なぜか。
   その理由を本文に即して「命題 q は r よりも」に続く文章を35字以内で答えなさい。

  命題 q は r よりも                               




《解答&解説》
問1. (1) 普遍性  (2) 正確性  (3) 普遍性  (4) q  (5) 普遍性
    (6) 反証   (7) p  (8) 正確性  (9) 反証  (10) p
    (11) 普遍性  (12) 正確性  (13) 普遍性

※ 「同じ選択肢を2回以上使用してもよい」と言われても、13個のうち
  「普遍性」が5回、「正確性」が3回、「p」と「反証」が2回ずつというのは、
  解答していてちょっと不安になる。

問2.普遍性は低く、正確性が高いから、どちらが反証可能性が高いともいえない。(35字)

※ 字数や書き出しを無視して書くと、
「正確性の面からみると、命題 q は r よりも正確性の度合が高いので、q の方が r よりも反証可能性が高い。
 普遍性の面からみると、命題 r は q よりも普遍性の度合が高いので、r の方が q よりも反証可能性が高い。
 だから一概に q と r のどちらの方が反証可能性が高いとは言えない。」